第411話 重要な施設
もふりんにキャビンまで降りて来てもらいました。
もちろん、第9番ダンジョンと、この大陸がちゃんと繋がっているかの確認してもらうためですよ。
妹成分が足りなくて呼んだわけじゃ無いからね? そこは間違えない様に! 絶対に違うからな!
「さてと…それじゃ、この大陸に繋がってる、線の元まで行こうか」
もふりんに向かってそう言うと、しゅぴっと手を挙げたもふりんが、
「ぶ…らじゃー! なのです!」
なぜにそのネタを知っているのかは、非常に気になる所ではあるが、まあいい…
見ろ、もふりん。キャビンの空気が微妙になったぞ? あ、スルーですか…もふりんって、空気を読めない子なんだろうか…
「そ、それじゃ~出発! といっても、あの最初に出来た塔なんだけどね」
ホワイト・オルター号をゆっくりと上昇させつつ旋回し、最初に飛び出して来たあの塔の最上階? 屋上? に向かう。
最上階っていうか屋上っていうか、とにかく400mの高さになる塔の天辺まで来たホワイト・オルター号を、俺はゆっくりとど真ん中近くに着陸させた。
何たって直径700mもあるんだから、着陸は超余裕! だけど、端っこに手すりも何も無いから、一応注意しておく。
「今から降りるけど、絶対に端っこに行っちゃ駄目だからな。結構な高さがあるんで、風もきついから注意して。落ちたら間違いなく死ぬからね」
真剣な顔での俺の注意に、神妙な顔で頷く一同。スカイツリーよりは低いけど、東京タワーよりは高いからなあ。
直径700mもある屋上のど真ん中に居ても、遠方に臨む絶景を十分に楽しめる。
とは言っても、ニョキニョキと生えた塔と鬱蒼と茂るジャングルぐらいしか見えんけど。
さて、ホワイト・オルター号から降りた俺達は、塔の本当のど真ん中には、小さな小屋? が設置されている所へと向かった。
ガラス製でも無いただの茶色いダンジョンの壁とかと同じ材質で出来た、一見すると公衆電話ボックスの様な小屋は、実はとても重要な施設なのだ…けど、俺のイメージと微妙に違うな。古き良き昭和の電話ボックスをイメージしたんだけどなあ。
『あ、大河さん。デザインは修正しておきました』
んな!? サラ、お前! んじゃ、これは電話ボックスじゃないってのか?
『いえいえ、電話ボックスです。ただし某アメリカンヒーローが着替えるやつです』
空を見ろ! 鳥だ! 飛行機だ! いや…スーパ〇マンだ! のやつか!
『い~え~~す!』
『あら、私はてっきり…胸に"す"の文字が書かれた青い服を着て、梅干しを食べて口が*になる顔のデカイ人の奴かと思いましたわ』
リリアさん、そのピンポイントで懐かしい設定は、まさか…
『梅干食べてスッ〇マン!』
ぶはっ! 懐かしすぎる!
『ちなみにゴム以外は何でも食べるガッ〇ゃんの本名は、則巻ガ〇ラです』
どうでもいい情報、どうもありがとう。うん、居たねそんなキャラ…
いやいや、今はそんな事どうでもええわい! 話が脱線しすぎだ!
ごほん…この公衆電話ボックス(形はどうでもいい)に第9番ダンジョンへ引っ張った欠片の成分で出来た線が繋がっているのだ。
引っ張ったのは、この塔の創造の時なのだよ、えっへん!
さて、この小屋の一面は扉になっていて、そこを開くと…ん? また俺のイメージと違うぞ? もしやサラかリリアさんが勝手に変えたのか?
転生前の俺でもなかなか見なくなった、ピンク色のダイヤル式公衆電話が…いや、懐かしいけどさ、機能的にどうなの?
そのピンクの公衆電話…って言葉にすると微妙にやらしく感じるのは何故だろうか? いや、ピンクの電話まで略せば、懐かしきお笑いコンビになるから大丈夫か?
それはさておき、ボックスの中の見た事も無い電話を見て、もふりんは固まってしまった。どうやって使ったらいいか分からんよな…初めて見たら。
しかし、無駄にピンクの公衆電話の再現度高いな。送話口の丸い芳香剤って、懐かしすぎるぞ、おい! いや、公衆電話だから普通は付いてないのか? あれって黒電話だけだったかな?
まあいい。まずは俺がお手本を見せるとしましょうかね。
まず受話器を上げて…あれ? モフリーナの所って、何番回せば繋がるんだろう?
「そのダイヤルの9を回してください。モフリーナのいる管理室に繋がるはずです」
リリアさんが、そう教えてくれたが…9番だけでいいの? 市外局番は? あ、そんなもの不要なのね…了解。
その説明通りに、おれは受話器を耳にあてながら、回転盤の9の所に開いてる穴に指を突っ込んで右にまわした。
全員が俺の動きを興味深そうに見つめて…おい! 狭いから入ってくんな!
ユズカ! おれの脇の下から顔出すな! あとで遊ばしてやるから、ちょっと待っとけ!
ストッパーまで回転盤を回したら、指を放す。じゃらららららら…と懐かしい音が鳴ったが、受話器からは何の反応も無い。
確か電話だったら呼び出し音とか確か鳴る気がするけど、これは無音仕様なのか。ちょっと残念。
しばし待っていると、ガチャっと音がした。
『えっと…どうしたらいいんでしょうか…あのぉ…』
受話器の向こうで困惑しているモフリーナの声がした。おお、繋がったぞ!
「モフリーナ、俺だよ俺!」
若干、オレオレ詐欺っぽくなったが、許して欲しい。使い慣れてる通話の呪法具と違って、なんだか緊張するのだよ。
『もしかして、トールヴァルド様ですか?』
おお、ちゃんと分ってくれたじゃないか! でも、オレオレ詐欺にすぐに引っかかりそうだな、モフリーナ…大丈夫か?
「うむ。やっと箱が出来たぞ。今からもふりんと代わるんで、ちょっと待ってくれ」
俺のお腹中りから、じっと俺を見上げていたもふりんに、俺はそっと受話器を手渡した。
「え…と、ますたーでしか?」
ちょっとあざとい感じがしないでも無い、舌足らずで高めな声で、もふりんは受話器に向かって話しだした。
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