第581話  有給消化?

「彼女達は、ダンジョンの神様の存在を信じているのですね」

 まあ、モフリーナもモフレンダも、管理局の事は知らないからな。

「ああ、ナディアの言う通りだ。ダンジョンの神様が管理局の局員だとは考えてもいないだろう。いや、管理局の存在には、薄々気付いているかもしれないけど…」

「気付いているんですか、マスター?」

「ああ、アーデは彼女達の行動で違和感を感じたことは無いか?」

 ん? っと首を傾げるアーデ。

「彼女達は…特にモフリーナは、ネスや太陽神、月神や大地神の存在に疑問を持っているみたいだぞ」

「でもでも、マスターには黙って従ってますよね?」

 顎に人差し指をあてながら、小首をかしげるアーム…あざと可愛い。

「それはな、俺が大量にエネルギーを与えてるからだ。それとダンジョン島を与えたりもしたけど、とにかく利になるからだ」

「なるほど! それでマスターの言葉に従った方が、利になると考えてるのですね」

 アーフェンよ…胸を張って答えるのは良いのだが…色気が無さすぎるぞ…ってか、3人の角に付いてるリボンは何?

「その通りだ。だから、俺のバックに管理局とは言わないが、何かがあるとは気づいていても、言葉にはしないんだろうな。ところで、3人の角に付いてるそのリボンは何?」

「「「コルネリア様とユリアーネ様が付けてくれました!」」」

 あ、さいですか。仲が良ろしくていいね、君達。

 


『た、大変です! 今、サラの脳を使って管理局と通信を行ったのですが…』

 俺の脳内に響く、焦りまくったリリアさんの声。

 どうしたんだ?

『この星のダンジョンを管理していた神…もとい、局員と連絡が取れません!』

 え、どうして?

『数日前に、総務課に有給休暇の申請を出してる様なのです』

 有給ね。いいじゃん、取らせてあげなよ。有給消化も権利だからな。

 ってか、総務課あったんだね、管理局にも。

『いえ、それはそうなんですが…』

 んで、何時戻ってくるの?

『問題はそこです! 有給期間なんですが、数日前から、200年ほどの期間なんです!』

 に…200年だとーーー!?

 ちょ、その理由は!

『申請理由は、私用の為だそうですが…備考欄に本人の自筆で、【探さないでください】と、一言書かれているそうです…』

 え? 家出? ってか、職場放棄?

『どうやら、ダンジョンを創って放置しまくってるらしく、モフレンダとか先の汚水の底のダンジョンの主の様なダンジョンマスターが続々と見つかってるみたいです』

 え、このタイミングで?

『あ、いえ…時系列的には、貴方様がモフレンダの実情を知ったのが切っ掛けの様です。その後、貴方様が局長へ通報するかもと考え、事の発覚を恐れた神役の局員が逃げ出した様です』

 ………。

『それで貯まりに貯まっていた有給を使う振りをして逃げ出そうとしたらしいです。有給許可申請書を総務課に叩きつけて、脱兎のごとくその場から走り去る姿が、管理局内部で多数の局員に目撃されています…』

 何だそりゃ。

『そこに来て、今回の通信です。例の局員が逃げ出してしまったため、確認の為に総務課局員が資源エネルギー開発課へ確認に向かった所、色々と書類に不備や捏造や改竄が見つかり、現在は管理局監察本部の局員が、ガサ入れに向かっている所です…』

 どっかで聞いたような部署名と話だな…

『調査結果は、ガサ入れで押収するであろう証拠品の検証の後になりますが…どうします?』

 どうしますって、何を?

『ダンジョンの強度の事です』

 あ~うん、どうすべかなぁ。

 まあ、別に聞かなくても大丈夫っちゃ~大丈夫なんだけどね。

『そうなんですか?』

 ああ、何とかなると思うよ。


 いざとなったら、精霊さんパワーで汚水を綺麗さっぱり消し飛ばせばいいだけだ。

 ただ、現在の怒れる精霊さんにそれをさせると、勢い余ってダンジョンごと吹き飛ばしそうだったから、確認しただけ…だったんだけど。

 まさか、管理局の闇がまた1つ白日の下に曝されるとは思いもしなかった。

 あのキモイ蟲の分析は、明日には完了するとかモフリーナは言ってたから、皇都殲滅? 消滅は、明後日ぐらいかな。

 それまでは、ちょっと待機しましょうかね。


 あれ? 何か忘れてる様な…

 あ! 思い出した!

「おい、サラ、リリアさん! あのゾンビ擬きの発生の原因が、間接的に管理局にもある様な事を言ってたけど、どゆ事だ!?」

 確かにそう言ってたよな?

「この戦争の為に、ダンジョンの上に有る汚水施設を管理したり整備したりする人達も戦争に駆り出しちゃったんで、結構な期間メンテナンスしてなかった事が原因ですから、間接的な原因ですね」

「ん? メンテナンスしてなかったから、ゾンビが生れたの?」

 サラの言う事は、微妙に分りずらい。

 いや、俺の理解力が足りないのか?

「違います! あの蟲がダンジョンから這いだす隙間が出来た原因が戦争なんです」

 ん?

「だーかーらー! メンテナンスを怠ったから、摩耗したり壊れたりした敷石の交換が出来なかったらしいんです。つまり、それだけ人手不足になったのは戦争の所為だし、馬鹿皇帝を戦争に駆り立てたのは、馬鹿局長のせいですから」

 馬鹿馬鹿ひどいな、おい。

 それにしても、なるほど…局長、碌な事しないな…。

「しかし、未稼働のダンジョンが発見できたのも、局長のおかげでもありますけど」

 リリアさんの瓢箪から駒的フォローが悲しいな、局長さん…。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る