第589話 むっふー!
嫁たちにそこまで言わせておいて、いつまでもグダグダしているようじゃ、男じゃない。
やるだけやってやらー! と、俺も銀ピカ仮面(仮称)に変身をした。
ところで今回の皇都殲滅作戦は、恐怖の大王戦と幾分違いが有る。
最大の違いは、父さんに代わりユリアちゃんが産駒戦に参加するという事だ。
あの蟲達の成虫は、生身の人に卵を産み付けるそうだ。
どっかの宇宙人の卵みたいに、カニみたいなのが顔に貼り付くというわけでは無く、素肌の部分に産卵管をぶっすりと刺すんだそうだ。
それも、1人に付き1匹なわけも無く、無数の蟲が寄ってたかって…らしい。
なので、多分普通の人の範疇に収まってる? と思われる父さんは、今回は裏方。
代わりに実はスーパー幼女ユリアちゃんが参戦するのだ。
ナディアを筆頭に、アーデ、アーム、アーフェンの3人と妖精たちには、油を撒いて貰ったり、常時シールドで身を守りつつ、吸いとーる君で俺たちが焼き尽くしたゾンビと蟲を吸い取る役に徹してもらう。
あの蟲が、俺の創った最高傑作の妖精達に寄生するのかどうかは不明だが、用心するに越した事は無い。
全員が変身およびシールドを展開し終え、妖精たちが吸いとーる君を装備しようとした時、ちょうどモフリーナが俺たちの元にやって来た。
もとい、彼女の陰で分かりにくいが、モフレンダを連れてやって来た。
「お待たせいたしました。用意されていた油を、皇都入口にお持ちしました」
そういいつつ、何故か大量の柄杓を俺に手渡すモフリーナ。
いやそれ、油の所に置いて来いって…何で持って来たんだよ…
仕方が無いので、ナディアをちょいちょいっと手招きして、柄杓を手渡していると、
「あ…あの…」
モフリーナの背中から顔だけ出したモフレンダが、
「…ダンジョン…たすけて…」
っと、声を掛けて来たので、ちょっとびっくり。
「トールヴァルド様。どうかよろしくお願い致します」
モフリーナも、そういって頭を下げた。
ちらっと背後を見ると、ナディア達も嫁たちも固まっているのがよく分かる。
助ける云々じゃなく、モフレンダが自ら話しかけてきた事にびっくり。
人が怖くて話せない(モフリーナ談)モフレンダが、勇気を出してお願いしてきたんだ。
お願いされた俺としては、頑張らねばなるまい!
「モフリーナ、モフレンダ。俺達アルテアン一家にまるっとまとめて任せとけ!」
ケモ耳娘達に向かって、サムズアップで応えると、
「お願いします」「…うん…」
そういって、モフリーナは、もう一度深々と頭を下げ、モフレンダは、小さく手を振ってくれた。
うっし、それじゃ作戦開始しますかね!
あ、そだ…
「ユリアちゃ~ん! あの壁の向こうに着いたら、パワー全開にするから、もうちょっと大人しくしててね~。ここで暴れたらダメだよ?」
コルネちゃんに手を引かれて歩き出したユリアちゃんだが、めっちゃ嬉しそうに繋いだ手をぶんぶん振ってる。
仕草は可愛いんだけど、2人共変身してるから、何とも微妙な光景さだ。
「は~い! あっちいったら、えいっ! ってしてもいいんだよね?」
うん、えいっ! てする相手はゾンビだからね?
「うん、全力全開でやったんさい! お兄ちゃんが許可する!」
「わ~い! やった~!」
めちゃ喜んどるな。
「あ~コルネちゃん、ナディア…ごめんだけど、ユリアちゃんの面倒見てあげてね。ちょっと…いや、もの凄く、お兄ちゃん心配…」
お兄ちゃん、本当に本当に心配です。
「「ぷっ!」」
何故か2人は小さく噴き出した。
「お兄ちゃん、心配しすぎ! 生身でユリアちゃんに傷付けられる相手なんて、父さんぐらいだよ」
「マスター、私も激しく同意します。空から隕石でも振って来ない限り、傷なんてつきません」
2人の言葉に思わず納得…って、コルネちゃんって、父さんの事、何だと思ってるんだろう?
「むっふー! ぜんぶ、ぱんちしちゃうぞー!」
褒められた(?)のが嬉しいのか、もんの凄く張り切るユリアちゃん。
最後尾のユズキとユズカも、嫁たちも、小さく肩をすくめてるけ。
それって、絶対にヤレヤレってポーズだよね?
俺に対してじゃないよね?
ユリアちゃんの言葉に対してだよね?
『ヤレヤレ、いつまでも妹離れできないシスコン兄貴だなー。By 周囲の人々の呆れた心の声』
…サラ、お前いつの間に折れ以外の人の心を読めるようになったんだよ…
『貴方様は馬鹿ですか? 読まなくとも、皆さんの考えていることぐらいわかります』
う、嘘だろ!
『マスター…流石にこればかりは擁護できません…』
ナディアまで!?
『シスコン』『ロリコン』『ド変態』
『『『全部まとめて通報乙!』』』
アーデ、アーム、アーフェン! その変なオチはヤメロ!
『『『『『『この場にいる全員の総意です!』』』』』』
あぅ…
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