第516話  情報って大事

 思わぬところで、自動翻訳の瑕疵が露見したわけだが、まあ…時々起こる違和感っていうか、おかしな翻訳程度の問題なので、大騒ぎしても仕方がないと結論付ける事にした。

 だって、他国の言語の違う人と話す事が出来るってメリットの方が大きい気がするからな。

 前世では、英語も中国語も韓国語も、もちろんフランス語やドイツ語なんて物には縁遠かった。

 ぶっちゃけ、何言ってるか理解すら出来なかったのと比べれば、多少おかしな翻訳されたぐらい、屁でも無いさ。

 取りあえず、サラとリリアさんには、ユズユズをちょっと離れた所に引っ張って行ってもらって、翻訳の説明をしておいてもらおう。

 あのままの変顔でいられると、この会議に支障をきたすからな。

 

 さて、俺が頭の中でサラと色々と話し込んでいる間に、どうやらナディアによるわんにゃん連合国の主産業とか人口とかの話は終わってた様だ。

 うん、完全に聞き逃した。

 まあ、この戦争には産業は大きな影響はないかな…いや、あるかな? 

 兵士の数と軍需物資に関しては必要だった! うん、あとでナディアに聞こう…。


 間抜けな俺は、すっぱり無視して会議は進行していた。

 父さんは積極的にわんにゃん連合国に関するあれこれをナディアに確認していた様だ。

 うん、軍には必要な情報だからな。

 ナディアは、続けて鉱山都市を擁するモルイベト国の話をし始めた。

 このモルベイト国も、暗黒教ダークランド皇国と神国の間に位置する国で、わんにゃん連合国の隣国だ。

 国民は人種がほとんどで、その人口は5千万と小さな国だが、約半数を占める男性は全員が鉱夫だという。

 鉱夫ともなれば、屈強で強靭な肉体を持っているだろう。

 もしもそんな男性達が兵士となっているのであれば、連合国の獣人もそうだが、かなりの脅威になり得る。

 しかも鉱山があるという事は、金属製の武器や防具を揃えている可能性が高い。

 ここも父さんが敏感に反応していた。

 とは言っても、迷宮から産出される魔物由来の素材でできた防具であれば、金属製の武器では傷1つ付ける事は出来ない。

 まあ、数はかなり少なく、ごく一部の兵士や騎士にしか支給されていないが、この辺は御守りの呪法具開発を待とう。

 

 その後も、ナディアは数か国の情報を話してくれたが、どこも似た様な物だった。

 どの国も大らかな国々で、自国で一生懸命に働き、日々を暮らしていた何の罪も無い人々だ。

 誰もが自国を愛していた人々で、王族と進行する神々に敬愛を奉げる人達で、間違っても戦争を進んで始める様な国々では無かった。

 つまり総合すれば、どの国も侵略されるとは全く思っておらず、いきなり宣戦布告されていきなりの侵略行為を受け、ろくな抵抗も出来無いまま戦争に敗れてしまったらしい。

 その方面を担当していたアーフェンが、一部に関しては見ていたそうだ。

 曰く、王族を人質に取られ、已む無く男達が従軍している。

 曰く、国庫を無理やり開かされ、全部をダークランド皇国に掻っ攫われた。

 曰く、ダークランド皇国に、あらゆる村々の食料が徴収された。

 曰く、碌な補給も無いまま、次から次へと国を襲い、その国の食料を補給にあてる自転車操業を繰り返している。

 曰く、曰く、曰く…


 話を聞けば聞くほど、とことん酷い戦争である。

 なるほどな~。聞かなきゃ分からない事っていっぱいあるんだなあ。

 情報って大事。

 でも、こうなったら、あんまり兵士を一撃殲滅ってのはやっぱなしだな。

 ほとんどの兵は脅されて軍に組み込まれた無辜の民っぽい。

 何とかしてあげたいって考えるのは、俺が甘いからかな。


 そもそも暗黒教ダークランド皇国も、元はレイフェル皇国。

 歴代の皇王は、賢王として国民から慕われ善政を敷いていたそうで、こんな血生臭い戦争を起こす様な正確では間違っても無い皇王だったそうだ。

 それを謀殺して血族を弑したダース皇帝は、もう悪人認定してもいいだろう。

 ってか、そんな性格にしちまった、局長が一番悪いんじゃね?

 ちょっとは責任感じて、このアホな戦争に手を貸してくれてもいいと思う。

 うん、この会議が終わって、今夜寝る時でも、夢の中に局長を呼び出してみよう。

 呼んだからって出てくるとは限らんけどなあ… 

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