第441話  母さん直伝…だと?

とりま、アルテアン領のダンジョンへと戻って来た俺達は、本日の所は解散という事になった。

 こっちはもうすぐ夜明けか…朝帰り…嫁達の反応が怖い…


 我が家にたどり着く頃には、もうお日様も完全に顔を出し、明るく良い天気の朝になっていた。

「ただいまあ…」

 こっそりと玄関の扉を開けてそっと中に入ろうとしたのだが、エントランスが見えた瞬間、全力で扉を閉めたくなった。 

 もちろんそんな事が出来るはずもない。

 無表情でただ腕を組んで立っている嫁~ずから立ち昇るオーラが、そんな暴挙を許すはずは無いから。

「遅くなってごめんね…」

 何とかこの場を取り繕うために声を振り絞ったが、そんな俺の努力をぶち破るお馬鹿コンビの余計な一言。

「奥様方の目の届かない所で、伯爵さまったらハッスルしちゃって大変でしたよ~」

 サラ、おま、ちょ! 何を捏造してんだよ!

「本当ですね。特にモフリーナさんとの熱い一幕は、もう直視できるものではありませんでした」

 お~い! リリアさん、一体何の話だよ! 俺が何したって言うんだ!

『ほ~~~~~?』

「いや、あのですね…皆、落ち着いて…真面目にお仕事してきただけだからね? 何もやましい事なんて無かったから!」

 何故に俺はここまで必死に言い訳してるんだろうか…

『へ~~~~~?』

「いや、本当に本当の事だから! サラとリリアさんが、話を盛ってるだけだから! いや、捏造してるだけだから!」

『ふ~~~~ん?』 

 駄目だ…コレ、あかんやつだ。絶対に何を言っても聞いてくれないやつだ。

「では、トール様のお身体に直接聞くとしましょうか、みなさん」

『はいっ!』

 え…メリルさん、一体何を? まさか…折檻? 俺、折檻されるの?

「お義母さま直伝の、あの説教を試す時が来ました。皆さん、分かってますわね?」

『もちろん!』

 母さん直伝…だと? まさか、あの父さんを一晩で枯れさせた、あれ…なのか?

「では皆さん、確保ーーーー!」

『おーーー!』

 力強いメリルの言葉に、これまた力強く応じた嫁~ずNo.2~No.5。

 瞬間移動かと思えるほどの超速で俺の背後に回ったイネスに退路を断たれ、ミルシェが右腕、ミレーラが左腕をガッシと掴み、マチルダがロープを俺の首にかけ、メリル先頭切って、俺を引きずり歩きだした。

「では皆さん、参りましょう」

『ハイッ!』

 ちょ、誰も助けてくれないのか? ブレンダー、クイーン、なんで柱の陰から見守り姿勢なんだよ! 助けろよ!

「だんなさま~がんばだべ!」「ふぁいと~!」「あとでのぞきにいくべ!」「いんや、こえだけでもこうふんするべなや!」

 ドワーフメイドさん達! 楽しそうにしないで!

「南無~…ぷぷぷ!」「ご愁傷様です…ぶふっ!」

 サラ、リリアさん…は、助けちゃくれないだろうし…むしろ面白がってるし…

 そのまま、まるで市中引き回しの刑に処された江戸時代の罪人の如く、俺はズルズルと引きずられる様に俺の寝室まで連行された。寝室の扉が閉まる音は、もう二度と外の世界を拝めなくなるのではないかという錯覚を俺に見せた。

「うぎゃーーーーーーーーーーーーー!」

 この日…俺の全てが搾り取られた…


 時差という概念をいまいち理解できてない嫁達には、俺が昼過ぎに家を出て夜遊びして朝帰りしたように思えたのだろう。

 それは仕方がない…事も無いが、科学の発展や教育レベルが地球なんかよりも遅れているこの世界では諦めるしかない。

 だが、せめて夫の話ぐらい聞いてくれてもいいと思う。

 俺って結局は徹夜で仕事してきたようなもんなんだぞ? 

 それを寝かさずにあんな事やこんな事…いや、嫌いではないけど、流石に精神的にも体力的にも限界だよ!

『昨日はお仕事ご苦労様でした』

 俺の横で、全裸で艶々のお肌を俺に見せつけている嫁~ずよ…お前達は何を基準に俺が夜遊びして無かったと確信した?

「いつも通りの味でした…」「ええ、回数も」「…長かった気がします…」「なかなかの量でした」「うん、満足だ」

 もうこの5人、やだ……いいや、もう眠っちゃおう…本当に限界だから…

「ここまではトール様の身の潔白を証明するため。ここからは私達がトール様を愛している証明のお時間です!」

 いや、マジで限界だから…眠らせて…

「どうぞお眠りくださって結構ですよ…私達5人で、勝手にご奉仕させて頂きますから」

 メリル、マジで止めて…本当に本当にやめて…

「では皆さん、準備はいいですか?」

『はいっ!』

「あ”ぁ”---------------!!!」


 俺が眠れるのは、一体いつ?

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