第412話 例の作戦は?
何とな~く、もふりんとモフリーナの話の邪魔をしちゃ悪い気がしたので、群がる我が家の面々を取りあえず外に追いやり、公衆電話ボックス? の扉を閉めた。
別に聞いたって問題は無いんだろうけど、本当に何となくそうした方が良いと、俺の中の何かが囁いたんだ。
「そう言えば、なぜ通信の呪法具を使用しないんです?」
ここにいるメンバーならば誰もが疑問に思う事を、率直に俺にぶつけてきたのは、意外にもイネスだった。
「うんうん、その疑問はもっともだ! 何故かというと…あれは送話と受話の間に魔素が無い場所があると使えないんだ」
「はあ…」
俺の答えがちょっと言葉足らずだったか。
「俺達が住むこの世界中に魔素が必ずあるという確信が持てなかったんだよ。もしもこの場所とモフリーナの間に魔素の無い場所があった場合、呪法具が使えないんだ。ちなみに、さっき試したら使えなかった」
という事情があるのです。
「それにしても…どうして外で待つんですか?」
電話ボックスを見ながら、不思議そうに俺に訊ねるミレーラに、
「いや…何となく、ダンジョンの秘密とかあるのかなあ…って」
俺は、これまた何となく歯切れの悪い回答しか出来なかった。
皆で眺望をわいのわいの言いながら観賞していると、電話ボックスの扉が開き、もふりんが顔を出した。
「あのぉ…ますたーがおはなちちたいっていってまちゅ」
そう言いながら、コードいっぱいまで引っ張って受話器を渡そうとする、ケモ耳幼女もふりん。
そんなに引っ張ったら壊れるから! 有線式だから、切れたら使えないから!
早く早くとせかすもふりんの手から受話器を受け取った俺は、受話器に向かって話しかけた。
「もしも~し! もふりんとの話は終わった?」
『……………はい』
ちょっと軽かっただろうか?
『一応、トールヴァルド様のおられる場所も、ダンジョンの一部と接していると認められるようです』
おお、それは朗報!
「ということは、例の作戦は?」
『ばっちりです! そこを第9番ダンジョンの新大陸支部に出来ます。つきましては、もふりんに持たせているダンジョン拡張用のセットアップ用カプセルを、所定の位置へとセットさせてください』
ほむほむ。セットアップ用のカプセルっと…ん?
「所定の位置って?」
『あ、この話をしている道具の近くで構いません。細かい場所は念話でもふりんに伝えますので』
そうだよ…モフリーナともふりんは念話出来るんだった…この電話って意味なくね?
『それでセットし終わったカプセルに、トールヴァルド様のエネルギーをお願いします』
あ、それなら簡単、まーかせといて!
「おっけー! 全力でやっちゃうよ!」
『いえ、ほんの少しで結構です。あのカプセルでダンジョン増設のきっかけを作るだけですので。そこが私の支配圏内に入りましたら、改めてお願いすると思います』
そっか…
『植物でも、種の状態でいきなり大量の栄養を与えても、成長を阻害するだけでしょう? あれと同じです。芽が出て葉が出てからが、トールヴァルド様の本格的な出番になります』
なるほどねえ。よし、わかった。
「それじゃ、さっさと新大陸ダンジョン化計画を実行しようか」
『よろしくお願いいたします』
何故か受話器の向こう側で、丁寧に腰を折るモフリーナの姿が見えた気がした。
「お~い、もふりん! カプセル持って来てる?」
嫁~ずにもふもふされているもふりんに大声で確認してみた。
「あい、もってきてまちゅ!」
お花の刺繍の付いたポッケから、使い捨てライターぐらいはある、まるで漫画みたいな大きさの紅白のお薬カプセルを取り出して、俺に見せてくれた。
「よし! モフリーナから連絡が来てると思うけど、それを所定の位置に」
「りょうかいでち!」
もふりんは、手に持ったカプセルを電話ボックスの床に置いた。
「そしたら、後は俺が…」
これで何でエネルギーを譲渡できるのか良く分からないんだが、指先でカプセルに触れて、エネルギーちょっとだけ流れろ~流れろ~と念じると、カプセルが仄かに光り出した。
「すとっぷ、すとっぷ! もうじゅうぶんでち!」
もふりんがカプセルの輝き具合を見ながら、俺に指示を出したので、素直に従った。
やりすぎてカプセルが壊れる…なんてお約束は絶対にしない。
「それでは、きどうちまちゅ!」
俺の事なんて丸っこ無視して、どうやらモフリーナからの指示を念話で受けたもふりんが起動を宣言した。
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