第312話  衝撃的な事実(面倒くさい説明回)

 え? どの種族とも交配できる…の?

『ええ。人と分類される種族間限定ですけれど』

 ちょっと待とうか、サラ。

 つまり、人種と人魚とか、魔族とドワーフとか、エルフと人種とか、獣人と魔族とか…可能って事なのか?

『ですから、可能だとさっきから言ってるじゃないですか』

 マジっすか!? 

『この世界で人と分類される種族は、人種、エルフ、ドワーフ、魔族、人魚などが代表的ですけれど、遺伝子的には数パーセントしか変わりありません』

 確か人間とチンパンジーの遺伝子は99%ぐらい一致するって聞いたけど、それじゃ人間とチンパンジーも交配可能なのか?

『あ~その情報は間違ってますね。地球の人間の遺伝子内の染色体は23対、チンパンジーは24対。ここですでに違います。遺伝子情報を英語のアルファベットに換算すると35~38億文字にもなります。解読不能な文字を除外して、残った文字を比較した場合、確かにその文字相当の塩基配列に関しては90%近くが一致しますが、解読不能な一致しない部分の文字数は12~14億文字にもなります。つまり1/3程は違います。これほど遺伝子的に遠くては、人間とチンパンジーでの交配はほぼ不可能です』

 おお、何かめっちゃ難しくなった! てか、理解が追い付かん。

『この世界で人と定義されている種族に関しては、輪廻転生管理局の手によって、ゲノム解析が遥か昔に終わっております。というか、人種のゲノムを元に進化・分化した種族ですので、遺伝子的にかなり近距離です』

 そういえば…進化の方向を管理局が決めてたんだっけ。

『ですです。ですから、交配可能な遺伝子距離を保ってます』

 むぅ…それでは、この世界でくっころさんの可能性は十分にある訳か。

『え? 無いですよ?』

 へ? でも異種族交配が可能って事は…女騎士がオークとかゴブリンに…

『無いです! なぜなら、オークもゴブリンも人の定義から外れていますから』

 そうなのか…

『それに、くっころさんは、雄が雌に種付けして繁殖をしようというのでしょう?』

 そうそう…胸クソ悪くなるが、ゴブリンが女騎士を孕ませてゴブリンが産まれるっていう…

『ですから、その設定はこの世界ではありえないのです。この世界では、一切の例外なく、子供は母体と同じ種族として生まれるのですから』

 は? って事は、エルフ夫とドワーフ妻の間に出来た子供は、ドワーフって事?

『そうです。ですから、くっころさんが居たとしても、多種族の繁殖に使われることは無いのです』

 それはまた何とも…

『ですから、男性が「あ゛う゛ぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!」って、多種族の女性に襲われる事はありますけれどもね』

 あ、アマゾネスみたいなものか…

『ギリシャ神話のアマゾーンですか? 根本的には違いますが、まあ、考え方は近いですね』

 恐ろしい…

『女性の遺伝子が非常に強いために起こる現象ですけれども、大河さんが生きていた日本でもあった事ですよ?』

 うっそだー! だって亜人とか地球にゃ居なかったぞ?

『あ、そうでは無くて、お魚です。こ~ぶ~な~釣~りし、か~の~川~♪ で有名な銀ブナです』

 銀ブナ? 鮒? ミミズで釣る、あの鮒?

『そうですね。あの鮒に雄はほぼ発生しません。99.999%雌です。他の種の鮒の雄の精子の刺激によって細胞分裂が始まり、クローンとして生まれてきます。このメカニズムと同じです』

 理解が追い付かない。つまり何か? 鮒は結局のところ、クローンを作ってるって事なのか?

 そしてこの世界の種族も、クローンを身籠る…って事なのか?

『大変良くできました!』

 

 この世界の秘密を知ってしまった…待てよ? と言う事は、この世界は女性上位の世界じゃないのか?

『ええ、もちろんそうです。同種族では普通に交配出来ますが、異種族間では遺伝子的に女性のクローンが産まれるだけです』

 だから人魚さん達は…

『科学的な知識も理解もありませんから、本能的にそれを知っているのでしょうね。そして他種族の雄を求めると…』

 先祖は鮒なのか、人魚さん!? いやまてよ、魔族もエルフもドワーフも同じメカニズムで繁殖するとしたら、もしも異種族とだけ交配を繰り返してしまったら…

『この世界の人種は滅亡して、それ以外の種族の女性ばかりになってしまいますね』

 恐ろしい…考えるだけで恐ろしい…人魚さんは、すでに女性ばっかりだから仕方がないが、出来ればその他の種族には、しっかりと同族とだけで、ごにょごにょして欲しい物だ…

『すでにドワーフメイド衆から狙われてますけどね、大河さんは』

 断固拒否しなければ! 俺は拒否するぞ!

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