第633話  解決方法への糸口

「ふむ…迷路型が理解できんか?」

 何か偉そうなボーディに、この場の全員がコクコクと頷く。

「まあ、分らんでも仕方ないかのぉ。そもそも迷路と迷宮の違いとは何じゃと思う?」

 を? これは俺でも知ってるぞ。

「迷路ってのは、入口と出口があって、複数の枝分かれした道があるが、正解を辿れば出口につながってるもの。んで、迷宮ってのは、入口がと出口があるのは一緒だけど、1本道になってるものだろ?」

 自信満々に俺が答えたのだが、

「まあ、迷宮に関しては基本的にはその考えでええじゃろう。実際の迷路はちと複雑でな、入口も出口も1つでなければならないという決まりは無いのじゃ」

「えっ、そうなの?」

 入口も出口も1つって決まってないのか…

「うむ。迷路には出入り口が複数あっても良い。逆に迷宮では出入口は1つじゃ。とは言っても、どちらも日々進化しとるでの、規則性が変化しておるやもしれん。しかし、ダンジョンマスターは、この規則を元にダンジョンを構築しておるのじゃ」

 あ、モフリーナとモフレンダが納得顔してる。

 って事は、そういうルールがダンジョンマスターにはあるって事か。

「迷宮型には地下や山野といっや自然を利用したダンジョンや、塔や城の様な建築物を利用したダンジョンなど、様々なタイプがある。これはダンジョンマスターにも言える事じゃ。多くの場合は、塔か地下が多いのぉ…まれに山じゃとか海じゃとかの迷宮も聞くがの」

 ほっほう~! 海のダンジョンとか面白そうだなぁ。

「ま、ほとんどのダンジョンマスターは複数の特性を持ったマルチなタイプになるはずじゃ」

 ん? マルチ?

「えっと、モフリーナは…どのタイプ?」

「私は、塔型を基本として、地下の様な閉鎖空間と山や野原の様な開放空間を迷宮化できます」

 あ、だからダンジョン大陸全土を受け持てるのか…知らなかったとはいえ、ぴったりだったんだな。

「…地下迷宮型…」

 ポソッとモフレンダが教えてくれた。

「なるほど…マルチ・タイプと地下特化型ってところか?」

「うむ、お主のその考え方は正しいぞ。そしてこの妾は迷路特化型じゃ」

 でも迷路って出口有るんだよなあ…それでダンジョンってできるのか?

「な~に、規則に従い構築すればよいだけじゃ。それに、いかなる規則にも必ず穴はあるのじゃしのぉ」

 悪い笑顔で何か言いだしたよ、のじゃロリが!

「な~に、入口が何も必ずしも入口である必要は無いという事じゃ」

 んんん?

「それに、地下に入口が有り、地下に出口があっても問題ないじゃろ? それが誰も出入りできない地の底であっても」

 んんんんんん!?

「つまりは、あ奴を地下深くに落としてじゃな、壁と言う壁を破壊不可能なもので造り、そこから迷路を造るのじゃ。その時、あ奴の居る場所を入口とし、そこから迷路を伸ばした先があ奴のおる場所になる様に設計すれば良いだけじゃ」

 って事は…地下から出られない、ぐるぐる迷路?

「なるほど流石です! 見事なルールの穴を突くダンジョン構築ですね」

 モフリーナが褒め称え、モフレンダがぱちぱちと拍手をしていた。

「って事は、入口から入って、出口は入口の目の前にって事? 見た目的には入口が2つある様に見えるって事だよな? あれ、出口が2つなのか?」

 混乱してきた。

「何も、出入口にここから入れという看板を掲げるわけでは無いのじゃから、どっちが出口でも入口でも構わんのじゃ。暗い地下深くの迷路で永劫彷徨っておればいいのじゃ」

 こっわ! 想像したら、めっちゃこわ!

「では、これで解決方法への糸口は見つかりましたね」

 ナディアが俺に告げる。

「まあ、当分は問題なさそうだな。幾分修正は必要だが、基本はこの方法で行こう」

 そう決まったら、さっさと家族の元に帰るべ。

 もう、本当色々と疲れたからなあ…この戦争。

「して、ダンジョンを造るためのエネルギーはもらえるんじゃったな?」

 ああ、モフリーナと話したのか。

「ああ、やる。俺が倒れない程度なら、いくらでもな」

 俺の全ネルギーとか言われたら、断固拒否するがな。

「そうじゃなあ…そこのモフレンダにやったエネルギーの10分の1もいらんのじゃ。そもそも、ダンジョン大陸とかの一部ももらえるのじゃろ? ならばここで無理をしてでもあ奴を封じ込めても、充分に採算が取れるというものじゃ!」

 あ、そんだけでいいのか。

「んじゃ、あとでまた例の水晶ちょうだい。それにエネルギー込めるから」

 モフリーナに、いつも持ってくるエネルギーを入れる水晶をお願いすると、にっこり笑って手渡された。用意が良いね…モフリーナさん…。

 そこに、10分の1とか言ってたけど、まあおまけで2分の1ぐらいまで入れた。

 だって、いつ渡したエネルギーの事かわかんないもん。

 余分に入れて悪い事ないっしょ! 大は小を兼ねるって言うしね。

 手渡されたその水晶をまじまじと見たボーディが、

「これに、な…何十万人分の魂が込められておるのか…お主、まさか魔王かや…?」

 などとつぶやいていたが、魔王様は俺の領地の、のどかな牧草地で牛や羊を放牧して暮らしてますけど?


 家族の元へと戻った俺は、のじゃロリの提案に全面的に乗っかることにした事を報告した。

 ついでに、それが終わったら、テスカトリポカを封じ込めている結界を皇都にかけ直して、皇都を焼き払う事も言っておく。

 俺の皇都焦土化作戦を聞いた皆の顔は、非常に明るかった。

 唯一、母さんだけが不満顔であったが。

 そんなに暴れたかったのか、母さん…

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