第674話 面倒くせ
そう、普段は可憐でお淑やかにしか見えない母さんではあるが、その実超脳筋である事を、俺は忘れていたのだ。
そんな母さんが、変身セットを貰って、変身して、嫁ーずとキャイキャイ言って終わるわけが無い。
「ダンジョンでこの装備がどれほど素晴らしいのか試してくるわ!」
めちゃめちゃ鼻息荒く、早口でまくし立てた母さんであった。
ええ、知ってましたとも。
嫁ーずやユズユズと同じく、装備をもらった後の行動が脳筋なのを…。
さっき、母さんが変身してくるくる見せつけている間に、ちゃんとモフリーナには連絡を入れておきました。
何だかダンジョンマスターズは、現在リリアさんと傀儡の王様型のホムンクルス製造の大詰めだそうで、どうしても手が離せない。
なので、もふりんを派遣してくれるそうだ。
現在、父さんの領地に聳え立つダンジョン塔には、もふりんが待機しているらしい。
母さん達が向かったら、ちゃんと出迎えてくれるという。
なので、当然俺はこう言う。
「それじゃ、皆でダンジョンに行っておいで。あっちでもふりんが待機しているんで、装備の慣熟訓練用の門づたーを用意して待っててくれるってさ。メリルは裏の入り口の場所を知ってるでしょ? あそこまで行ったら、俺に連絡頂戴。もふりんに連絡するから、すぐにお迎えに来てくれるってさ」
そう伝えると、母さんと嫁ーずは喜んで我が家の蒸気自動車でお出かけの用意を始めましたとさ。
モフリーナには、そこそこ強いモンスターを配置して、たまには本気の攻撃をしてやって欲しいとは伝えた。
ちゃんと攻撃を受けない事には、フルオート・アクティブ・シールドが機能しているか分からないし、あんまり弱いモンスターばっかりだと、手応え無さすぎて反対に文句言いそうだ。
いや、嫁ーずが変身したりしたら、よっぽどの強敵じゃない限り、ただの殲滅戦にしかならない気もするけど…。
一応、ナディアをお守り…じゃない、お目付け&案内役としてつけたんで、間違いは起きないと思う。
結局、ダンジョン突撃メンバーは、母さんと嫁ーず、お付きでナディア。
アーデ、アーム、アーフェンには、大樹のお世話をしてもらわなきゃならないんでお留守番をお願いした。
とにかく、嫁ーずと母さんは、にっこにこでお出かけしましたとさ。
お出かけ目的が、若干血生臭い気がしないでもないけど。
とにかく、ぽっかりと解放された時間が出来た俺は、一応だけど父さんにも連絡をしておいた。
「父さん、いきなり母さん来たけど、どゆこと?」
『トールよ…ネス様に神具を賜ったと聞いて上機嫌な母さんを、お前なら止める事が出来るか?』
想像する………………うん、無理だな。
「俺はまだ死にたくない」
『だろ、だろ!? 父さんは悪くないよな、な!?』
「いや、命を賭けて止めるのが父さんの役目では?」
夫婦なんだから、当然じゃね?
『馬鹿言うな!』
ちっ! 使えねえ親父だよ。
『それで、父さんの神具もあるんだろ?』
やりたくねーなぁ。
「うん、まあ…」
『そ、そうか! 母さんがこっちに帰ってくる時に持たせてくれ!』
本当、餓鬼だな。
あ、俺も父さんの事言えないか?
「分ったよ。受け取ったら連絡して。使い方を教えるから」
『おぉ! 了解だ! それじゃ、通信終わり!』
「うん、それじゃ…通信終わり」
はぁ、面倒くせ。
おっと、そう言えば明日が人魚さんのサバトの最終日だったな。
生に…え…じゃない、参加者の男性のお迎えは手配済みだけど、彼等…生きてるかな?
あの美しい渓谷に、この1週間の間、きっと人魚さん達の歓喜の声が響き渡っていたんだろうなあ。
ま、どうでもいいか。
きっと参加した男性達も喜んでいた事だろう! っと、いう事にしておこうっと。
さ、お仕事お仕事。
今日も一日、ガンバロウ!
トールヴァルドの領地と隣領であるアルテアン本領の間にある山脈のトンネルを抜け、天まで届くほどの高さを誇るダンジョン塔へと蒸気自動車を走らせた、嫁ーずとトールの母、そしてナディアはやって来た。
このダンジョンが齎す貴重な素材などを目当てにやって来る人々で、 ダンジョンの入り口は非常に多くの人で溢れていた。
その威容を誇る円塔に相応しい人出ではあるのだが、1ヶ所しかない出入り口以外の場所はほとんど人が居ない。
何も無い塔の外周には、不埒な輩がたむろする事もある為、トールヴァルドが立ち入り禁止にし、兵を配置し、柵を設けているためだ。
その兵達の前に蒸気自動車を止めて、領主夫人のウルリーカを始め、伯爵夫人一同と妖精族が顔を出し、柵の向こうの視察に来たと言われれば、兵達は1も2も無く、無条件で柵の向こうへと進める様に、簡易な門を開けて迎え入れる。
護衛として付いてくると言う兵達を、「不要です!」の一言で退けたウルリーカは、運転手を務めるマチルダに車を進めさせた。
ダンジョン基部の外周は非常に大きいのだが、ダンジョンの入り口の反対側まで、車であればそう時間もかからない。
トールヴァルドが指定し、メリル達が知っている秘密の入り口(実はどこでも大丈夫なのだが)へと到着した一同は、トールヴァルドを通してもふりんへと連絡を取った。
暫し待つと、ダンジョンの壁の一部がぽっかりと口を開け、出て来た獣耳の幼女が、蒸気自動車をその内に招き入れた。
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断罪の刃 闇を照らす陽の如く
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ちょっとダークなお話し…かな?
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