第657話  大樹の屋敷にお出かけ

 俺は嫁達とユズユズ夫妻を引き連れて、国境…ではなく、父さんと俺の管理地を隔てる高い山脈を貫くトンネルを通り抜け、モフリーナ不在ではあるが高いダンジョンの塔を横目に、蒸気自動車を走らせた。

 トンネルと父さんの領地の中心部である、領都リーカを結ぶ街道は、その人通りの多さも有ってか、しっかりと整備され、多くの人々が行き交っていた。

 俺達が乗っているこの大型蒸気自動車が走る姿も、このアルテアンの人々にとってはそろそろお馴染みの光景となってきたようで、最近は誰もこんなでか物が走っていても気にしてない。

 すれ違う馬車に乗った子供が、嬉しそうに手を振ってくれるぐらいだ。

 うん、そんな光景は前世でも良く見たな。

 そんな子供に、嫁ーずも笑顔で手を振り返していて、なんだかほっこりするなあ。


「伯爵さま…ほっこりしてられるのは今の内だけですよ?」

「んぁ? 何で?」

 助手席のユズキがいきなりそんな事を言い出すもんだから、思わず素で返しちゃったよ。

「いえ、もしやリーカへと向かう目的を忘れてはいないかと思ったもので…」

「そんなの覚えてるに決まって…いや、確かにそうだな」

 そうだった! これから人魚さん達のサバトのいけにえを捕獲に行くんだった。

「こんなほのぼのしている場合じゃないな…気を引き締めないと…」

「ええ、その通りです。気を引き締めて、活きのいいのを捕まえないと…」

 ユズキと2人で、ごくりとのどを鳴らした。

「いいか、ユズキよ…この際、金に糸目は付けないと言いたいところだが、あまりにも好条件で男を募集すると逆に疑われるかもしれん…」

「それはダメですね。きっちりとカタに嵌めないと」

 ユズキも大概だな。

「ああ…だから、勤務先と本人への金銭的な補償と、旅費の全額負担ぐらいにしておこう」

「名目は、アルテアン領の未来を担う若者の集団お見合いとかにしませんか?」

「おう、ナイス提案!」


 そんな怪しい話をしていれば、嫁達が気付くのは当然の事。

 後部座席で、嫁ーず&ユズカが、

「前の方で、生贄の捕獲とか話してますけど、メリルさん…もしかして?」 

「ミルシェさん、それはあなたが想像している通りよ」

「でもでも…ちょっと言い方に問題が…」

「ミレーラよ、確かにそうだが…内容的には間違いないぞ?」

「財政を預かる私としましては、無駄な経費など掛けずに捕獲したいところですけどね」

「マチルダさん、辛辣だねえ~! でも柚木は貸さないよ?」

 とっても楽しそうだ…うん。


 ほのぼのには程遠い物騒な話も大いに交えながら、俺達一行は領都リーカにある、今は巨乳メイドさん達が管理する、あの大樹のそびえる屋敷へと到着した。

『トールヴァルド伯爵様、奥様方、ようこそいらっしゃいました。どうぞ、ごゆるりとお寛ぎください』

 父さんの趣味なのか、我が家とは違った趣のメイドさん達が並んで出迎えてくれた。

 うん、メイドさん4人共、見事な山脈をお持ちで…俺も嫌いではないが、視線はそこには向けない。

 凝視したりすると…

「ぐぼぉぉぉ!」

 ユズキの馬鹿…嫁が横にいるのに、アレに見とれてたな?

 ユズカの見事なジェットアッパーが鳩尾に突き刺さっていた。

 地獄の苦しみだぞ、あれは。

 威力とか角度によっては、横隔膜が破れるから、良い子は真似しないようにね。

 とか思っていると…

『じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ…………』

 嫁ーずの10個の瞳が、俺を見つめていた。

 な、何かな?

 俺がちょっと引き気味に皆を見てると、

 突然車座になって嫁ーずがこしょこしょと話し始めた。

「…見てないので」「油断は…」「あれは脅威です…」「胸囲だけに?」「驚異の脅威は胸囲だった?」

 時折漏れ聞こえる声は、あえて聞こえないふりをした方が良いんだろうなぁ。

 ってか、誰だ、上手い事言ったのは?


 そんな俺たちを微笑ましい物でも見るように見ていたメイドさん(巨乳)が、

「皆様、どうか中でごゆるりとお寛ぎください…外でそのようなことをされますと、領民達に…」

 言い難そうにしていたけど、意訳すると『屋敷の外でそんなことすんな、恥ずかしから中でやれ!』って事なんだろうな…ごめんなさい。


 兎にも角にも、とりあえず本日の予定地には無事に到着。

 さ、明日はいっぱい狩る…もとい、調達…じゃない、人魚さんとの出会いの場への参加者を張り切って募集すっぞ!




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☆新作始めました。こちらも、どうぞ <(_ _)> よろしくお願いします

 断罪の刃  闇を照らす陽の如く

 https://kakuyomu.jp/works/16816927861644288297

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