第415話  さあ、エネルギー注入開始!

 モフリーナの転移で俺達がやって来たのは、仮のダンジョン管理室…部屋らしい。

 めちゃくちゃだだっ広いだけの空間に、ぽつりぽつりと明かりが灯ってはいるが、ものすごく薄暗い場所だ。

 少し離れた床に、なにやら光っている物が…見覚えあるな、あれ。

「第9番ダンジョンで、トールヴァルド様のエネルギーを溜める為の疑似ダンジョンコアです。現在、空っぽの物を用意してありますので、どんどんエネルギーを補充しちゃってください」

 ああ、あれか。良い笑顔でモフリーナから、エネルギー注入指令が飛んで来た。

 ええ、ええ。もちろん喜んで協力させて頂きます。


 サラ曰く、俺の保有する魂のエネルギーは、この星の総人口が持つエネルギーの合計の200倍。リリアさんによると、3000倍で、この星の人口換算だと70億人分だとか何とか、正確には良くわからんらしいけど…とにかくいっぱいある。

 こいつのほんの数%~20%程でモフリーナのダンジョンは異様なほどに拡大拡張し発展した。

 ならば、俺のエネルギーをどんどん活用すれば、あっという間にこの大陸のダンジョン化は出来てしまうという事なのだ。

 しかも俺の魂のエネルギーは、食って寝れば回復するらしいから安心だ。

 夜の夫婦の営みがどう影響するかわからんから、今夜はなんとか逃げねば…。


 一応、嫁~ずは魂のエネルギーに関しては知らないので、誤魔化しつつエネルギー注入しますかね。

 そう言えば、ユズユズはそこそこのエネルギー持ってたはずだから、あの2人にも協力してもらえれば、もっとスピードアップ出来んじゃねえのか? 

『大河さん、それは難しいです。あの2人のエネルギー保有量は、この星の一般人と比較すれば莫大な量を持ってますが、回復時間が少々遅いので、実用的とは言い難いです』

 あえ、そなの?

『大河さんが原子力発電所ならば、あの2人はせいぜい太陽光発電止まりです』

 例えが分かり難いわ! 

『リニアモーターカーと、遊園地の電動カートぐらいの差でしょうか?』

 え~っとリリアさんまでこの話題に乱入すんの? しかも、その比較が理解できない…速度なの?

『『何の話でしたっけ?』』

 お前らー! 元の話題忘れたのかよ! ユズユズのエネルギーの話だよ!

『『ああ!』』

 もう、こいつらヤダ…

『とにかく、あの2人のエネルギーではすぐに枯渇しますんで、こいつ使えねーよ! と言われるのがオチです』

 もう、それだけ分かればいいや。つまりは、俺がやらなきゃダメなのね。

『『そうとも言う!』』

 いや、そう言ってるじゃん、あんた等は! はあ、疲れる…


 もういいや、さっさと始めよう。

「では、トールヴァルド様。ネス様の御力をこの水晶にお願いいたします」

 モフリーナは、さすがに心得てるな。ちゃんとネスを出して誤魔化してくれる。

 嫁~ずは、「ネス様の御力…」と感心したように呟いてるけど、本当は俺が持ってるエネルギーなんだからな?

『ヲタクパワーとも言いますが』

 サラ、五月蠅い!


 頭の中でゴチャゴチャ言ってるアホは無視して、俺は水晶に触れた。

 さあ、俺の中のエネルギーよ、この水晶が満タンになるまでガンガン流れちゃってくだせえ!

 そう念じた瞬間に、今までにない程に何かが俺の中で滾った!

 …別に変な意味じゃないぞ?

 俺の身体の奥底に眠っていた…というか、特に使い道も無く眠っていたエネルギーが、こう…ふつふつと沸き上がってくるような、温泉を掘り当てた時に噴き出して来るお湯みたいに、一気に表面に出てきたって感じというか。

 それが水晶に触れている俺の掌に集まって、どんどん水晶へと移動してゆくのがわかる。

 体の中から抜けて行くエネルギーをここまで感じたのは初めてだ。

 モフリーナにやったり、精霊さんに吸われたり、たまにブレンダーやクイーンを始めとした蜂達にも与えたりはしてたんだが、ここまで虚脱感というか喪失感を覚えたのは初めてだ。

 サラの電池の起動に使った時でさえ、ここまでの感覚は無かった。

 いや、そもそも俺の中に眠ってたこの巨大なエネルギー? を感じたのも初めてだ。


『おお!』

 俺の様子を見ていた一同は、感嘆の声を上げた。

 何とはなしに目を瞑って集中してたので気付かなかったが、いつの間にやら水晶が燃える炎のように赤く明るく光っていた。

 しかも心なしかちょっと大きくなってないか? いや、かなり大きくなってる気が…?

 いつの間にか水晶を挟んで、俺の対面で水晶に触れていたモフリーナともふりんも、目を瞑って集中して何かの作業をしている様だ。もしや俺のエネルギー注入と並行してダンジョン化を進めているのか?

 モフリーナはじっとりと額に汗を浮かべ、もふりんは「むむむむ…」と唸っている。

 そして嫁~ずとユズユズは、その様子をただただ固唾を飲んで見守っていた。

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