第701話 なんだか普通だぞ?
魂のエネルギーを注ぎ込んだ水晶が落ち着き始めた頃、俺はサラ達から危険な兆候を聞いてしまった。
それは、このダンジョン大陸…もとい、パンゲア大陸の表の王となるべく製造された3体のホムンクルス達の覚醒。
その覚醒の為に必要だという事で俺がエネルギーを注入したはずなのだが、ちょっと入れ過ぎてしまった。
容量を遥かに超えたエネルギーを一気に注入してしまったため、エネルギー一時貯留庫である水晶からホムンクルス達にエネルギーは余す事無く流れ込み、どうやら製造主や上位者に対しての服従とか命令順守とか、細かに設定していたリミッターをも破壊してしまったとかなんとかと、サラとリリアさん、それとナディアに聞いてしまったのだ。
覚醒すると暴走って、どこかの巨大人型兵器かよ!
とか思ってたんだけど、こりゃ大変だ、危険だと思って、家族を退避させようとしていた時だった。
ボーディが、ホムンクルス達が目覚めると大声で叫んでしまったのだ。
しまった! 家族の退避が間に合わなかった!
「くっ…こうなったら、少しでもホムンクルスから遠ざけねば!」
そう考えた俺は、メリル達をこの場から少しでも遠ざけようとした。
遠ざけようとしたのだが…
「え、本当ですか!? 目覚める瞬間が見たいです!」
ミルシェがそんな事を言い出し、
「覚醒の瞬間に立ち会えるなんて、なんと素晴らしい事でしょう!」
メリルが感動し、
「…奇跡の一瞬です…」
ミレーラが奇跡とか言い出しちゃったぞ?
「目覚めた瞬間に、トールヴァルド様との上下関係を叩き込まねば…」
マチルダさん、それってインプリンティングとかいうやつですか?
「Zzzzzz…はっ! もう終わったのか!?」
イネスよ、この大事な時に寝てたんだな?
ってか、ユズユズもドワーフメイド衆も、一歩退いてはいるが、興味深そうに覗き込んでるけど、危険なんだぞ!?
やっべぇ! マジでヤッベー!
何がやべえって、もう瞼がピクピクしちゃってるから!
もう目覚めるから!
一旦ここから全員退避させないと、目覚めたホムンクルスが暴れでもしたら超危険じゃねーか!
「みんな! この部屋から早く出るん…」
俺がそう声を張り上げようとすると…
『目覚めました!』
ホムンクルスに注視していた嫁ーずが、そう叫んだ。
お、遅かったか…
目覚めたホムンクルス達は、いきなりベッドの上で身を起こそうとしていたが、ボーディ、モフリーナ、モフレンダが慌てて止めた。
「お主等は、まだ目覚めたばかりじゃ。しばし身体の調子をみておけ」
そう言って、青年ぐらいのホムンクルスをベッドへと戻した。
「モフリーナ、服の用意は?」
続けてボーディがモフリーナにホムンクルス達の服について尋ねた。
そりゃそうだよな…すっぽんぽんだもんな…見てないから想像だけど。
「準備できておりますよ、ここに」
そういって下着と服が入った籠を、各ベッド横に置く。
その籠って、温泉の脱衣所にあるのとめっちゃ似てるなあ…。
あんだけリミッターが外れた、というか壊れたと聞いて危機感を抱いていたのに、なんだか普通だぞ?
『ええ…どうなってんでしょう?』
サラもそう思うか?
『そりゃそうですよ。あのホムンクルス達には、私とかリリアのボディーとほぼ同じ性能を与えられてんですよ? ボディーの破損とかこの世界に与える影響を考慮して、ある程度のリミッターが私達にも付いてるんです。でも、あの3人に付けてたリミッターは壊れちゃいましたからねえ…何が起きるやら…』
サラですらそう感じるのか…ってか、サラとリリアさんにもリミッターって有ったんだ。
『それは当然です。そもそも地球の人間にも、この世界の人族にも、リミッターは存在してますよ?』
リリアさんが言うなら間違いないか…って、そんな話を聞いた事がある気が…。
『まあ、リミッターがあるというのは、正確には迷信ですけれど』
え、迷信なの!?
『ええ。筋肉や骨の損傷を防ぐために、意識的に発揮できるパワーに制限が設けられていると言いますか、無意識に制限をしているだけですね。スポーツ選手などが意識的に限界ギリギリまでパワーを発揮しても、本当の能力の70~80%程度がいいところでしょう』
そっかぁ…半分ぐらいまで制限されてるのかと思ってた
『それって倍のパワーを発揮出来るという事ですよ? そんな事は、骨格の構造や筋肉の組織的にあり得ません。火事場の馬鹿力と良く言いますが、あれでも脳内にアドレナリン量が増大した結果、精神的にリミッター関連が麻痺して、アドレナリンの効果で筋力が10~15%向上するので精一杯です。100%を出した場合ですと、即廃人ですね』
こわっ! そうなんだ…なるほどねえ…。
そんで、あのホムンクルスたちって、そのリミッターが壊れてるんだよね?
『ええ…高性能なボディーでリミッターが無いのですから、力加減という物が分からない可能性もありますし、精神的に制限が無いすると、造物主たるダンジョンマスター達の命令が果たして守られるのかどうか…』
リリアさんが難しい顔で、未だベッドに横たわるホムンクルスを見つめていた。
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