第396話 私が最初です
さてさて、ネス湖の湖畔で結婚式を挙げ、披露宴も終えた俺と嫁~ずは、バカンスに出発した。
まだ披露宴会場で呑んだくれてる親族一同を置き去りにし、こっそりと屋敷に戻った俺達は、事前に嫁~ず達に通達していた荷物を持って、そそくさとホワイト・オルター号に乗り込んだ。
むふふふふ…披露宴会場からは、ネス湖の湖底から浮上するホワイト・オルター号は見えまい。
さささっと登場すると、これまたさささっとタラップを格納して離陸した。
目指すは海! いや、俺の領地の端っこであり、人魚さんが住んでるあの海。
正確には、もうちょっと暖かい海にまで行くんだけどさ。
もちろんこのホワイト・オルター号だとあっという間なんだが、そこはホレ、バカンスなんだからのんびり行くんだよ。
季節外れの海ってのは如何なものか…と諸兄から苦情が来そうだが、あまりそこは気にしない。俺達の住むこの大陸から、ちょっと進めば気温も上がるはず。
具体的にはこの惑星の赤道辺りまで飛べば、かなり気温は高くなると推測しているのだ。
どの星でも赤道付近の気温が高くなる…という訳でも無いのだが、この星に限ってその心配はしていない。
何せ管理局が地球をモデルに重力やら何やらを調整したとか言ってたから、きっと地球の環境に近いはず。
加えて俺達の住む土地がそれほど寒暖差が無い事を考慮すると、地球では西ヨーロッパ、具体的にはドイツ、フランス、オーストリア辺りが気候的に近い土地だと思われる。寒暖差があまりなく、夏も気温が上がらず、冬もそんなに気温が下がらない。
まあ、海流の影響とかもあるんで、一概にそうとは言えないんだが…あの辺りと同じだと考えると、ちょっと進めば赤道付近にまで到達すると思うんだ。
この惑星には俺達の住む大陸しか、陸地は無い…らしい。
小さな島ぐらいはあるんじゃないかと思ってたけど、それすらも無いって言うんだから、もう海に出ちゃえば誰にも見咎められる事は無いのだ。
そう、バカンスするんだよ!
海を見た時から念願だった、ビキニ美女とビーチパラソルの下でエキゾチックな飲み物を飲んだり、日焼け止めを塗りっこしたりしてみたかったんだよ。
婚約者の内は、何だか頼み辛い物があったが、こうして嫁となったんだから、色々とお願いしても良いんじゃないだろうか?
もちろんビーチどころか島すらないんだから、このホワイト・オルター号を海に浮かべて、デッキを出せばそれで十分なのだ。
加えてこの飛行船に備わったシールドを展開しておけば、肉食や巨大な海棲生物なんていたって怖くないし。
きっと、サラとリリアさんは俺の視覚に侵入して覗き見するだろうが、もうこの際それは無視だ無視! ってな事を考えていたら、ホワイト・オルター号は海に出た。
コックピットの後ろでのんびりお茶をしていた嫁~ずも、キラキラ輝く海を見てきゃーきゃー言ってるので、まあバカンスの掴みは大丈夫でしょう。
さあ、楽しいバカンスの始まりだー!
気温も十分に高いエリアまで飛行船を飛ばしたので、ここで着水。
ぼ~っと海を眺めながらひたすら妄想に浸ってた俺に、メリルが声を掛けた。
「トール様…晩御飯のご用意が出来ました」
「あ、ああ…うん。もうそんな時間か」
振り返ってメリルを見ると、可愛いエプロン姿で俺を心配そうに見ていた。
「どうかされたのですか? もしかしてお疲れなのでは?」
ぼ~っとしてた所を見られでもしたのか、はたまた俺の顔が終電を待つサラリーマンの様だったのかは定かではないが、メリルが心配そうに俺に訊ねた。
「いや、全然大丈夫。ちょっと考え事をしてただけだから」
そう言いながら、俺は席を立ちあがると、
「そうですか…それは良かったです。順番では私が最初ですので…お疲れの様でしたら…あの…」
真っ赤な顔で、なにかゴニョゴニョと口の中でメリルが…あああ!
「そうか…メリルが最初だよね」
何が言いたいのか、思い当たる節が滅茶苦茶ある。
「ええ、そうです…もしもお元気な様でしたら…次はミルシェですが…」
この娘、何言っちゃってんの!? ってか、心配してたのは、まさかソレ!?
「出来れば、もしも、もしもですよ? ミルシェまでお相手される元気があるんでしたら…今夜はずっと私だけ愛して頂けたらと」
まさかの2回戦を希望ですか!?
「毎晩、順に朝まで愛していただけたら…」
オールなんですか!? まさか、寝ずにヤレと仰るのか!?
「え~っと…出来る限り頑張ります…」
それ以外、一体どんな返事をしたらいいんでしょうか…誰かどうぞご教授くださいませ…
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