第407話  攻略不可能

 では、気を取り直してダンジョン設置ポイントへ行きましょう。

 【環境改良かえる君】には、しっかりと今回のダンジョンのイメージを溜めこんでいたので、すぐにでもダンジョンが出来るはずだ。

 のんびりと設置ポイントへとホワイト・オルター号を進めていると、メリルがふと呟いた。

「でも、ダンジョンが出来たからといって、その邪悪な眷属様方が暴れないという保証はないんですよね」

 もちろん、その通りだ。

「そうだな。暴れないという保証はない。だから、色々と罠を仕掛けておくのさ」

『罠?』

 嫁~ずが、一斉に首を傾げる。

「そう、罠。誰もがダンジョンに挑戦したくなるような、とっておきの罠だ」

 罠の内容は、まだ秘密。でもね、きっと挑戦したくなるはずなんだ。いや、しなければならないという精神状態に持って行くのが、そもそもの罠かもしれないな。

「なるほどです。トール様はダンジョンを創った後の事まで考えておられるんですね」

 まだ微妙に納得できてない様子ではあるが、一応メリルはダンジョン設置の意味は理解は出来た様だ。

「うん、まあね。ぶっちゃけると、そもそもこのダンジョンは、普通の人には攻略不可能なんだよ」

『えっ!?』

 驚いた? ねえ、驚いた?

「この大陸は、歩いて真っすぐに反対側に行こうとすると…えっと、毎日休まず日の出から日の入りまで歩いたとして、1年…いや、もっとかもしれないけど、もの凄い時間かかるんだよ。それでもう言っちゃうけど、ダンジョンはこの大陸の地下一面に広がってるんだ。しかもそれが何層も」


 そう、俺が造るダンジョンは、地下迷宮型がメインとなる予定。

 半径で2,700kmもあるこの広大な土地の地下全てが迷宮…つまり、迷宮の面積は実に2,200万平方キロメートルにもなるのだ。そんなもん、隅から隅までなんて絶対に探索できるわけがない。

 しかも、それがミルフィーユの様に重なっていて、4層のダンジョンになるのだ。

 そして目玉として、塔型のダンジョンもあちこちに設置する。

 ダンジョンマスターの部屋というか管理室を設置する場所は、嫁~ずにも秘密。

 管理室内のダンジョンコアを破壊しない限り、ダンジョン攻略は認められない。

 モフリーナの管理する第9番ダンジョンは、現在も成長を続けており最上階80階の1階下…つまり79階にいる、ラスボス黒竜を倒すとダンジョンマスターの部屋に転移出来る仕様となっている。そして、ダンジョンコアはダンジョンマスターの部屋に置かれているのである。ダンジョンが出現してもう10年以上経つが、未だに誰も20階層にすら達していないのが現状である。

 だが、それはあくまでも一般人である冒険者が攻略しての事。

 チート持ちが転移してくる可能性があるのであれば、あんな記録はすぐに塗る替えられる可能性がある。なので、無駄に広く大きく高く無数に攻略対象を創り、転移者を惑わす事にしたのだ。

 しかも、それには途轍もない罠も仕掛けてあるんだぜ。

 そして肝心要のダンジョンマスターの部屋は、この大陸には創らない。

 つまり、絶対攻略不可能なのだよ! 詐欺だと罵られても構わない! 俺は世界平和のためになら、鬼にもなろう!


 実は、ダンジョンがこの世に存在するにあたり、色々とルールが存在する。

 これはモフリーナに詳しく聞いたのだが、ダンジョンはその内部にダンジョンコアの設置が不可欠。このダンジョンコアが破壊される、もしくはダンジョンの外に持ち出された場合、ダンジョンは消滅する。

 ダンジョンは、ダンジョンが溜めこんだエネルギーを使用して新たな魔物を生み出す、またはコピーして増やす事が出来る。

 生み出した魔物を、エネルギーを使用してカスタマイズする事が出来、一旦生み出した魔物は、例え倒されたとしても、エネルギーを使用する事で復活させる事ができる。ダンジョンに人を惹き付けるためのドロップアイテムなども、当然エネルギーを使用して作成される。

 もちろん、良質なアイテムや強力な魔物を生み出したり、それらをコピーしたり、魔物をカスタマイズして強化したりするには、それに応じた多大なエネルギーを必要とする。

 エネルギーとは、所謂生命エネルギーの事であり、ダンジョン攻略者達がダンジョンに侵入した時から、少しづつ吸収される。

 生命エネルギーを吸収といっても、体調不良になる程ではない。もちろん、ダンジョン内で命を落とした時は、全てがダンジョンに吸収されるのだが。

 つまりはダンジョンに多数の挑戦者が来れば来るほどエネルギー収支はプラスに跳ね上がる。塵も積もれば何とやらといったところだ。

 まあだからこそ、、モフリーナと俺はこの法則を逆手にとって、誰も死なないダンジョンとして第9番ダンジョンを10年程前に造りかえたのだが。

 こうして徴収したエネルギーを使って、ダンジョンを拡張したりアイテムや魔物を創り、人を呼び込む無限連鎖の輪が形成されるのである。

 また、ダンジョンマスターがダンジョンを拡大する時には、必ずダンジョンマスターが立ち合わなくてはならず、その範囲は必ずダンジョンに隣接しなければならない。要は、増改築は敷地内で行い、家主が立ち合いなさいという事。

 当たり前と言えば当たり前のルール。


 さて、ここでモフリーナ…ダンジョンマスターの権限なのだが、実はダンジョンマスターは自分のダンジョンの中であれば、自分自身とダンジョンマスターの認めた者を、自由にどこにでも転送できる。

 これは、ダンジョン領域内限定ではあるが、マスターの権限により時空間を歪めて繋ぐ事が出来るという事。言ってみれば、それ以外の者は、どんなアイテムだろうと魔法だろうと自由に他の階層などへの移動はできない。

 他の階層に進むには、絶対に地道に攻略しなければならないのだ。

 ラスボスを倒したらダンジョンマスターの部屋に転移出来たりするのは、このダンジョンマスターの権限のおかげである。

 例えば、以前にユズユズや婚約者~ずを連れて社会科見学にダンジョンに行った時の事を覚えているだろうか?

 ある階層だけをダンジョンから切り離して、遊びの場を提供してもらった事を。

 無双しまくりたい婚約者~ずとユズユズが、モフリーナの力でダンジョンを堪能したあの出来事を。

 つまりは、これこそが今回のダンジョン創造の最大のミソであり、抜け道なのだ!

 

 おっと、そろそろダンジョン設置ポイントに到着するな。

 細工は流流、仕上げを御覧 じろ! まあ、どうなるかは見てのお愉しみってとこだね。

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