第634話  また幼女なの?

 皆にテスカトリポカへの対策を報告すると、ボーディがさっさと終わらせようと言った。

 

「それでは始めるぞよ? 心の準備は良いか?」

 テスカトリポカを閉じ込めた結界の前に集合した我が家のメンバー一同に向かって、ボーディが告げ、全員、ゴクリッと喉を鳴らし、大きく頷き了承の意を表した。

「それでは…お主、結界を縮めてくれんかの」

 俺に向かってそう告げるのじゃロリ(但し、のじゃは出ていない)。

 俺は小さく深呼吸をして、モフリーナに通信の呪法具で合図を送った。

 元々、このテスカトリポカを閉じ込めている結界を発生させている結界装置は、モフリーナのダンジョンに設置していたもの。

 なので、今回は作戦開始前に、設定の仕方をレクチャーしておいたのだ。

 まあ、ここから発生装置までちょっと距離が有るから、人手は欲しかったんで丁度いいんだけど。

 モフリーナが結界の設定を変更したのか、少しずつ結界が小さくなってゆく。

 それに伴い、さっきまで焦土と化した結果内部にあった地面が徐々に俺たちの前に現れた。

 まだ微かに湯気を上げる地面は、まだそこそこの温度になってるのだろう。

 あの爆発的な燃焼の影響か、よく見ればあちこちの地面が黒くガラス化しているのが見て取れる。

 超高温に曝されたんだから、こうなるのも当然かもしれない。


 そういえば、超古代文明の時代に核戦争とかがあって、ガラス化した地層や遺物とか遺跡とかが発見されたとかされなかったとか書かれた記事を読んだことがあるが、俺的にはその記事は眉唾物だと思っている。

 物質がごく短時間で超高温に加熱されるか、それとも超高温状態がかなりの時間が続かなくては、ガラス化は難しいそうだ。

 核なんて物を使えば、一瞬で高温になるかもしれないが、爆風とかはどうなるんだって話。

 そしたら異物や遺跡なんて残ってるのが不自然に思える。

 ガラス化した町が発見されたとか、もう信ぴょう性皆無だと思うけどなあ。

 おっと、そんな事はどうでもいい。


 テスカポリトカを閉じ込めていた結界は、俺たちの見守る中、すでに直径5m程にまで縮まっていた。

 中では目ん玉お化けのテスカポリトカが、ちょっと慌てているようにも見える。

 目ん玉の半数ぐらいは俺達を睨んでいて、半数は小さくなっていく結界を見ている…様に見える。

 そんな目ん玉お化けの事など知った事かと、どんどん結界は小さくなてゆく。

 もしかしてモフリーナは、結界の直径を縮めると同時に、結界の厚みも変えているんだろうか?

 直径1m程になった結界は真っ赤に染まり、今までの様な半透明ではなくなっていき、中が全く確認出来なくなった。

 あれ? 直径1mって…結界内部の空間の事なんじゃなかったのか?

 もしも結界がブ厚くなってたんだとしたら、あの中の空間って…どんだけの広さが有るんだろう。

 いや、あんな奴がどんな状態だって、俺は別に気しないんだが、もしかしてもっと結界を小さくしたら、それだけで終わったんじゃね?

 俺のそんな思考を読んだのか、

「あいつがそんな事ぐらいで死んだりしますかね? あの巨体がここまで小さくなったんですよ?」

 リリアさんが、ボソッと俺に向かって呟いた。

 なるへそ、言われてみればその通りだ。

 もしも小さくしても死ななかたっとか、火事場の馬鹿力で結界を破って出て来たとかなったら嫌だな。

 閉じ込めたままボーディに頼むのが一番いいかもしれん。


「うむ、丁度いい大きさじゃな。それでは、次の段階に進もうかの…」

 そう言いつつ、結界の球に近づくボーディ。

 真っ赤な球のすぐ目の間まで近づく。

 んん? そういえば、ダンジョンって自分のダンジョンに接触していないと、拡張とか出来ないじゃなかったっけ? 

 ボーディーのダンジョンは、あの汚水の下だけだったはず…接触してないけど、大丈夫なのか?

 そんな俺の考えが顔に出ていたのか(ポーカーフェイ得意なトール君にしては、非常に遺憾だが)、俺の顔を一瞥したボーディは、

「妾はボーディ。この星の最初のダンジョンマスターであり、全てのダンジョンマスターの元となる50人のオリジナル・ダンジョンマスターの1人じゃ!」

 オリジナルなのに50人って、多くね?

「その妾の手に掛かれば、新たなるダンジョンマスターを生み出す事など、目を瞑っていても出来る事じゃわ! さあ、よく見ておれ、妾の真の力を!」

 大きな声でそう叫ぶと、どこから取り出したのか、右手に握った小さなナイフで左の掌をグッサリ刺して、傷口から零れ出る血を地面に垂らす。

「我が血肉を与えし、三世の理を超ゆる新たなる眷族よ。輪廻の輪を越えし、我が眷族よ。我が名、ボーディの名の下に命ず。今ここに権限せよ、ガジマギー!」

 ボーディーが高らかに宣言すると、その足元が光り輝き、1人の少女跪いた姿勢で現れた。

「我が主の命により、ここにガジマギー、参上仕りました」

 それはボーディーによく似た幼女であった。


 え、また幼女なの?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る