第640話 結界の秘密?
さて、皆の待つホワイト・オルターまで戻ってきた俺(+ボーディ&カジマギー)は、少しだけ休憩した後、1人で取りあえずこの樹なんの樹気になる樹型のシールド発生装置の前にやって来た。
まあ、何をするのかは誰もが分かっているだろうけど、シールドを張る場所の調整をするためだ。
ついでに、あの散々勿体付けて登場したにもかかわらず、一切の見せ場も無く地下へ深くへと退場したテスカトリポカに掛かっていたシールドの現状を知る為でもある。
結局、あいつって何だったんだろうなあ。
『気になります? 気になりますよね?』
まあ、サラなら知っててもおかしくないだろうけど…
『実はね、局長から色々と情報を貰ったんですよ!』
おまっ、もっと早く教えてくれてたら、あんなにビクビクせんでも良かったんじゃねーのか?
『いえいえ、実はほんのちょっと前に教えてもらったんですよ。大河さんが城の地下で汚水まみれになってた頃に』
あっそ。確かに地下は臭くて汚かったよ…変身してたから俺は臭くなかったけど。
『あ~…さっき、ボーちゃんとカジちゃんがシャワーしてましたねえ』
また勝手に愛称なんて付けてからに…
『いえ、それはまあいいんですよ。あいつの事です』
まあ、それはそうだが…んで、あいつって結局のところ何だったんだ?
『実はですね、やっぱ異世界の神が憑依というか同化してたみたいです』
ほうほう! それにしては、特に動きとか無かったみたいだけど。
『あれには無数の目があったじゃないですか』
ああ。チラッと見ただけで、背中がゾワゾワするぐらいの恐怖を感じた無数の目があったよな。
『そうですそうです! んで、あいつを結界の中に閉じ込めてたでしょう?』
おう、そうしないとヒルコを焼く時に危険だったし、そのままの流れで閉じ込めてたんだけど。
『あのシールドの設定をいじる時、大河さん、何か変わった事をしませんでしたか?』
へっ? 何をって…炎と熱を閉じ込めて外に漏らさない様にぶ厚く硬く強くして、んで酸素を取り込み二酸化炭素は排出して、細かい塵は外に出さない様に…
『あ、もういいです』
いいのかよ! お前が聞いてきたんだろうが!
『いえ、とにかく大河さんがいじくった設定のせいで、どうもシールドの中は鏡面の様になってた様です』
外からは半透明に見えたんだけど。
『一種のマジックミラーの様な物ですね』
マジックミラー…何だろう…もの凄く怪しい用途のアイテムに聞こえる。
『ああ、そう言えば…』
そう言えば?
『前世の大河さんのAVのコレクションの中に、マジックミラーの車に乗って大勢の人の前で…』
ストップだこの野郎! それ以上、喋るな!
『ああ、大河さんってこんな願望があるんだな~って見てましたけど』
や・め・ろ!
あれは…一度見て封印したんだ…って、言わせるな、ボケがーーーー!
『まあ、封印ってのは今回も当てはまりますね』
ほぇ?
『ヒルコの時は特に何も感じなかった様ですが、テスカトリポカはシールドの内側…つまり鏡面になった結界に映る自分の姿に、恐怖して固まってた様です』
何だと?
『神とはいえ、まさか自分があんな姿になってるなんて信じられなかったらしく』
って事は…無数の目で四方八方を見ていたのは、悍ましい自分の姿で、神のくせにその姿に恐怖して動けなかったって事なのか?
『その通りです!』
しょうもない奴…ってか、憐れな奴…。
『前世の大河さんと同じですね』
ちょっと待て。どういう意味だよ。
『え? 自分の姿を鏡で見たくなかったでしょう?』
そこまで不細工じゃなかったわ! 結構、いけてたわ!
『ただの筋肉ゴリラだったじゃないですか。空手に人生を奉げた不細工な筋肉ゴリラ…他の星に転生す…ラノベみたいですね』
お前、たいがい失礼なやっちゃな! これでもそこそこ人気あったわ! 道場の子供達からも人気高かったんだぞ?
『それでですね。流石に地下200kmはシールド発生装置の範囲外ですから、今頃は地下でのびのびしてるみたいです』
聞けよ! 聞いてって!? ねえ、俺って前世、そこそこモテたんだってば!
『きっと暗い地下深くでだと、自分の姿を見る事も無いでしょうしね』
聞けって! お前がフッてきた話だよな? なぁ、無視すんなや!
『さて、それでは晩御飯の準備に行きましょうかね』
おーーーーい! お願いだから聞いてって! 反応してって! おーーーーい、サラさんや~~~い!!
『……………………』
何だ、このもの凄い敗北感は…俺、何に負けたんだろう…。
あれ? なぜか目から汗が…。
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