第366話  王城での結婚式①

 本日は、とてもお日柄も良く…ちょっと寒いけど晴天です。

 

 この大陸は、冬っていってもそんなに寒くない。

 だが、暖房も無い部屋でウェディングドレスなんて着たら、そりゃ花嫁も風邪をひくってもんだ。

 なので前日の夜間より、王城の暖炉にはガンガンに薪を放り込まれ、さらに暖気を逃がさない様に扉の開閉は最小限で抑えるために、全ての出入り口に扉の開閉を見張る為だけの人が配置されている。

 …めっちゃ金かかってないか、これ? 後で請求されたりしたら、嫌だなあ…などとお城に到着した時に思ってしまった。


 結婚式当日である今日は、父さんの王都の屋敷で遅めの朝食を食べたあと、婚約者~ずとご両親や血縁者などの関係者一同、我が家の面々とで準備してた馬車10台に分乗して出発。

 向かう先は、もちろん王都で最も大きい建物である、お城。

 ずらりと騎士が並び、厳重な警備をされている正門を、俺達の乗った馬車はゆっくりと進む。

 もちろん先頭の父さんの馬車の紋章と、最後尾の俺の馬車の紋章、とどめに王女であるメリルが本日まで使用できる王家の紋章が付いた旗を立てた馬車が中ほどを走れば、完全に顔パス…っていうか、この馬車の列は紋章パスであった。

 メリルが王家の威光を使う事なんてめったにないのだが、本日は余計な面倒事を避けるために、あえて本日だけ王家の紋章の描かれた旗を立てたそうだ。

 こんなの持って来てたんだ…と思って訊いてみたら、使う機会が無かっただけだそうだ。

 どうせ今日で返すんだから、最後に虫除けにでも使ってやろうと考えたとか。

 豪胆な王女様だよ、本当に。


 しずしずと正門を通り抜けた俺達の馬車は、そのまま環状城壁の内側を進み、城の真裏に到着。

 普段は物資の搬入等に使用される場所ではあるが、ここが最も親族用の控室に近いのだそうで、ここで俺と婚約者~ず以外の面々とはお別れ。親族用の控室へと案内される事となる。

 さて、俺達はもう少しだけ城壁沿いに馬車進めて、騎士がずらりと並んだ出入り口の前で馬車は静かに止まり、降車となる。

 大きくはないが、今日のために隅々までピカピカに掃除され、豪華な絨毯が敷かれたその入り口から、俺達は案内のメイドさんに先導されて城内へと進む。

 王女であるメリルも知らないというぐらいなので、普段使用しないか又は使用人しか使わない様な廊下なのだろう。

 だが、どこを見てもそんな感じは欠片も見せない程に磨き上げられている。

 どっかの意地悪姑みたいに、窓の桟を指でつつつ~っとやった所で、埃の欠片も付かないだろう。

 どれぐらい歩いただろうか、何度か角を曲がり、何度か階段を上がると、婚約者~ず達は一つの扉へと案内されて入っていった。あそこが着付け部屋なのかな? ちらっと見えた室内は、もの凄く明るくてキラキラ光ってた。


 女性は準備にお時間がかかりますからねえ~と、前世での結婚式前でも先に着替えに行ってたなあ…別れた嫁…。

 そんな事を考えながら、再び歩き始めたメイドさんの後を歩いて追い、2回ほど角を曲がると、どうやら俺の控室に到着した様だ。騎士さんが守る小さめの扉が廊下の突き当りにあった。

 ん~突き当りって…牢屋に入れられるみたいだな…あの扉の先が地下への階段だったら…。

 当然、そんな事があるはずも無く、扉の先はそんなに大きくも無いがとても明るい部屋だった。

 中にはずらりと…えっと、ひのふのみの…6人ものメイドさんが待ち構えていた。

 ありゃ? 俺ってたしかタキシードっぽい衣装だった気がしたんだけど…お手伝いは1人も居れば十分なんだが?

「そんな分けにはまいりません! しっかりと我々一同にて、徹底的に磨き上げさせていただきます!」

 メイド長さんっぽい、ちょっとだけ年嵩のいったメイドさんが気合十分にそう言った。

 残る5人のメイドさんも、うんうん頷いてるけど…何な目が怖い…獲物を狙う猫科の猛獣に見えるのは気のせいだろうか…

「では早速ですが、湯あみからです。さあ、みんなやっておしまい!」

「ちょ! やっておしまいって…おいコラ、ちょっと待て!」

 メイド長命令一下、5人のメイドさんが俺に群がった。

 そりゃもうあっという間に服なんて剥ぎ取られ、すっぽんぽんのトール君は、マイサンを隠す事も出来ず、両側からしっかりと拘束されて隣の部屋に…バスルームになってるのか、ここ!

 でっかい陶器製のバスタブにはすでにお湯がはられていて、メイドさんが俺を湯船に放り込む。

 俺の扱い雑じゃね!? 

 と思ってましたが、メイドさん達いきなり服を脱ぎ捨てました。

 あれ? 新しい風俗店ですか、ここは? プレイ料金はおいくら? って、いやいやいや!

「何脱いでんの!?」

「お世話のためですので、お気になさらず」

 めっちゃ冷静に言われました。

 よく見たら、湯着っていうのかな? 薄い肌着を身に付けてるから、素っ裸ってわけでもない。

 有無を言わさず俺を湯船から引っ張り出すと、木製のちょっと低い椅子に座らせて、身体中を全員でゴシゴシゴシ…。

 濡れた湯着が素肌に張り付いて、素っ裸よりエロいんですけど!

 マイサン、もちつけ…じゃない、落ち着け! いや違う、俺が落ち着かねば!

 こんなとこで暴君を目覚めさせてはいけない…そうだ、こんな時は素数を数えるんだ! 2、3、5、7、11、13、17、19、23、29…そういえば歯車って素数同士の歯数にしないと寿命が短いとか聞いたな…

 あ、次は頭ですか…目を瞑れ? はいはい。

 31、37、41、43、47、 53、59、61、67…えっと次は…71…

 目を薄っすらと開けると、目の前には濡れて透けた湯着が素肌に貼りついて、もの凄くエロい胸元が…見ちゃだめだ見ちゃだめだ見ちゃだめだ!

 あ、そこは良いから! やめて! 自分でするから! 股間もお尻もだめ! 

 やめて、そんなニュルニュルした手で…触らないで! ちょ、マジやばいから!

 はぁはぁはぁ…死守した…一線は守りきった…ぎりぎりで…

 

 全身くまなく洗われた俺は、またまた湯船に放り込まれた。

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