第502話  結局、人的ミスかよ!

 まだまだ裏がありそうな管理局の闇は、結構深いんじゃないだろうか。

 いや、そもそも随分前の事ではあるけど、何で局長はそんな大事な事を忘れてたんだろうか?


「あ~それはですね…時間の感覚が違うからですよ」

「時間の感覚? そう言や管理局とこことか地球では時間の流れがうんたらかんたらと聞いた気もするなあ…」

 いつの事だっけ? それこそ随分前だった気もするなぁ。

「管理局長はですね、あらゆる時空や時間やそれこそあらゆる場所にアクセスできるんですよ」

「んん?」

 何のこっちゃ?

「簡単に言いますと…そうですねえ、局長の立場で考えましょう」

 突然だな…

「それで?」

「大河さんは、前世のワンルームにはラノベや漫画やアニメとか特撮のDVDとか、とにかくヲタク系の物で溢れてましたよね」

「なっ!」

「ああ、パソコンの中身のエロサイトはこの際関係ありません」

 それは独身男性の必需品だ! ってか、

「関係ないんかい!」

「それで、ラノベとか漫画とかDVDとかの主人公が、全部大河さんだったとします」

 いきなりだな…この話の先が読めないんだが…

「そのラノベとか漫画とかDVDって、それぞれ違う世界観で違う時間を過ごしてますよね?」

 そりゃ、当たり前だろう。

 俺と同じ時間で物語とかが進行してたら…ん? 待てよ。

「そんな流れが記録されたラノベとか漫画とか何時でも読めますよね? DVDは好きな時に観賞しますよね?」

「あ、ああ…」

「その物語こそが、局長の見ている世界なんです。しかもその物語の中に入り込む事も出来るのです」

 ん? こんがらがって来た。

「局長は、3日前の大河さんの物語を見たいと思ったら、その時に見れます。1年後の姿が見たいと思ったらDVDを観れるのです。いつでも好きな時に、特定の誰かの好きな時間を見る事が出来るんですよ。しかも、その特定の人物と会話も出来る…つまり、小説にいきなり登場したり、DVDに出演できるのです!」

 お、おお? それってすごい能力じゃね? でも…

「だったら、ダークな皇子を唆す前に、俺の未来を見たら良かったんじゃね?」

「もちろん、その通りです。ですが、局長はこのアイデアを思いついた時に、『こりゃ最高だぜ!』と盛り上がった気分のまま、この世界の皇子の夢の中に登場したのです。大河さんの未来を覗く前に」

「いやいやいや! それじゃ話の辻褄が合わんぞ! なら俺の未来を見てからやり直せばいいじゃねーか!」

 こんなミスをほったらかしって、駄目だろう!

「まず、局長が大河さんの未来を見る前に皇子にちょっかいをかけたのが原因で、大河さんの未来が変わってしまい、取り返しがつかなかったのが1点。そして、変わってしまった未来を修正するために更に過去や未来に手を加えてしまうと、この先どんな変化が起きるか分からないために、手を出しあぐねたというのが1点。そしてそんな状況が面倒くさくなって、どうでもいいかと皇子にちょっかいをかけた事を記憶の彼方に押しやっちゃったのが1点。そして綺麗さっぱり忘れちゃってたらしいです」

「うぉーーーーい! 局長、何してくれてんだよ!」

「これは明らかな人的ミスですね。嘆かわしい事です…よよよよ」

 サラ、涙なんて出て無いぞ? しかし、つまりは…


「結局、その変わった未来の物語の中で、俺は根暗皇子と軍勢を一掃するってのが、決まっちゃってるって事か?」

「いえ、それがですね…伝えにくいんですが、また未来が変わっちゃってる様です…今この瞬間に」

 え?

「何でさ!」

「いえ、普通の人は帝国の侵攻に管理局が関わってるなんて、考えませんよね? 大河さんはそこに気付いちゃいました。元々の大河さんの現在は、のほほんとお茶を愉しみながら執務をしているはずでした。ですが、それが大きく変わったのです。そしてその原因までをも、嫌がる私を責め立ててて白状させました…これって、実は本来の大河さんの人生の1ページとは全く変わってるんですよ」

 まるで俺が拷問でもしたみたいな言い方だな…

「なので、リアルタイムで大河さんが異世界転生して嫁達に色々と搾り取られるラノベ的内容が、少しずつ変化しているみたいなんです。言ってみれば改訂版ですね」

 …それってまずくね?

「ぶっちゃけ、もう面倒なので、好きにやっちゃって良いですよ? 歴史に振りまわされて、局長も面倒くさくなったらしいですから。人の現在過去未来を見る事が出来て、その歴史に介入出来るのは確かにすごい事かもしれませんが、それだけで望む未来になるとも限りませんから」

 なるほど…素晴らしい能力が有っても、便利に何でも思い通りに行くって分けじゃ無いんだな。

「でも、本当にいいのか!? 大量殺戮じゃ無くて、例えば友好国として手を結ぶとか同盟関係になるとか、それこそ真アーテリオス神聖国との戦争みたいな結末とかでも、オッケーなわけ?」

 よく考えたら、戦争を止める手だてなら他にもあるかもしれないし。

「ええ、構いません。好きにしてください。局長も、大河さんの過去も未来も含めた全ての歴史に関しては、上書き出来ない様にロックを掛けましたので、もう簡単に変える事は出来ません。ってか、変えたらどっかに歪が生じます。そしたら大河さんの未来にまで影響が出るでしょうね。まあ、大河さん以外の他の人にちょっかいを掛けるかもしれませんが、他人の事なんてどうでもいいでしょう? ですから、自由にやっちゃって構いません。お前が信じる、お前を信じろ!」

 ややこしいが、何となくは理解出来た様な出来なかった様な…。

 まぁいい、サラの言う通り、好きにさせて貰おう。

 だが、最後のフレーズは駄目だ! アニメのセリフをパクるな!

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