第315話 移住第一陣、出発します!
孫娘の処遇を聞いたカパス老は、何やら一気に老け込んだ様だ。
いや、元から爺さんだったから、更にと言った方が正しいだろうか。
そんな爺さんは無視して、集まった人々に訊いてみた。
「え~皆さんにお訊きしたいのですが、ここに居られる方は、移住希望者第一陣で合ってますでしょうか?」
すると群衆から、父さんと同じぐらいの年齢かな? 男性が進み出て、
「はい、使徒様。ここに居るのは、全て移住希望者です。4つの集落で約1200名です。他の集落の約1700名もこちらに向かって移動している所です」
実は神国へ行く前に、希望者が全部で何名になるか申告する様に言っておいたのだが、結構な人数になったな。
カパス老の所が最大集落で700名って言ってたから、他は思ったよりも小さな集落だったのか。
それでも3000人近い民族の大移動ともなると、荷物の量もそれ相応になる。
第一陣だけでも2往復ぐらい必要なのだが…仕方ない、半分はキャンプしてもらうとすっか。
あのレースで折り返し地点として使ったオアシスで1日野宿してもらってればいいかな。
「え~この人数を一度には運べませんので、半分の方には1日ほど待っていただく事になります。皆さんがバラバラになると、あまりよろしくないので、あちらのオアシスで野宿をして頂けませんか? 大急ぎで往復すれば、明日のこの時間は戻って来れるはずですので、居残り組と出発組で別れてください。方法はお任せしますので600名ほどを選出してください。残った方も、明日には出発ですので、決して揉めない様に。神々は見ておりますからね」
そう伝えると、あっという間に選別が完了した。
あ、カパス老のとこの700人ほどと、残りの3つの集落500人に別れたのか…狭くなるけど、我慢してね。
取りあえず、本日出発組をカーゴスペースに順次、文字通り詰め込んだ。
まあ、倉庫スペースなので床に座ってもらう事になるのだが、一日だけ我慢して欲しい。
意外な事に誰からも不平不満も出ず、乗り込んだ人々は奥からスペースを詰めてくれたので、何とか全員と荷物を収納する事が出来た。
倉庫内には、食料や蒸気自動車、その他にも細々とした俺達の荷物もあったが、それに手を出す様な人も居らず、全員とても大人しいものだった。
神の世界の乗り物って認識らしく、畏れ多いらしい。
注意事項として、食料は好きにしてくれたらいいけど、倉庫内は火気厳禁なので、本日は保存食でも齧って我慢してもらう事と、倉庫内のトイレには数に限りがあるので、喧嘩しないでちゃんと順番に綺麗に使ってね、とだけ言っておいた。
俺達のいる居住スペースと違って、窓の無い倉庫の扉を閉じてしまうと、外が全く見えないので不安だろうけど…まあ、信じてもらうしかないな。
ちなみに俺達の居住スペースと同調している倉庫の照明は、自動的に明るさが変わるので、寝る時に明るすぎたりすることは無い安心設計となっております。
残った人々に、後続の移住希望者が来たら、5~600人のグループに分けておいてほしいと伝え、ダッシュで神国に割り当ててもらった土地へと出発だ。
今回だけは仕方ない、ちょっとスピードを上げて行くか。
この地点から、神国の移住予定地までは、直線距離では短いものの、ぐるりを取り囲む山脈のせいで、かなりの大周りをしなくてはならない。
ホワイト・オルター号が空を飛ぶ船ではあるのだが、あまり高度は上がらないのだ。
ガスを使用した地球方式の最新式飛行船でも、高度4000mぐらいは挙がれるのだが、この船では2000m程度が限界。
何故なら、精霊さん達がそこまで高く飛べない事が原因。
このホワイト・オルター号は、精霊さんの力をフル活用しているので、精霊さんの限界以上の高さでは飛べないのだ。
んで、この地を取り囲む山脈は2~3000m級の連峰となっている。
この峰を越えるポイントが限られているため、遠回りしなくてはいけないって事なんだよ…面倒だが、仕方ないのさ。
だが、今回はスピードアップする予定。
快適な空の旅をする時の巡航速度は、40~60km/hに設定しているのだが、今回は150km/hまで頑張ってもらう予定だ、主に精霊さんに。
そうすれば、一日で往復が可能になるはず…理論的には…帰ってきたら真夜中になるので、帰りはゆっくりと飛ぶけどさ。
んじゃ倉庫内も落ち着いた様だし、家族も全員乗り込んだ様だから、そろそろ出発すっか!
まずは、移住第一陣、出発します!
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