第542話 ふぅ~♡
「局長曰く、ダース君には貴方様の情報を与えていたそうです」
ん? 俺の情報?
「異性の幼馴染とのリア充生活を満喫していて、しかも重婚した相手が王女様だったり、他国の姫巫女だったり、年上の女騎士だったり、同じく年上の遠縁のナイスバディーな従兄妹だったり、しかも毎夜の如く酒池肉林だとか、女神の使徒なのを良い事に好き勝手してるだとか、一国を思うがまま裏で操る黒幕だとか、そりゃ~もうありったけ全部ぶっ込んで吹き込んだらしいです」
……頭痛てぇ…
「真実と虚偽を微妙に混ぜているので、話術によっては信じてしまう可能性が高いかと思われますね」
……なるほど。いや、でも待てよ?
「確か局長は、俺の未来を見ずに、馬鹿皇帝に身内の暗殺とか戦争とかを焚きつけたんじゃなかったのか?」
確か、色んな時間軸を好きな時に覗き見る事が出来るとか。
そんで俺の未来を見るのが面倒になって、放置したとか聞いたけど…嫁達とかの話って、局長が馬鹿皇帝を焚きつけてから何年も後の事じゃないのか?
「それなんですけど…非常に言い難いのですが、貴方様が新婚旅行と称してバカンスに行っておられた時に、過去のダース君に吹き込んだようです…時系列的には、貴方様が結婚してバカンスに行くのを見た局長が、過去のダース君に見たまま全てを夢枕に立って囁いたとか…」
おい!
「つい数か月前の事じゃねーか! それで面倒になったからって放置したとか言ってんのかよ、局長さんは!」
「そうみたいですね。あの方にとっては、1分前も百年前も同じ感覚の様ですから」
リリアさんの説明が理解できない…どゆこと?
「あの方は、無限の時間の中を漂ってます。この世界に生きる人や、貴方様の前世生きた世界の人の様に、一定の時間の流れの中に生きているわけではないので、1分前の事でも、遥か過去の事の様に感じたり、逆に遥か過去に起こった出来事を、今まさに体験している様な感覚と言いましょうか…時間の感覚が違うのです」
うむ、理解できないって事は理解出来た。
「つまり、馬鹿皇帝に十年も前に吹き込んだ事は、実はこの世界だと数か月前の出来事だと?」
「ええ、その理解で正しいかと…」
ややこしすぎる!
「って事は…だ。あの馬鹿皇帝は、俺の事を恨んで? 羨んで? どっちでもいいが、あいつの目標は俺なの?」
「ええ、それは間違いないかと」
…だよな。
「んで、その原因は、つい最近の俺の生活に関してであって、それを馬鹿皇帝の耳元で囁いたのが局長だと」
「ええ、その認識で間違いございません」
局長ーーー! 何してくれとんじゃーーーー!
「で、どう致しますか?」
んん? どう…って、何を?
「サラとあのダース君の事です」
あ、忘れとった! 色々と汚ちゃない事になってるサラは良いとして、
「馬鹿皇帝は、悪いが世から消えてもらうぞ?」
「ちょ…」
「了解です。それで、ダース君に従った兵達は?」
「そっちに関しては、そいつら次第かな? あんな盗賊紛いの事を平気でしてる奴は殲滅決定。嫌々従って、人の道に外れる様な行為をしてないのは開放かな」
敗戦国から無理やり徴兵されて連れて来られた人達は、何とかしてあげたいなあ…
「ちょ、ちょっと!」
足元で、教室の後ろにある掃除用具入れに干してある牛乳が腐った様な臭いをさせている雑巾みたいなサラが、何事か訴えている様な気がする、気のせいだろう。
「誰が牛乳が腐った様な臭いのする雑巾かーーー! 絶世の美少女アイドルのサラちゃんだろーが!」
「「それは無い!」」
うむ、リリアさんと意見が一致した。
何故だか、ガッチリと握手までしてしまったぞ(笑)
「がーーーーん! いや、それはもう良いです。取りあえず、どうなったのか教えて下さい!」
あ、そう言えば気を失ってたっけ。
「まあ、その前にだな…汚いから着替えてこい」
吐瀉物まみれで汚いし臭いからな。
「ぐっ…確かに…ちょっとお風呂入ってきます…」
とぼとぼと天幕を出ていくサラ。
ちらりと見えたが、すれ違う人達が鼻を抓んでたぞ。
ゲロまみれJCメイド…どっかに需要あるのか?
臭っさいサラが戻るまで、俺はリリアさんとお茶を飲みつつ、ちょっとしたこの戦争でのネタの仕込みの為に、通信の呪法具を取り出した。
言っとくが、ネタといってもお笑いじゃ無いぞ?
ついでにナディアへの念話で、敵軍の侵攻を意図的に遅らせたうえ、敵軍の心をバッキバキにへし折る為の妨害工作の指示を妖精さんに出すのも忘れない。
あと、敵軍の追加情報もこの際だから聞いておこう。
「あ、それは私も幾らかは入手しています。お聞きになりたいですか?」
おう! 情報はいくらあっても足りないぐらいだ。
かの有名な孫子様も、彼を知り己を知れば百戦殆うからずと仰ったでは無いか。
空手の試合の時だって、ちゃんと事前に敵の情報は調べたもんだ。それでも負ける時は負けるんだが…
「では、ちょっとお耳を拝借…」
んん? 誰かに聞かれたらまずい情報なのか?
「ふぅ~♡」
「んぁ! 何しやがる!」
耳に息を吹きかけるな! ぞわわわわっとしたわ!
「あ、いえ…一度、こういう悪戯をしてみたかったんです。人生でやりたい悪戯ベスト10に入ります」
そんな悪戯すな!
「でも、ちょっと感じたでしょ~?」
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