第440話  先決すべき課題

 俺がモフリーナに指示した事は4つ。

 

 その1

 戦う力の無い、子供や老人の転移者を最優先で保護をする事。

 とは言っても、まだ転移者の本質や詳細が分からないので、まずはセーフティーゾーンへ誘導して様子を観察する。

 食料などは定期的に配給を行い、健康状態を維持する事。

 そして、精神的ケアが必要と思われる対象には、個別に新たに造りだした癒し系の見た目のお世話係の魔物を派遣する。

 モフリーナやもふりんが、性格的にも問題が無いと判断した場合、俺と協議の上でアルテアンのダンジョン本店へと転移させ、俺の領地内で面倒を見る。

 孤児院とか大至急新設しないとな…数千人規模か…ちょっと父さんとも相談かな。


 その2

 精神汚染の危険性の高い転移者は、基本的に放置して監視だけしておく。

 いや、モニター見てて分ったんだけど、チート寄こせだの、テンプレがどーたらこーたらだの、うるさい事うるさい事。

 あれは確実に問題行動を起こすに違いない…とは思うが、心を入れ替える様なら、色々と考えても良いかな。


 その3

 戦闘能力が高かったり、色々と危険な性質を持つ転移者は、要観察。

 危険な行動を起こした場合、モフリーナの判断で適宜処分する事とする。

 かなり冷酷な様だが、こればっかりは俺達の世界を護る為に必要だ。

 管理局長も処分して構わないと言ってたしな。

 無駄な殺生は好まないが、今回は心を鬼にする覚悟で臨むつもりだ。

 ひょっとしたら、1人の恐怖の大王よりも1,000人近いこっちの方が危険かもしれないな。

 

 その4

 恐怖の大魔王の欠片を宿した、あの女王ヒ〇カっぽい…じゃない、ヒミ〇に関しては、24時間全方向から最重要監視対象として動向を見守る。

 もしもエネルギーを集め始めたり、部下を造り始める様であれば、塵の一片も残さない様に、俺が始末する。

 前回の恐怖の大王との戦いで創った『全部すいとーる君』は残っているが、『物質吸収ボール』と『エネルギー吸収ボール』はもう無いので、必要とあらば新たに創造しなければならないのだ。

 前回のキノコと違って、今回は人型なので、もしかしたら危険はないかもしれない。

 転移者は全員が言葉が通じる様になっていると言っていた。ならば、話し合いで何とかなる可能性もある。

 カズムに心まで乗っ取られていた場合は、どうにもならんけど…。


 実際はこんなに細かく指示は出してないが、優秀なダンジョンマスターとその分体は、俺の言葉の裏まで汲み取って対処してくれるだろう。

 このダンジョン大陸はもふりんに任せて、俺、サラ、リリアさんとモフリーナは、一旦領地へと戻る事にした。

 第9番ダンジョン本部も一部改装して、モニターを設置するそうだ。

 俺も7,000人もの人員の受け入れ態勢を取らねばならないし、それに関して父さんとも話す必要がある。

 幼児~介護の必要な老人までいるんだから、いざとなったら世話をする人が大量に必要だしな。

 こりゃまた求人出さなきゃならないか? そこそこ給与を高く設定すれば、何とでもなるかもしれないが。 


 そうそう。必死こいて創ったダンジョン大陸だが、この問題児たちが綺麗さっぱりいなくなったとしても、利用価値は幾らでもあるので、モフリーナも嫌な顔せず対応してくれている。

 俺の領地に移住させるかもしれない、要保護対象の子供や老人たちを、そのままそっくりあの大陸に戻すって手もある。もちろん、全ての厄災の芽を潰した後での話だが、そうすれば、放っておいてもエネルギーがダンジョンに入るわけだから、ダンジョンを運営するもモフリーナとしてもウハウハだろ。

 アーテリオス神国に移住させた人達や、グーダイド王国の生活困窮者を全員移住させたっていい。

 あの広大な土地は、すでにダンジョンになっている。

 つまりエネルギーさえあれば、モフリーナの意のままに改造できるのだから、何とでも出来るのは実証済み。

 あとはアルテアンのダンジョン本部内に、ダンジョン大陸への転移部屋とか造ったって良い。通行料も取れるかもしれないしね。

 エルフ、ドワーフ、魔族、人魚さんなんかの保護区として一部を使ったって良い。

 将来的には、グーダイド王国だけでなく、あちこちの国の生活困窮者を移住させるって手もある。

 ダンジョン大陸だって言わなければ、誰も大陸丸ごとダンジョンだなんて気付かないし、移民者が増えれば増えるだけダンジョンとしては収入が増えるんだから、何の問題も無い。

 

 まあ、先の事なんて考えても仕方ない。

 取りあえずは、目の前の転移者の処遇を早急に決めて対処する事が、先決すべき課題だな。

 よし、帰ってまずは寝よう。んで、明日にも嫁達にも色々と相談するべ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る