第501話  キリキリ吐け!

 ズバッと核心に踏み込んだ俺の言葉に、一瞬だけ目を見開いていた2人だったが、

「大河さん、脳ミソが腐ったんですか?」「頭の中でヒョウタンウツボカズラでも栽培しているのですか?」

 こいつら言いたい放題だな。

 ってか、俺の脳みそ腐って無いわ! リリアさん、その食虫植物はホムセンで見たことあるが、頭の中でなんか栽培できるか!

 「お前ら、俺を何だと思ってるんだ! 管理局の名前を出した瞬間、お前らの瞳孔が開いたの見てたぞ! 正直に言え!」

 いや、本当は瞳孔なんて見えないけどね。


「くっ…大河さんごときに悟られるとは…」「まさか侯爵様とのやり取りから、そこにたどり着くとは…やりますね…」

 お? 白状しそうな勢いだな。

「んじゃ、出来る限りの情報をちょうだいな」

 貰えるものは不要な物でも何でも貰う! 使い道は後から考える! 使えなかったら捨てたらいい! これが俺のポリシーだ!

「はあ、仕方ないですね…大河さんごときに事情を話すのもしゃくにさわりますが、まあ良いでしょう」

「ごときって、お前なあ…」

 サラの悪意満載の言葉に若干イラッとしたが、ここは堪えよう。

「そもそも、大河さんがエネルギー変換玉を使うペースが遅かったのがいけないんですよ!」

 怒られた…なして?

「あの宣戦布告してきたダースって奴は、大河さんが変換玉をなかなか使わなかったので、管理局が転生させた日本人です」

「は?」

 いやいや、先日大量に転移させた…転生?

「ちょっと待て、サラ。転生って事は、ミレーラみたいに前世の記憶は消されてるのか?」

「ええ、その通りです。何度も繰り返しますが、前世の記憶を保有したまま転生したのは、大河さんだけですから」

 そこにリリアさんの捕捉が入った。

「貴方様は転生の仕組みはご存知と思いますが、転生者が輪廻転生システムを通るという事は、記憶は完全に消去されるという事です。貴方様が例外なのは、システムを通して転生してないからです」

 あ、なるほど! そこは合点がいった。

 確かに俺の魂ってのかな? あれは管理局長が摘み上げて、扉の向こうにポイッて投げ捨てられたからな…って、

「え? 俺って輪廻転生システムを通ってないの!?」

「今更ですか?」「貴方様ならとっくに気付いていると思ってましたが?」

 残像が残るほどのスピードで、首をブンブン振った。

「そっか、俺ってかなり特殊なんだ」

「ババ抜きで言えばジョーカーです」

 ババかよ…あれ? これってセクハラにならんのだろうか?

「貴方様は、例えるなら『5代目あば〇はっちゃく』が『〇烈』のリーダー酒〇一圭だと誰も知らないぐらいの珍獣です』

 リリアさん、そりゃ俺もびっくりだわ! 知らんわそんな事! 4代目までしか見てなかったわ! 


 いや、それはこの際どうでもいい。

「話が迷走しそうなんで、キリキリ吐け!」

 こいつらの話に付き合ってたら、俺のツッコミ体質でいつまでも話が進まんからな。

「まあ、そうですね…事の発端は、今から約6年ぐらい前になりますね。ちょうど大河さんの10歳のバースデーの日ぐらいです」

 サラの昔語りが始まったぞ。

「あの時、管理局長は、大河さんのあまりの自制心の強さに辟易していました」

 酷い言われようだ…自制心が強くて悪口言われるとか…

「もっとエネルギー消費をガンガンしてもらわないと、システム的にもこの星的にも運営が苦しくなるのは間違いありませんでした」

 それらしき事は、確かにサラも言ってたな。

「ですので、大河さんが死んでから…あ、これは前世で死んでからですね。約6年後に死んだ魂の転生先である、レイフェル皇国の第14皇子に、啓示を行ったのです」

 啓示?

「誰が?」

「もちろん、局長です。夢の中に、毎日毎日寝てから目が覚めるまでずっと居たそうです」

 うっわ! そいつ、睡眠不足になるぞ!

「最初は全然信じてなかったそうですが、ある日局長は、転生時の大河さんの言葉を思い出したそうです」

「俺? 何か言ったっけ??」

 記憶にございません。

「局長に向かって、『神様を信じます』って言ったそうじゃないですか」

 そんな事もあったかもしれない。でも覚えてません!

「それを思い出して、ピンッ! と来たそうです。神を名乗ればいいじゃな~い! と」

「軽すぎるだろ!」

「それで夢の中で、自らを暗黒教の神であるシースと名乗ったそうです」

 際どいよ! 教と卿でギリギリの線を攻めてるのか!? いや、名前も危険すぎるだろ!

「そして夢の中で、この大陸を統一しろと説いたそうです」

「大地の神を信仰してたんだろ、その国は」

 それなのに、良く信じたなあ…

「ああ、それならそんな神は居ない! だから安心して捨てなさいって言ったそうです」

 滅茶苦茶だな、あの人は!

「そして、日々努力を重ね、実行力を持つに至った17歳の誕生日に、親兄弟と義理の母を含めた大虐殺を行い、皇帝の地位に就いたダース君は、国名も暗黒教ダークランド皇国と名を変え、周辺諸国に侵攻し始めましたってわけです」


 ふむ…

「何点か分からん事がある。まず、ダース皇帝は、局長から何か便利グッヅとかチートを貰ってるのか?」

「ある訳ないじゃないですか」

 ま、記憶が無いならそうかもなあ…でもあの大陸創ったグッヅだって、目が覚めたらあったしなあ…

「努力家の皇子がいきなり血族の大虐殺って、もしかして精神とか性格とか倫理観とかを、管理局でいじったとか?」

「無い無い、絶対にない」

 信用できない様な…

「夢の中に出てきた局長を神と信じたのは良いとして、それが何でエネルギー消費に繋がるんだ?」

「大軍になった暗黒教ダークランド皇国を一掃するには、そこそこのエネルギーが必要でしょ?」

 確かに言われてみれば…俺の計画でも結構なエネルギー使いそうだな。

「大地の神って、本当に居ないの?」

「居ないですね~。創ります?」

 創っていいのかよ!

「一掃しちゃっていいの?」

「もちのろん!」

 そっか…罪も無い人もいるかもしれんが、仕方ないのか。

「他に局長が夢枕に立ったり、夢の中に登場しちゃった、危ない奴はいる?」

「さぁ…でも、もしかしたら居るかもしれません。今回は管理局に問い合わせしたから思い出したんです」

「思い出した?」

「ええ、局長が」

「忘れとったんかい!」

 ボケたのか? 大丈夫か、局長!

「しかし、局長はそんな大事な事を何で忘れてたんだ?」

「それは簡単です。大河さんがエネルギー変換玉をどんどん使い始めたからですよ」

 10歳の時に、そんな事あったかなあ…


 その後も色々とサラと話してはみた。

 リリアさんは、詳細な経緯については知らないと言い張ってはいたが、知識としてはきっと知っている事だろう。

 だが、局長は本当に忘れてたんだろうか?

 大陸を創って落ち着きそうな頃合いを見計らったこのタイミング。

 何か、まだ裏がありそうな気がするんだが…

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