第406話  そんな気はしてました

 さてさて、身支度を整えた俺と嫁~ずは、朝食をとりに食堂へ。

 本日はユズキが腕を振るってくれた、和テイストあふれる朝食だった。

 やっぱ、ご飯と焼き鮭と味噌汁に漬物って組み合わせは最高だな!

 めっちゃ力が湧いて来る…気がする。いや、元日本人としては精神的に満たされた気分になるんだよ。


 朝食も終わり、お茶で一服しつつ、本日の予定を話す。

「本日は、この大陸創りの最終段階です」

 そう切り出すと、真剣な眼差しが俺に集中する。

「この大陸に転移してくる奴らを、この大陸に留め置くために…ダンジョンを創ります!」

 どーーーん! と胸を張って一大発表…したつもりなんだが、拍手の1つ驚きの声すらもない。あれ?

「まあ、予想通りですね」

 ユズカの一言が俺の心を抉る。

「そんな気はしてました」

 ミルシェにまで言われた。

「もふりんと魔物が乗ってますからねえ…予想は容易です」

 そうか…マチルダは予想してたか。

「魔物の卵もありましたし…」

 そうね、ミレーラの言う通りだね…

「トール様の考えなんてお見通しですから」

 お見通しですか…そうですか…メリルには隠し事は出来ませんか…

「いや、みんな出発前にモフリーナに聞いてたし」

 イネスーーー! 聞いてたなら、聞いてたと言えーーー! 

 ってか、モフリーナにも内緒にしとけって言っておいたはずなんだがな。

 ちくそー! 俺は誰にも知られない様に、秘密裏に作戦を進めてたつもりなのに…めっちゃ恥かいたじゃねーか!

「そっか。みんな知ってたんだ…悲しい…」

 俺が落ち込んだのを見た嫁~ずは、急に慌て出した。

「いや伯爵様。この前言いましたよね?」

 あれ? そうだっけ…最近、物忘れが激しくてのぉ… 

「知ってたといっても、詳細はしらないんです!」

 ミルシェ君、本当? それ、慰めようとして言ってる?

「トール様ですから、きっと素晴らしいダンジョンを創られるのでしょう? 見たいですわあ!」

 メリル君、本当に見たい? いや、わざとらしいぞ、その笑顔。

「あの、その…でもでも、予想と違うかもって思ってて…」

 ミレーラ君、予想は当たったね。ってか、ダンジョンって言ったな確かに…

「きっとトール様ですから、想像を遥かに超えたダンジョンを創られる事でしょう! 楽しみです!」

 マチルダ君、本当に本当に楽しみ? まさか出来てから想像通りとか言わない?

「はっはっは! 旦那様の事だ! きっと極悪で鬼畜なダンジョンにするのだろう! 是非とも挑戦したいものだ!」

 イネス君、君の脳筋振りが羨ましいよ…。

 まあ、ネタバレしたのは俺自身だし、落ち込んでても仕方ねえ。

 ここはスッキリサッパリ潔く気を取り直していこう。だって、男の子だもん!

「うむ、皆の言う通りです。この大陸には新たにダンジョンを創りますが、それは想像の斜め上を行くような、飛び切りのダンジョンになる予定です! そう、この大陸全部余すとこなく使った、攻略に数千年は掛かろうかという、最凶にして最恐のダンジョンです! こうご期待!」

 わーわー! ぱちぱちぱち… 何かとってつけた様な拍手だけど、まあいい。

「それではこの大陸の中心へと向かいます。そこにダンジョンの中心を創りましょう! 食休みが済んだら出発です!」

『はい!』


 ふぅ…それでは俺も部屋で一服するとしようかな。

「伯爵様?」

 ん? ユズカか。どうした?

「昨晩は随分とお愉しみだった様で」

「ば、おま、ちょ!」

 いきなり何をいうか、こいつは!

「いえいえ、もう夫婦なのですから恥ずかしがらずに。それは良いとして、昨晩使われたシーツですが…申し訳ないのですけど、ご自分達で洗濯してくださいね。理由はわかりますよね?」

 にっこり笑ってはいるが、ユズカの目が『あんなものを洗わせるな!』と、如実に語っていた。

 そうですよね…それは良く分かっています…ええ自覚してますとも。

 もちろん、自分達で洗濯いたします。あとでキャビンにでも干しておきます。

 良く晴れているので、きっとすぐに乾くでしょう…しかも、この船はお空を飛んでいるのですから。

「あ、もふりん達の教育上、あまりよろしくないので、目立たない所で洗濯して干してくださいね。それぐらいの配慮は出来ますよね、大人なんですから」

 くっそー! ユズカに常識を説かれるとは、なんたる不覚か!

 いえ、そうですね…隠れて洗濯して干します、はい。

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