第408話  次弾発射します!

「それでは、トール様がダンジョンマスターになられるのですか?」

 うん、良い質問だね、メリル。

「その答えはもちろんNOだよ。もちろん、色々と口は出すかもしれないけど、マスターは別に居る」

「はあ…。でも、ダンジョンが新たに出来る時には、ダンジョンマスターが居ないといけないですよね?」

 俺の答えに納得いかない顔のメリルの追撃。

「それはちょっと違うんだなあ。まあ、もう少し見てたらわかると思うよ」

「はあ…?」

 そりゃ、こんなに含みのある回答だと納得できないだろうな。でも、本当に出来るかどうかは、一種の賭けなんだよ。 

 まあ、もちろん次善の策も用意してるんだけどね。一の矢二の矢は用意して来ましたから、どうかご安心を。


「サラ。大陸の真ん中まであとどれくらい?」

「今、到着しました。すぐ安全な高度まで上昇します。準備をお願いします」

 いつになく真面目な顔のサラが、操縦かんを握りながら言った。

「よし、では全員席に着いてベルトを装着。少し揺れるかもしれないし、場合によっては全速力で逃げるかもしれないので、各自注意する様に」

 サラに続き、俺もキリッとした真面目な顔で言うと、何故か全員俺から目を逸らした。

 それでも着席してベルトをしてくれたけど…あ! マチルダ、お前…今、笑ってただろ! ミルシェもだ!

 何だよ、真面目な顔したら駄目なのかよ! 面白いのかよ! 一応、これでも俺はお前達の旦那だぞ?

 メリル…ミレーラも…プッって何だよ! 笑いたきゃ笑えよ! もう、トール君は拗ねたぞ!

 そう言えばイネスは笑ってないな。そうか、普段は脳筋だとか何だとか思ってたけど、イネス…お前って奴は…

「イネスさん、起きてください。ちゃんとベルトしなきゃ危ないですよ?」

 ユズカがイネスのベルトを締めてた…。そうか、寝てたのかよ! もういいよ…本格的に拗ねてやる…


 いじいじ拗ねてる俺の事なんてまるっこ無視して、ホワイト・オルター号は予定ポイントに到着したのか上昇を始めた。

 十分な安全高度を確保出来たのだろう、サラが俺に向かって、

「投下可能な安全高度に達しました。いつでも行けます」

 サムズアップしながら振り返った。もの凄くいい笑顔で、ウィンクしてるつもりかもしれないが、全然出来てないからな? どう見ても、ただの変顔だぞ…それ。

 まあ、それはそれとして、

「それでは【環境改良かえる君】投下!」

 窓から手を出して、そっと虹色の球を投下した。

 さって、上手くいくかな?


 嫁~ずもサラやリリアさんも、もちろんユズユズも一斉に窓に張り付いて遥か下の大地を、息をのんで見つめる。

 変化はすぐに訪れた。

 ごごごごごごごごごごごごごこごこごごごごこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……………

 地鳴りのような音が響き渡ったかと思うと、もの凄い土煙が上がった。

『うわ!』

 全員が声を揃えて驚いていると、その土煙の中から巨大な何かがせり上がってくるのが分かった。

「ちょ! サラ、緊急回避! どこでもいいから逃げろーーー!!」

「りょ、りょーかい!」

 俺の指示に従って、サラがホワイト・オルター号を急旋回して回避行動に移る。

 が、それよりも土煙が飛行船へと到達する速度が上回っている!

「全力で逃げるんだー! 早くーーー!」

 急激な加速と旋回で、強烈なGが身体にかかる。

 横を向いて窓の下を覗いてたのがいけなかったんだろう、首にものすごい負担だ。

 船体を傾けながら加速したホワイト・オルター号は、もうもうと立ち込める土煙の範囲から逃れてから、ゆっくりと減速した。

「はぁはぁ…もう大丈夫かと…あ、あぶなかった…」

 いつもおちゃらけているサラでさえ、身の危険を感じたんだろう。

 ものすごい汗をかき、息を切らせていた。

「どうやら、その様だな…ふぅ…」

 俺も一息ついた所で、誰かの声が上がった。

「あっ!」

 誰の声か分からなかったが、反射的に窓の外に目を向けた俺も、同じく声をあげた。

「ああ!?」

 そして、キャビンに居た全員がそれを見て、声をあげた。

『あああああああ!!!!』

 

 みんなの視線の先には、土煙から飛び出した巨大な塔が立っていた。

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