第667話  主催者のご挨拶

「皆様、本日はお忙しい中、アルテアン領主催の大お見合いパーティーにご参加いただきまして、誠にありがとうございます。アルテアン領を代表し、トールヴァルド地区領主である、私トールヴァルド・デ・アルテアンとスタッフ一同、心より感謝申し上げます」

 新ホテルの正面玄関前に設置された台上で、おれがそう挨拶をし、人族の男子と人魚さん合計800人という群衆を目の前にして頭を下げた。

 横にずらっと並ぶ、嫁ーずとドワーフメイド衆、アルテアン運輸のドライバー達、ユズユズ夫妻も、俺に倣って頭を下げた。

「また、新しく建造致しましたこのホテルも、本日無事にオープンの運びとなりました。まだスタッフは不在では有りますが、皆様に無償開放致したいと思いますので、どうぞご自由にご利用くださいませ」

 要は、誰も居ないけど、勝手に使ってね…って事。

「この大お見合いパーティーが、皆様にとって有意義なものになりますことを祈念いたしまして、簡単ではございますが、開会の挨拶にかえさせて頂きます。どうぞ、本日は羽目を外してお楽しみください」

 人魚さん、はっちゃけてOKだよ! って事ね。

 俺の挨拶の言葉は、大勢の参加者からの盛大な拍手でもって、無事に終えることが出来た。

 挨拶終了と同時に、飢えた獣の様な目で舌なめずりをしながら男を物色していた人魚さんが、早速とばかりに男の群れに突入していった。

 うん、もう俺は関係ないからね。

 おっと、忘れるところだった!

「大お見合いパーティーの開催期間は、本日より7日目の夕刻までとなっております。街までの蒸気自動車は、その時まで来ませんので、ご注意ください。また、食料と水はキッチンスペースに大量に保管しておりますが、調理はされておりません。我こそは! と、調理の腕を見せつけたい紳士淑女の皆様、どうか存分に腕を揮ってください。ちなみに河へは下りれますが、流れも速く、行きつくのは海ですから、どこにも行けませんよ? では………男性諸君、がんば!」

 それだけ言い残した俺達は、何台もの大型蒸気自動車の列に飛び込み、すたこらさっさとホテルの敷地からお暇することにした。

 もちろん、帰りにあの地獄門をがっちり施錠して誰も逃げれないようにしたのは言うまでもない。

 タダでヤレるなんて思ってる男共よ、地獄を味わうがいい!

 涸れ果てて、干物になったら迎えに来てやるぜ!

 ってな事を考えながら、がっちりと地獄門を施錠した俺たちは、阿鼻叫喚が始まる前にさっさと街へと帰るのであった。


 その後、街に戻るまで、誰もが無言だった。

 街に戻っても、誰一人として言葉を発しないので、運転手達に7日後の夕刻にあのホテルまで迎えに行くように申し伝えて、解散とした。


 屋敷に入って、ほっと一息ついた我が家のメンバーだったが、嫁達もユズカも目が死んだ青魚の様に濁っていたのは、仕方がないだろう。

 きっと俺も似たような目をしていたはずだ。

 だって、ユズキの目が死んでたからね。

 元気だったのはドワーフメイド衆ぐらいかな? あ、イネスも元気だった。

 メイド衆は、「男てバカのやぁ」「本当だなやねぇ」「世の中そしたきやさぁ甘ぐねぇ!」「んだ」

 多分、結構辛辣な事を言ってる気がする。

 イネスは…元気に剣を振り回してるな…いつも通りでうらやましい限りだ。

 帰宅して、取り合えずは全員心が鎮まるまでの間、お茶を飲みながらゆったりと過ごした。


 今頃、あのホテルでは乱痴気騒ぎが勃発している事はずだ。

 ギラギラとした人魚さん達のあの肉食獣の目は、夢に出そうで怖かった。

 あの美しい自然美と、大瀑布を望むホテルの中は、きっと阿鼻叫喚の地獄絵図となっているであろう。

 嫁達も、普段あの様な目で俺を見ていると自覚してくれた…のか、ちょっと大人しい(イネスは別)。

 うん、まあ分かってくれただけで十分だよ。

 ユズカは…すぐに忘れてユズキを喰っちゃうんだろうけど…ナンマイダ…。

 さてと、そろそろ落ち着いたことだし、お仕事しましょうかねえ。

 まだ夕飯までは時間があるから、頑張らないとね!


『大河さん、酷い! 私は大乱交大会が見たかったのに!』

 サラ…見たかったのか? ってか、はっきり言葉にすな!

『本当です! じっくりねっとりと砂かぶり席で見たかったです!』

 リリアさん…それって土俵際の溜席の事だよな? マニアックすぐる…

『『次回は、是非とも見学コースを作りましょう!』』

 そんなコース、作らんわ! ってか、次回?

『『もちろんです! あの人魚さんが1回や2回で許すとでも!?』』

 そういや人魚の女王さんから手紙貰ってたわ…何々…?

 ぱーりーないつを定期的に開催して欲しい…って、コレ要望書かよ!

『『やっぱり!』』

 マジかあ…もしも定期的に開催するんだったら、お前らが担当ね。

『『はぁ!?』』

 いや、だって開催を心待ちにして、間近で見たいんだろ?

 だったら、もう担当しちゃえYO!

『面倒なのはごめんDeath!』

『薄っい本を執筆するネタのために、見たいだけDeath!』

 サラ…はっきり面倒言うな! リリアさんも、エロ本のネタの為かよ!

 っちゅーか、語尾のイントネーションが、どう聞いてもDeathなんだが?

『『気のせいDeath!』』

 やっぱDeathだよなぁ…




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 断罪の刃  闇を照らす陽の如く

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