第367話 王城での結婚式②
メイドさん達に、寄って集ってキレキレイされてしまった、チェリーなトール君です。
いや、マジでデンジャラスだった…石鹸にゅるにゅるで、俺のだいじな坊ちゃんをにぎにぎされそうになった時は、必死になって手を振り払ったよ…個人的にそういったサービスは好きだけど、結婚式の当日にそんな事してたなんてバレたら…
いや、結婚式終わったからって、そんなお店には行きませんよ? ホントダヨ?
十分暖まった所で、ささっとタオルで身体を拭いて、そのタオルを腰に巻いて風呂を出ます。
だって、下着を風呂場に持って来てないんだもん…一生の不覚…
風呂から出ると、さっきまで湯着だった飢えたお姉さま方(もうメイドさんとは思わない)が、ピシッと折り目正しくメイド服を着こなして待ち構えていた。あんたら、もの凄い早着がえだな…。
部屋の机の上には、俺が持ってきた結婚式用に新たにあつらえた正礼装と新品の下着一式が並べられていた。
何故にパンツまで広げて置いてあるのだ? 何の飾りも無いごく普通の真っ白なトランクスなんだが、明るい照明の下で広げて置かれると恥ずかしいぞ?
一応、つい立てみたいな物があったので、取りあえずパンツだけを掴んでダッシュで衝立の向こう側へ。
そこでタオルを脱ぎ捨て、ささっとパンツを穿きました。これで一安心、ふ~。
と、ため息をついた瞬間に、バッ! と衝立がどけられました。
コラ、ソコ! 今、「チッ」って舌打ちしただろ! お前ら結婚式当日の花婿に何を求めてんだよ!
ここにサラが居たら、「そりゃ、ナニを狙ってるに決まってるじゃないですか」とか言いそうなんだが、メイドさん達は知らん顔で次の支度の準備に取り掛かった。
花婿の結婚式の衣装なんて、古今東西、時代も次元も世界も超えた所で、そう代わり映えしないもんだ。
今回の俺の衣装は、この世界の正装としてはごくありふれた型のモーニング・コート。
ほとんどの貴族は、金と赤以外の色(この2色は王家専用らしい)を使ったモーニングを着る。
結婚式でもそれは変わりないし、花嫁のドレスも彩り豊かで豪華絢爛。
つまり、地球の結婚式の様な純白って訳ではないのだ。
なので、あえて俺達の衣装は全部白で統一した。もちろん靴も下着も全部だ。
貴族が晩餐会やこういった式典に出る時は、それこそ色とりどりの宝石をこれでもかと身に付けるらしい。
しかし、反骨精神旺盛なトール君は、そんな常識には負けない!
ダイヤと真珠だけのシンプルでありつつもキラリと光る宝飾を、一点もので作ったのだ。
ちなみに、俺はタイピンにダイヤを、カフスに真珠を使ってみた。
婚約者~ずには、それぞれのイメージでデザインしたティアラとネックレスにダイヤと真珠を目いっぱい使ってやった。
一応、事前にデザインは教えておいたのだが、完成品を見て今頃感動で涙を流しているに違いない!
あ、結婚指輪はもちろん金で、婚約者~ずのには小さなダイヤが1個だけ嵌ってます。
俺のには、さらに小さなダイヤが5個並んでます…意味は分かるでしょ?
そう言えば、この世界にティアラは無いそうで、婚約者~ず…とりわけメリルは、その斬新さに驚いていた。
王様には王冠があるのに、なんとも不思議な話だ。
さて、またまた寄って集って着せられた花婿さんの衣装…なかなか似合うんでないかい?
メイドさんが、さささっと姿見を持ってきて見せてくれたんだが、いけてる気がする。
ここまで来たら、もう準備もラストが見えてきた。
今度は髪型を整えたり、見栄え良くする為とかで、ちょこっとお化粧もされた。
俺…前世も含めた人生で化粧したの初めてだ。
姿見で見て見ると…普段はてきとうに名がしてる髪の毛がオールバックになった以外、あんま代わり映えしなかった…。
最後に、ちょこっと良い匂いのする油を、首筋に一撫で…さわやかな香りがするな、コレ。
「ふ~…」
メイドさんが、やり切った…って顔でため息を付いていた。
俺って、そんなに準備大変だった? もしかして、何とかかんとか見れるようにしました…疲れた~って感じなの?
「良くお似合いです、伯爵様。さあさ、お時間まで楽にお過ごしください」
メイド長さんぽいあの年嵩のいった女性が、俺をテーブルまで誘導すると、暖かい香茶を淹れてくれた。
うん、貴女…今、明らかに目が泳いでたよね? もしかして似合ってないのか? オールバックがダメなのか?
あんた等がセットしたんだろうが! もっと本気で褒めろや! 俺は褒められたら伸びる子なんだからな!
あれ、ちょっと違う…いや、だったら納得いくまでやれや!
おい、何で全員で目を逸らす!
マジで似合ってないのか? おい、何とか言ってくれ!
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