第666話  女王も楽じゃない

 ぱーりーないつ…それは私達人魚にとって、魅惑のワードである。


 どういう意味を持つかは分からないが、その内容は人魚であれば誰もが理解をしている。

 種族の繁栄の為、若くてピッチピチの活きの良い若い男の隅々まで味わい尽くし、しゃぶり尽くし、搾り尽くす日。

 領主が不在の時に、溜まった書類仕事を熟せば熟すほどに、領主の感謝と大量の生けに…もとい参加者が増えるのだ。

 女しか存在しない人魚族にとって、これほど己らの欲望…もとい、種族繁栄の為に自らの貞操を犠牲にしてでも、子種を得なければならない、とても重要な日である。

 今回は、付近の海に散っていた仲間の人魚達も、噂を聞きつけて集まって来た。

 参加人魚数は、領主さんに公表しただけで380人。

 だけど、実際人魚の宮殿に集まったのは、合計で700人ほどに膨れ上がっている。

 領主からは正確な参加可能な人数は聞いていないが、約7日の間、昼夜問わず開催されると言う。

 だったら、前半と後半でこっそり入れ替わっても大丈夫な気がする。

 そもそも領主にも聞いたんだが、男というのはハーレム願望? とか言うのがあるらしく、多くの女に囲まれて、いちゃいちゃべたべたぐちょぐちょぬめぬめずっこんばっこんが好きなんだとか。

 それは我ら人魚族にとって好都合。

 特にこんな大人数が欲する子種争奪せ…いや、ぱーりーないつとやらでは、男の奪い合いが起きる可能性が高い。

 1人の男を複数の人魚で共有すれば、無駄な争いも避けられるだろう。

 その為にも、前回参加して妊娠出来た人魚達が、しっかりと教育をせねばならない。

 提供…もとい、参加してくれた男達が逃げ出す様な争いを我々がしてはいけないのだ!


 おっと、宰相よ、どうした?

 なに? 参加者に妾が一言挨拶だと? よかろう。

「おこんばんは! あちきのマブダチのトールっちが、ピッチピチのイケメンをゲットして来てくれたぜ! いえーい!」 

『チョベリグー!』

 うむうむ、全員ノリが良ろしい!

「いよいよ明日が、待ちに待ったぱーりーないつっちゅー、お持ち帰り大歓迎のイベコンの日だ!」

『ぶっとびー!』

 そう、皆で飛ぶのだ!

「ヤンママ目指してずっこんばっこんだっちゅーの、べいべー!」

『ガッテン承知の助!』

 妾の様に、しっかり妊娠するのだぞ!

「おニューのホテルまで川のぼりしてちょんまげ~!」

『余裕のよっちゃん!』

 おーけーおーけー!

「夜明けにでっぱつだぜ! 明日はマタがユルユルイケイケドンドン! じゅんびおっけー!?」

『OK牧場!』

 ふぅ…女王も楽じゃないな…そろそろ臨月のこの身には少し辛い。 

 ああ、気にするな。これも女王として人魚族を纏める者の仕事だからな、うん。

 それより、明日は宰相が引率するんだろう? しっかり搾り取ってくるのだぞ?

 おっと、人族の前では宮廷語は使わぬ様にするんだぞ? 理解されないからな。

 それと、もしも領主さんが顔を出すようならば、この手紙を渡してくれ。

 内容? ああ、このぱーりーないつを定期的に開催してくれという、要望書だな。

 何を泣いているんだ。いや、感激なんぞせんでもいい!

 その涙の為の水分は、明日にとっておけ! しっかりと濡らすのだぞ?

 馬鹿者! 涙で濡らすのではない! お主、本当はわかっておろう?

 ぐふふふふ…宰相よ、お主もエロよのぉ…。


 そんな事が人魚の国であったとか無かったとか。

 翌日、日の出前に温泉スパリゾート前に集合した、人魚さんとのぱーりー参加者を、我がアルテアン運輸が輸送する。

 新街道をこれまた新車の大型蒸気自動車がぞろぞろと列をなして、新築のホテル(無人です)へとピストン輸送。

 例え逃げ出そうとしても、精霊さんの造り出した、ホテルの敷地をぐるりと囲う高い壁が行く手を阻み、地獄門が逃げ出そうという奴らの気力を奪うのだ。

 はぁ~はっはは! 誰も逃がすもんか!

 全員人魚さんに、ぱっくんちょと喰われて枯れ果ててしまうがいい!

 あ、一応はホテルのオーナー兼ぱーりー主催者として、顔だけは出さないとね。

 ちょっと最初の蒸気自動車に乗せてね。

 挨拶したら、さっさと帰るから、ヨロシク!

 だって、長い事居たりしたら、嫁達が…ガクガクブルブル…。




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 断罪の刃  闇を照らす陽の如く

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