第732話 因果応報、自業自得?
「お義父さま、コルネちゃんにスベルド大公の所からお見合いの申し込みというのは?」
俺が頭の中で、ナディア達にいわれ無き不当な批判を受けている最中、ミルシェが父さんと話していた。
『『『『いわれ有りすぎの正当な評価です!』』』』
まったく…こんなに真面目な男に向かって、そんな偏見の目を向けるものじゃないぞ?
『『『『めっちゃ正当で公正な目です!』』』』
まぁ、今回だけは大目に見よう。
『『『『駄目だ、こいつ…』』』』
そんな俺をほっといて、父さんと嫁ーずの話は進んでいた。
「ああ、スベルド大公の大甥という事だ」
『大甥?』
父さんの言葉に、疑問符を浮かべる嫁ーず一同。
「確か、大公の奥方の弟さんの孫とか。今年で14歳との事だったな」
大甥って、初めて聞いた間柄だよ。
「という事は、スベルド大公夫人の甥御様か姪御様のお孫様という事ですか…随分と薄い血縁ですわね…」
マチルダもちょっと呆れている様だ。
「私は、存じ上げませんわね。まあ、全く王家の血は流れてなさそうですけれども…」
確かに、奥さんの甥っ子の孫なんて、メリルが知らないのも当然だな。
「それで、そのスベッタ大公の遠い親戚とやらは、貴族なのですか?」
イネス…スベッタじゃなくて、スベルドな。
「いや、どうやら商家の息子らしい。なかなか性格も頭も良いそうで、大公が養子縁組を画策しているとかなんとか…」
父さん、ちょっと苦笑い。
「養子…ですか…。でも、それを知ってしまうと…侯爵家の令嬢とでは…つり合いが…」
まあ、ミレーラの言いたい事も分かる。
「そうなんだよな。そもそも、大公のお言葉は無視できないから見合いはするとしても、婚約やましてや結婚はちょっとなあ」
あ、父さんも結婚は許してないのか…ほっとした。
「もう! お父様も、お義姉さま方も、心配し過ぎです。それに、結婚相手は、私自身で探しますから!」
ぐずぐずと父さんと嫁ーずが話していると、コルネちゃんが立ち上がって、ちょっとオコでそう言い切った。
「な、コルネちゃん! 結婚相手がいるのか? そいつはどんな奴だ? お兄ちゃんが見定めてやろう! コルネちゃんと結婚したくば、まずは俺を倒してみろ!」
思わず俺は立ち上がり、叫んだ。
コルネちゃんの純潔を穢させてなるものか!
「むっ? トールよ、ちょっと僭越だぞ? まずはこのヴァルナル・デ・アルテアンを倒すのが先だ! 我が大剣を受けてみよ!」
父さんも立ち上がり叫ぶ。
テーブル越しに視線を合わせた俺と父さんは、がっしりと握手をする。
うん、俺と父さんでそいつの力を試してやろう!
「あなた、トールちゃん? 何を馬鹿な事を言っているのかしら?」
「お父さま、お兄さま?」
そんな俺と父さんに吹き付ける極寒の視線が2つ…母さんとコルネちゃんの視線だ。
「「ご、ごめんなさい…」」
俺と父さんは瞬時に謝罪の言葉を口にして、そそくさとソファーに腰を掛け直した。
そんな俺達の事なんか、全く視界に入って無いのか、ユリアちゃんはお茶と共に出されたお菓子をお代わりしていた。
大物だね、ユリアちゃん…。
「それで、お見合いするの、しないの?」
もう、さっさと結論を聞くのが早い。
「お兄さま、お見合いはします。でも、婚約などする気はございません」
そうきっぱりと言い切ったコルネちゃん。
「そ、そうなの? でも、お見合いの相手がいい男だったりしたら…」
「無いです。私はネス様の巫女。今はやむを得ない事情で王都のお屋敷におりますが、リーカのお屋敷で大樹のお世話するという使命もございますから、結婚などしません」
あ、あれ? そんな設定だったっけ? そう言えばコルネちゃんをネスの巫女として指名した気が…。
使命を与えた指名って、上手い事言った?
「それに、ユリアーネも、私を補佐するネス様の神子ですので、いつかは共にネス様に仕える事になりますし」
そうだった…2人共、そんな設定だったよな…。
「え、いや…コルネちゃん、さすがにそれは…」
政治だとか侯爵家の為だとかでの結婚は認めはしないけど、流石にずっと未婚ってのは、まずいんじゃね?
それにユリアちゃんまで引きずり込んだら…いや、スーパー幼女ユリアちゃんなら、独身でもいいかも…厳密にはこの世界の人族とは違うんだし…。
「大丈夫です、お兄さま。もしも婚姻を結ぶのであれば、聖なる女神ネス様から神託がある事でしょう」
「そうだ…ね。結婚相手は、きっと神託があると思う…よ?」
コルネちゃんの言葉に同調すると、
「はい。ですからそれまで、私はこの身の純潔を守り通します」
そ、そうですね…あは、あは…あははははは…。
俺がコルネちゃんの結婚相手を、ネスを通して神託で伝えなきゃいけないの?
『『『『マスターがコルネリアさまの結婚相手を決めるのであれば、本望では?』』』』
いや、結婚させたくないという心といつかは結婚させねばという兄心の葛藤が…
『『『『そういう設定にしたのは、マスターでは?』』』』
そうだけど…
『『『『因果応報、自業自得?』』』』
妖精達が酷い…
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