第507話 母さん楽しみ~!
ユリアちゃんとコルネちゃんと遊んでくれた騎士さん達は、実に楽しそうだった。
みんな、『…ははははは…』と良い笑顔で笑っていたのだから。
もちろん二人の妹も、嬉しそうにはしゃぎ回っていた。
二人と遊ぼうと近寄った騎士さん達に、どーーん! と飛び込んだり、どかーーん! と燃える火の玉をぶつけたり、がつーーん! とシールドで弾き返したりと、遊びながらコルネちゃんが実演してユリアちゃんを指導していた。
本当に妹思いなお姉ちゃんだよなあ~コルネちゃんは。
でも、お兄ちゃん、ちょっと言いたい。
淑女は決して自分から男の人に飛び込んじゃだめだぞ?
それはお兄ちゃんだけにしなさい。
あと、火の玉も火事になったら危険だから、めっ! 水か土にしなさい。
シールドは素晴らしい! コルネちゃんを穢そうとするやつは、全部弾き返しちゃってOKだからね。
ユリアちゃんにも、ちゃんと教えておくように。
「あの…トール様。全部聞こえてますけど…」
メリルは、そんな馬鹿な事を言わないように。
俺の心の声が聞こえる訳ないだろう?
「トール様、全部声に出てますよ?」
またまた。ミルシェも俺を引っかけようったって、そうはいかないぞ?
「えっと…多分、ミルシェさん…そんなこと考えてないと思いますけど…?」
ミレーラまで、そんな事を言うのか?
「現実を受け入れたくないのは理解できますが、目の前の事は現実ですよ?」
ん? マチルダ、何言ってんだ?
「騎士20人対少女2人。燃える展開だな、トール様!」
イネスの脳筋はどうでもいいが、萌えるの間違いだろ?
あれ?
「おかしいな? 何故か嫁達との会話が成立している気がする」
『間違いなく、成立してます!』
え?
「何で?」
「ですから、全部声に出てますから!」
何故かメリルに怒られた。
「まさか、…盗み聞き?」
『何でですか!』
今度は全員に怒られた…
そうか、声に出てたか。
「全部聞こえてましたよ? しかも欲望まで駄々洩れで」
「ミルシェ君、失礼だな。どこに欲望が漏れていたというんだね?」
「幼女と少女に飛び込んでもらいたいとか、欲望以外の何物でもありませんが?」
ぐっ…マチルダめ…なんと的確な分析なのだ…
「私がトール様の元に来たのも、確かその頃でしたが…飛び込んでいいとは言われませんでしたわね」
メリルは11歳だったか…しかしだ、
「いや、その時は俺も11歳だったし…」
同年齢だったらセーフだよな?
「では…トール様は、5歳以上離れた年齢の若い女性が良いと…?」
「…冗談ではなく?」
「幼女趣味?」
「はっはっは! 殴っていいか?」
ちょっと待ってくれ!
「いやいや、ミルシェ。それは誤解だ! ミレーラ、冗談だぞ? マチルダ、お前は何ちゅう事を言うんだ! ってか、イネスよそのファイティングポーズはヤメロ!」
嫁たちの圧が怖い! 俺は至って正常なはずだ!
「変な誤解は止めてくれ。可愛い妹達が、むさ苦しい騎士たちに突撃するのが、見るに堪えなかっただけだからな? 決して変な性癖とかは無いからな! いいな?」
強引にこの話題を打ち切らねば、俺の沽券に関わる。
すると嫁たちが円陣を組んで何やらごにょごにょ話し出した。
「…確かに…夜は…」
「トール様は…おっぱいが…」
「でもでも…小さいのも…」
「顔を挟んでくれと…」
「それはマチルダが大きいからだろう。私には、もっと強く激しくと…」
えっと、メリル君は何を想像してたのかな?
ミルシェ君、それは男のロマンに関しての話題だろうか?
ミレーラ君、大きさに貴賤は無いのだ! 俺はどっちも好きだ!
マチルダ君、俺は、一回パフパフしてみたかっただけなんだ! 毎回おねだりしてる様に言うな!
イネス君、君の声はほぼ丸聞こえだ。そもそも、強く激しくって言ったか?
俺そんな事言ったか?
ってか、お前ら!
母さんとドワーフメイド衆のすぐ横で、何ちゅう話をしてんだよ!
見てみろ! 母さんめちゃくちゃ笑ってるじゃねーか!
ドワーフメイドさん達、興味津々で耳がダンボになってるじゃねーか!
あ、母さんと目が合った…
「トールちゃん。母さんは信じてますからね?」
「何をだよ!」
何を信じたんだよ!
「やることはやってるのね…ぷっ」
「おおおおおーーーーいいい!」
母さん、あんた露骨すぎだろ!
「孫を抱ける日も近いわね~。母さん楽しみ~!」
そういう母さんの顔は、もの凄い笑顔だった。
だが、俺は知っている。
あれは孫を抱く自分を想像しての笑顔ではない。
俺を弄って楽しんでいる、悪魔の母さんの顔だ…デビルばばぁ…
「トールちゃん、何か変なこと考えてない?」
「そんな事御座いません! いつまでも若く美しいお母様に見とれていただけです!」
あの真っ黒なオーラを纏った母さんに、俺が勝てるはずない。
近くにいた嫁たちでさえ、ガクガクブルブルと震えまくっている。
「そ? ならいいわ。そろそろ、あの二人を止めないとね。お昼ご飯の時間だし」
何も無かった様に、ドス黒いオーラを引っ込めた母さんは、そういってドワーフメイド衆を引き連れて、砂煙を巻き上げて模擬戦している皆の方へとスタスタと歩いて行った。
マジで怖かった…
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