第395話  はねむ~ん?

 はぁ…頭の中での大騒動も何とかおさまったよ。

 変な言質も取られてないから、多分大丈夫だと思う…思いたい…

 さ、もう皆も着替えも終わった頃かな? 女性だから、もちょっとかかるかな?


『ところで大河さん、今さらながらですが、ちょっと疑問があるんですけど』

 はぁ…サラか、どうした?

『ユズユズの結婚式の時は、チャペルの地下に豪華な披露宴会場造ったじゃないですか』

 ああ、造ったよ。

『今回は、何でそこを使わなかったんですか?』

 うん、まあ…あそこは現在は倉庫だ。

『倉庫? 今回の披露宴会場の方が、倉庫みたいなんですけど?』

 何て言うんだろう…新郎新婦が退場する時、階段上がるってのはちょっと変じゃね? って思ったから、あそこは閉鎖したんだ。

『ん~~~~確かに絵面は良くないかもですねえ』

 だから、披露宴や結婚式で使う小道具置き場にしたんだよ。もちろんシャンデリアとか使える物は、ちゃんと移設したぞ。

『そうなんですね…てっきり、ワイドでロングなキングサイズベッドを幾つも繋げた様な、アラブの大富豪が使ってるみたいな巨大ベッドを搬入して、がっちり防音処理を施したのかと思ってましたよ』

 はぁ?

『いや~、初夜は超巨大ベッドで、組んず解れつ6人で熱い一戦を交える為の部屋に改造したのかと』

 するかーーー! 

『では、初夜はどちらで?』

 もちろん、新婚旅行がわりのバカンスでだよ。

『いや~ん、バカ~んす?』

 いつのギャグだよ…


 その後、ほどなくして俺の控室の扉がノックされた。

「トール様、お待たせしました」「「「「お待たせしました~」」」」

 メリルを先頭に、嫁~ずがラフな普段着になってやって来た。

「いや、それほど待ってないよ。皆、何度も着替えして疲れただろ。」

 結婚式と披露宴っていうイベントでは、花嫁が一番輝く主役ではあるが、一番疲れるのもまた花嫁なのだ。

「ええ、少し疲れました」「私もです」「…ちょっとだけ…」「肩がこりました」「もう3セットぐらい行けます!」

 だれがどの返事かは、言わずもがなだろう。

「本当にお疲れ様。でも、その労力に見合う華やかさだったよ。皆、とっても綺麗だった」

 労いの言葉と共に、艶やかで華やかだった装いを褒めてあげると、5人共とてもいい笑顔になった。

「それじゃ、そんな5人に俺からのプレゼント…っていうか、俺も楽しみにしてたバカンスに出発だ!」

『ばかんす?』

 あ、バカンスなんて毎日を必死に生きるこの世界の人々には、あんまり馴染みが無いか。

「まあ、言ってみれば旅行かな」

「あのぉ…トール様? この前、王都に行ったばかりですけど…」

 メリルが言い難そうにそう言った。だけどな、メリルよ…

「それは旅行とは言わん! いや、世間様が旅行だと言ったとしても、俺は断固認めん!」

 嫁~ずが、何故か引き気味に見えた気もするが、これだけは譲れないのだ!

「バカンスとは、楽しむためだけの旅行だ。仕事や所用で何処かに出かけるのは、旅行とは言わん! それは出張だ!」

 完全に全員が引いてた…いや、何故か俺を憐れんだような顔をしていた。なぜだ…解せん…。

「あ、それでアレを準備をしておけって…仰ってたのですね?」

「はい、ミレーラ君、正解!」

 良くできたミレーラ君には、いい子いい子してあげやう…なでなで。

「アレって、そういう意図だったんですか?」

「ミルシェ君…どういう意図だと思ったんだい?」

「………………」

「おい!」

 こいつら、一体俺を何だと思ってたんだよ! 

「まあ、いいや。それじゃ、家族に挨拶したら出発するぞ~! 荷物はちゃんと忘れずに用意しとけよ~」

『は~~~い!』


 はあ、何だか1ヶ月ぐらい式だの何だのやってた気がするなあ…もちろん気のせいなんだけど。

 色々とストレスも溜まってたのかもしれないな。

 この機会にしっかりとリフレッシュしなきゃな! 楽しい楽しいバカンスの始まりだ!   

『…色んな意味でリフレッシュですか…地獄のバカンスにならなきゃいいですね』

 何だよ、意味深だな…サラはバカンス嫌いなのか?

『えっ!? 連れて行ってくれるんですか!?』

 いや、もちろん連れて行かないけど?

『くっ…爆発してしまえ!』

『サラ、この方は爆発するために、バカンスに行くんですから、その表現は間違いです』

 な、リリアさんまで何を言いだすんだ!

『確かに、では言い直しましょう…ファイト~~~!!』

『1~~~~~発!!』 

 どこのCMだよ! 

『『いいえ、大喜利です』』

 う、上手いじゃねーか…座布団やるよ…  

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