第416話  モフリーナともふりん

 実の所、もふりんはモフリーナの分身? 分体? と以前に紹介だけはしてあったのだが、正確には遺伝子情報を色々といじってカスタムしたハイブリッド・クローニングされたモフリーナの完全なクローン。

 カスタムの内容は、モフリーナを補助するために思念波と脳波を完璧にシンクロ出来る様にした事と高演算機能化だ。

 聞くところによると、モフリーナは生れた時からあのボンキュッボンの姿だったらしいので、もふりんは幼女化してこの世に生まれてきた。

 俺の要望で、そうなったんじゃ無いぞ? いや、可愛いのが良いとは言ったけど。

 でもでも、ロリロリしたのにしてくれとかは言ってないからな。本当だよ?


 ところで、ダンジョンの魔物達は、全て同じ遺伝子情報を元にして、地球などとは比較にならない程に進化したクローン技術と魂のエネルギーによって生み出されている。全ての魔物に共通する元となった遺伝子情報とは、実はモフリーナの物なのだ。

 ただ生み出す時のカスタム時に、色々なルール付けや縛り、思考や精神活動の調整において失敗をすると、生みの親というか遺伝子上の親でありダンジョンマスターであるモフリーナの命令や指示に従わなくなり、結果としてダンジョンから逃げ出したり、反乱を起こしてしまったりしてしまう。

 これが俺が子供の頃にアルテアンの村で起こった、ダンジョンからの魔物のスタンピードなわけだ。

 あの時は、モフリーナがとにかく魔物を増やそうとして、当初保有していたエネルギーを魔物の数を増やすためだけに使ってしまい、細かな調整を怠ったため起こった不幸な事故…と言えなくもない出来事だったのだ。

 まあ、自分のダンジョンが出来て張り切りすぎて、魔物をとにかく増やして数をえてダンジョンをオープンしたかったという、その気持ちも分からなくもないが、急いては事を仕損じるという諺にもある通り、何事も焦りは禁物なのだ。

 

 おっと、話が逸れてしまった。

 今回の大陸丸ごとダンジョン化の話をモフリーナに持って行った時、さすがに全てを遠隔で管理と制御は、1人では難しいかもしれないという話になった。

 今までのダンジョンとは規模もレベルも違うから、それは当然の事だ。

 なので、自らと完全に思考も精神構造もシンクロ出来る、ダンジョンのサブマスターとでも言うべき存在を造り出した。つまりは、それがもふりんなのである。

 まあ、言ってみれば計算を補助するサブのコンピューター的役割だ。

 なので、今も「むぅ…むむむ…」と唸りながら、一生懸命にモフリーナをサポートしている。

 見た目にはケモ耳姉妹にしか見えないし、もふりんは幼女にしか見えないのだが。


 俺が水晶から手を放して、皆と一緒に2人の様子を見つめていると、やがて水晶の色が元の仄かに光る透明に戻った。

『ふ~~~~』と、2人して額の汗を拭う仕草もシンクロしていて面白い。

 きっと今は、この塔のダンジョン化のために、意識を同調していたんだろう…単なる俺の憶測だけど。

 何やら2人で見つめあって頷いているが、さてさて首尾はどうかな?


「この塔のダンジョン化は完了しました。これでこの大陸を完全掌握するきっかけは出来ました」

 モフリーナが、その豊満な胸を張ってそう言った。

 瞬間、嫁~ずの目が冷たくなった気がしたが…別に見てないよ? 巨乳派の父さんじゃないんだから…いや、どうしてもちょっとは視線が行くのは、男なら仕方ないでしょう? 男の性だもん、許して欲しい。

 マチルダだけは何とも思ってない様だ。まあ、モフリーナと堂々と勝負できる程に、立派な物をお持ちだからな。

 ちなみに、モフリーナの横でもふりんが腰に手を当てて胸を張っているが…可愛いだけだな。

 ユズカが両手をワキワキとさせ、今にも飛びついて抱きしめそうだ。

 

「という事は、この大陸のダンジョン化は?」

 思わずモフリーナに訊いてしまった。

「はい、進行状況を説明させて頂きます」

 前のめりになって質問する俺に、ごく自然に冷静にモフリーナは説明を始めた。

「まずこの塔はすでにダンジョンとなっています。この塔の最下層に、正式な管理ルームを設置しましたので、後程皆様をご招待いたします。その最下層の1つ上の階に偽装管理ルームを設置しましたので、最下層から完全に切り離しここにある偽装ダンジョンコアを移設します」

 えっと…つまり、最下層が管理室で、その1個上が偽の管理室って事か。

「最下層の管理ルームには、この偽装ダンジョンコアの数百倍ほどの水晶を設置します。ここでトールヴァルド様に、女神様の御力を注いで頂きます。ざっと計算して、この大陸を完全にダンジョン化と魔物を大量生産するためには、約10回は充填が必要かと思われます」

 ふむ、それならあと最低10日程かかるという事か。

 それでも異世界からの大量転移まで、7日程は残るな。


「良し! その計画で進めるぞ! まずは、最初の充填をしよう!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る