第556話 裏の作戦
俺が連合軍に立案した作戦は、非常にシンプルな物だ。
まず、こんなくだらない戦争で味方の損耗を出すわけには行かないので、連合軍は基本的に防御に徹してもらう。
それも、数班に分けて、このデカい防壁の上でのみ。
4層のこの巨大防壁の最奥…つまりは、我軍の本陣のある最終防衛ラインにある防壁には、実は出入りする場所は、敵軍側からは一切見えない。
出入り口は、壁と同じ素材で作った人が通れる大きさのはめ込み式の扉になっているのだ。
つまり、敵側からはただの壁にしか見えないのだが、逆側…つまり我々側からだと、有る部分を押せば壁が敵側へと倒れる様にはめ込まれている扉が有る。
敵さんに、たとえその一見すると継ぎ目も無い壁にしか見えない出入り口を見破られようとも、爪すら引っかからない一枚壁なのだから、引っ張る事も出来ない。
よくお堀のある西洋の城とかにある吊上げ式の跳ね橋を、 俺流にアレンジした物だ。
もしも戦後に不都合がある様であれば、門に造りかえて普通の扉を設置してもらっても構わない。
だが、事が済むまではこのままだな。
っと、話が逸れた。
要は、味方の兵達は、防壁の上で大人しくしててねっと言う事。
これの班割には、各兵達のトップに考えてもらおう。
あ、女性兵士さん達は、基本的に最終防衛ラインに配備してもらう。
何故かというと…実は前線側には、あまりトイレがつくれなかったから。
女性の方達は、おトイレが近いと思って、一番トイレの数が多い最終防衛ラインにまとまってもらってます。
これも偏見とか差別とか言われそうだけど、俺の気遣いと言う事で許して欲しい。
その話を作戦会議でした時には、多くの人達が苦笑いしていたが…。
そしてホワイト・オルター号は、突撃部隊を乗せて敵陣へと切り込む。
突撃部隊は、我が家のメンバーと、父さんの部下の騎士さん達20名と、アーテリオスの聖騎士さん達20名と決まった。
我が家の班別けはすでに済んでいるので、あとは予定より多くなった騎士さん達なんだが、もう全員を父さんに任せる。
もちろん騎士達と父さんが搭乗するのは、飛行船の本体の中のカーゴルームだ。
基本的にシールドで防御されたこの飛行船であれば、一切攻撃は受け付けないので、どこに着陸しようとも問題は無い。
だが、今回は可及的速やかに敵を排除したいので、敵の目の前に着陸する予定だ。
着陸後は、速やかに連合軍の最大戦力である我が家のメンバーで、敵軍をとあるポイントに追い立てる。
そして、ネス様の神罰によって、敵軍を壊滅。
打ち漏らし連合軍側に逃げた者は、防壁にて殲滅。
自国へと逃げ帰る者は、俺達が追い詰める。
途中の村々の被害者たちに関しては、ホワイト・オルター号で保護・搬送をする。
防壁まで運ばれた被害者たちのケアは、魔族さん達(俺が領地から呼んだことにしている)がする事になっている。
鬼畜で卑劣で畜生道にも劣る外道たちは、我が家と選抜された騎士さん達が殲滅する。
そして俺達によって、解放された村や街まで我が連合軍は前進し、、王国と神国で復興援助を行う。
もちろん戦後の人的・物的な支援だけでなく、政治・経済にまで援助は惜しまないつもりだ。
細かい部分は大分端折っているが、ここまでが作戦内容の大筋だ。
基本的に、我が家…いや、俺が出る事になった時点で、負け戦は100%無い事になっている。
もっとも、本当にそんな少数の手勢でこの大軍を追い詰める事が出来るのかという質問も多数出たのも確かだ。
当然ながらその質問は予想出来ていたし、回答も準備している。
「すべてはネス様の御言葉のままに」
諸国漫遊している御隠居の持つ、印籠と同じ効果を持つこの言葉に、全員平伏し(嘘です)渋々ではあるが納得してくれた。
さて、実は我が家のメンバーに伝えられた裏の作戦は少々違う。
敵を追い立てるのは、まあ同じなんだが、その後はモフリーナによってダンジョン大陸へと跳ばされる。
ダンジョン大陸では、大勢の敵軍を地下2階のダンジョンにバラバラに放り込む。
もちろん、跳ばした兵隊たちは各人をもふりんがしっかりと観察しチェックする。
問題の無い者はこっそりと安全地帯へと誘導し保護するが、問題のある奴らには当分出口も分からないダンジョンの地下で、当分の間彷徨ってもらうつもりだ。
そこで野垂れ死んだところで、俺達は感知しない。
だが、最終的には、問題のある者はダンジョンの肥やしとなってもらう。
そして外道な行いをしていた者も、基本的にはダンジョン大陸の地下3階送りだ。
捕縛時に暴れて殺されようと、俺は知らんよ。
外道な奴には、外道な処罰をする必要があるから、即処刑が望ましいのかもしれないが、ちょい保留。
だが、こいつらは、一切のチェックも無しに1か所にまとめて閉じ込める。
地下の2~3階に送り込んだ奴らには、まだ使い道が有るので、積極的な殲滅はしない。
使い道って何だ? って思われるかもしれないが、それは戦争が終わってからの事。
さてさて、敵の首魁であるダース皇帝君だが、こいつは駄目だ。
生かしておくわけには行かない。
だが、見つけても即処刑とはいかない。
取りあえずは捕縛して、こいつの祖国というか暗黒教ダークランド皇国まで連れて行く。
もちろん、グーダイド国王やべダム首長も一緒にだ、
そして、皇国にて公開斬首となるだろう。
いや、散々民衆を苦しめた奴だからな…あんまり見たいものでもないが、それは仕方ない。
いよいよ明朝から作戦開始なのだが、どんな大軍であろうが、神様達がついている我軍に絶対に負けないと分っている自軍の兵達は、実にリラックスしていた。
もちろん疲労も無く、しっかりと食事をし、清潔で安全安心な寝床でゆっくりと休んで英気を養っているのだから、数的不利も覆せそうな兵達であるし、そもそもこの巨大防壁を抜く事は不可能だ。
それが分かっている我軍は、実に余裕綽々である。
うん、これなら本陣を離れても問題ないだろう。
さあ、明日の日の出が作戦開始の合図だ。
今夜は、自室にガッチリと鍵を掛けて寝ようかな。
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