第410話  これが秘策だ!

『す、すごい!』

 立て続けに衝撃を受けすぎた一同は、口をポカンと開けたまま、窓の外を見続けていた。

 確かにもの凄い光景だよな。何たって、この大陸に100もの巨大な塔がニョキニョキと建って行くんだから。大地の変動が落ち着くまで、俺も眺めてよっかな~。


 しばらく時間が過ぎ、肉眼で確認出来る範囲では、もう何の変動も起きなくなっていた。

 もちろん遥か彼方ではまだ動きがあるかもしれないが、それはそれ。

 ようやく皆も落ち着いてきた所で、次のターンに移りましょう。


「よし、それじゃダンジョン造りを始めよう!」

 俺の宣言に、またまた頭に疑問符を浮かべる一同。

「えっと、トール様。あれは迷宮だけどダンジョンじゃないんですよね?」

 メリルが不思議そうに訊ねてきた。

「うん」

「それじゃダンジョンはどこに造るんですか?」

 俺の答えを聞いたうえで、質問を重ねるミルシェ。

「それはもちろん、あの塔とこの大陸全土の地下だよ」

「え? でも、あの塔はダンジョンじゃないって…あれ?」

 ミレーラ、絶賛困惑中。

「だから、いまからあの塔とこの大陸をダンジョンに造りかえるんだよ」

 どうだ、驚いたか! 

『え!?』

 やったね! どうやら驚いてくれた様だ。

「これが俺とモフリーナの秘策なのだよ!」

 胸を張って、ドヤ顔してみました。


「でも、さっきはトール様…あれは迷宮でダンジョンじゃないって仰ってましたよね?」

「うん。メリルの言う通りだよ。あれはダンジョンじゃない…正確には、今は…だけどね」

 そう、あれはダンジョンじゃないんだ。内部に色々と仕掛けはしているが、巨大迷路の発展型の迷宮。

「トール様が、迷宮をダンジョンに造りかえるんですか?」

「違うよ」

 マチルダの疑問に、端的に答えてあげよう。

 いや、ちょっと端的過ぎたか…またもや全員が  ??? って顔になった。

「でもモフリーナさんも居ないし、ダンジョンコアも見当たりませんけれども、どうやってダンジョンを造るんですか?」

 そう、その質問が欲しかったのだよ! さすがはメリル、ナイス質問だ!

「それが秘策中の秘策なのだよ! 実は、ダンジョンはモフリーナが造るんだよ」

「え? でもモフリーナさんは、すでにアルテアンのダンジョンマスターなのでは?」

 これまで黙って話を聞いていたユズキが声をあげた。

「そうだよ、第9番ダンジョンのマスターがモフリーナだな。そしてこの大陸は、新たな第9番ダンジョン…支部になるのかな?」

『支部?』

 さあ、意外な展開に皆が付いてこられ無くなってきました! クライマックスはこれからだぞ?

「そう、支部。さっきも話したと思うけど、ダンジョンには幾つかの型がある。塔型や洞窟型や森や海とかいう型ね。あとね、ダンジョンは生まれた時からダンジョンっていう場合と、洞窟とか古城の地下室だとかが、何らかの要因が重なってダンジョンに変化する場合とがあるんだな」

 そこまで言って、何かに気付いたマチルダ。

「も、もしかして、ここで新たに造るダンジョンって…あのダンジョンの拡張のルールを逆手にとって…ですか?」

「That's right!」

 さすが嫁~ずNo.1の頭脳を持つマチルダ。

「そうなのだよ、マチルダ君! 実は、この大陸からモフリーナの居るダンジョンまで、ずっとずっとずっとある物が続いているのだ。だから、この大陸はモフリーナのダンジョンと繋がっているという事なのだ!」     

『おおーーー!』

 いや、まだ本当にこれでルールに抵触しないかは分からないんだけど…

 取りあえず皆には見せておこうかな。

 俺がズボンのポケットから取り出したのは、何てことない石に見えるのだが、じゃじゃーん! 実はこれはダンジョンの欠片なのだ!

「これはモフリーナの居るダンジョンの欠片っていうか、壁の一部なんだ」

 嫁~ず達は、へ~っと感心したように見ているが、ただの石にしか見えないよね。

「この大陸を創る時に、この欠片と同じ成分の細い細い蜘蛛の糸ぐらいの線をモフリーナの居るダンジョンまで伸ばしてたんだよ。それが本当にダンジョンの一部というか隣接している場所と認められるかは不明なんだよね。だからこそ、モフリーナの分身であるもふりんを連れて来たんだ。もしも支部として認められない場合は、もふりんにダンジョンマスターになってもらおうと思って」


 ダンジョンコアなんてものは、実は何とでもなる。

 これは管理局長にもモフリーナにも確認したんだが、ダンジョンマスターと精神的に繋がっているエネルギーの塊を用意すればいいらしい。それぐらい、ガチャ玉で創れるそうだ。なら、最悪の場合はもふりんにマスターになってもらって、新ダンジョンにすればいいだけの事。その場合は、攻略されるリスクも高くなるけどな。

「それじゃ~繋がってるかどうか…もふりんに確認してもらおうか」

 キャビンの天井…つまりは飛行船本体にあるカーゴルームを指さしながら、にっこりと俺は笑った。

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