第369話  王城での結婚式④

 さてさて、王城での結婚式に関してだが、やはりこの世界で行われるごく一般的な結婚式と何ら変わりは無かった。

 ただ、規模が極端に大きく派手ではあったが。

 

 眩い光に目を細めた俺達ではあったが、すぐにその明かりにもなれると、目の前には真っ赤な毛足の長い高級な絨毯で出来た一本道があった。

 バージンロードがまるで陛下への謁見の場の様になっているのは、この世界の仕様なんだろう。

 少しだけハリウッドのレッドカーペットを思い浮かべたのは、仕方ない事なんじゃないかな。

 真っ赤な絨毯で出来た道を挟み、左右に来賓がずらっと並んでいた。

 俺達から見て手前…つまり入り口側から奥に向かって立場や爵位の低い順に並んでいる様だ。

 その中を俺達はしずしずと進む。


 今回使用した5人のウェディングドレスは、実は裾を引きずるほど長くはない。

 良く海外のセレブや王族の結婚式では、何メートルもある裾を引きずったり、子供達が持ったりしてるが、この世界でその様な風習がないのだ。

 一応、そういったウェディングドレスのデザインも考えていたんだが、5人で歩くと誰かが裾を踏んづけそうなのと、かなり意欲的なデザインを採用してしまったので、そこまで異質なものにしてしまったら、奇異の目で見られてしまう事も考慮した結果だ。

 だが、この世界では高級な生地を使い、贅沢にレースをあしらった純白のドレスは、この場の全員の度肝を抜いた事だろう。

 なんたって全く新しいデザインというだけでなく、純白のタキシードとドレスの新郎新婦など前代未聞なはずだからだ。

 先にも述べたが、この世界の結婚式で着用するドレスは白では無い。

 王家しか使えない色はあるが、それ以外であれば基本的に個人の好きな色のドレスを着用する。

 派手派手な色で、ひたすらでっかいヒラヒラをこれでもかと付けているドレスが、貴族では良く見られる。

 そこにシンプルだが細部に凝った意匠の、清楚なドレスだ。しかも全員が光り輝くティアラを着けている。

 目立たないはずがない。


 では、ここで各人のドレスを簡単にご紹介。


 まずはメリルだが、そのものずばりプリンセスラインを採用! お姫様だからぴったり。大胆なオフショルダーのドレスは、着る人によってはいやらしく感じたりもするが、元々高貴なメリルが着ると、逆に清楚に見える。ドワーフ職人さんが苦心しただけあって、腰の辺りからふわっと広がるレースの裾が華やかで、メリルの雰囲気に良く合っているのだが、難点は腕を組んで隣を歩き辛いって事かな。

 少しだけメリルが俺に体重を預けるように、身体を傾けてくれたら問題ないのだが。


 ミレーラは、Aラインのラウンドラインドレスを着用。

 一層可憐なイメージを強調するがごとく、そのラインはシンプルかつ上品だ。

 腰よりも少し高い位置から伸びるスカートは自然にAの形に広がり、婚約者~ずの中で一番背の低いミレーラだが、ちょっとだけそれをフォローしてくれている。


 ミルシェのドレスは、腰の辺りからふわっとスカートが小さく広がるホルターネックのベルラインドレス。

 しかもちょっとだけスカートの前丈が詰められた特別製で、活動的で元気いっぱいのミルシェにはぴったりの一品。

 歩くたびに見える健康的なふくらはぎが、清純さのなかに色気を匂わせている。

 参列者も、その引き締まったミルシェの脚線美の虜になっているだろう…本人、ちょっと恥ずかしがってたが…。


 マチルダは、シンプルなオフショルダーのスレンダーライン。

 ゴージャスでメリハリのあるマチルダのボディーには、これで十分。

 いや、某アニメの回想シーン? 空想シーン? でのマチルダさんのドレスを参考にしたわけじゃないよ?

 シンプルなデザインだが、実は後姿に凝っていて、背中側の腰から裾に贅沢にレースを使っていて、腰周りのゴージャス感が強調されている。

 珍しく髪の毛はアップにセットしてあり、年齢以上にセクシーな雰囲気を醸し出していた。


 イネスは、大胆に背中が開いたVネックのマーメイドライン。

 体型的にどうかとも思ったのだが、自然に流れるスカートのラインは、普段の鍛錬により締まっている腰周りから美しく流れ、高いヒップラインがそのドレスのラインを押し上げて、健康的な色気が匂い立つ。

 胸元と腰には可愛らしく大きなリボンがあしらわれ、普段の凛々しい姿からは想像も出来ない程にエレガントでキュートだ。

 裾部にフリルをたっぷりと使用しているところは、意外と可愛い物が好きなイネスの希望だ。

   

 参列者のため息ともつかない感嘆の声と、盛大な拍手に迎えられた俺達は、国王陛下の待つ正面奥の壇上へと向かって、静かに歩いていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る