第294話  茶番おしまい

「ネス様、太陽神様、月神様…ご降臨頂きまことに有難うございます。この地の民に、どうか先日のお話をもう一度して頂けたらと思い、無理な願いをしてしまった事、お許しいただければと思います」

 それとなく長達に恩着せがましく言うのがポイントですね。

『良い、赦す。この地の民を束ねる者よ、我が水と生命の神、ネスである』 『太陽神である』 『月神である』

「「「「ははーーー!」」」」

 3柱にそう言葉を掛けられた長達は、固い地面に額を打ち付けんばかりに、さらなる平伏をした。

『太陽神、月神よ。この者達に説明を』

『この地の民よ、良く聞くがよい。この地はすでに寿命を迎えようとしておる。そう遠くない未来、生き物のの住めぬ地となろう』

『我、月神を信仰する其方たちを助けんがため、我等3柱で其処なネス様の使徒であるトールヴァルドへ、其方たちを新たなる安住の地へと導いてくれるよう請うたのじゃ』

 ネス、ウサ耳、キツネ耳と話させて…もう一度ネスに戻る。

『トールヴァルドよ。安住の地は見つかったか?』

「は、ネス様。隣国と交渉の末、この地の全ての人の移住を受け入れて頂けることとなりました。また、月神様をお祀りする教会の設立の許可も頂き、建設にも協力いただけることとなりました」

『うむ、トールヴァルドよ、ご苦労であった。さて、太陽神、月神。この後の事は任せて良いな?』

『『は、お任せください、ネス様』』

 これでネスは退場~。だって3体分の会話考えるの疲れるんだってば。

 言ってみれば、これは俺の1人芝居なんだからさ。

 ネスの姿が霞んで行き、柔らかい光の粒子となって、ネスの像に吸い込まれる様にして消えて行った。

『トールヴァルドよ、この地の民の移住先は、アーテリオス神国で合っておるか?』

「はい、太陽神様。アーテリオス神国のべダム首長より確約頂いております」

 カパス老以外の長達が、ちょっとざわついたな…まあ、国交も無いし…あ、国の名前が変わったからかな?

『我の教会も建立されると?』

「はい、月神様。べダム首長より、以下の言葉を頂いております。『初めて踏む慣れぬ他国の地での生活は、移住する民も不安になるであろう。心の拠り所となる月神様を祀る教会があれば、民の心も安んずるであろうから、教会建立には最大限の協力を惜しまない』と、お言葉を頂きました」

 またまた長達が騒めく。これでべダムさんの株も上がるかな? 大量の移住者を押し付けるんだから、それぐらいはしてあげなきゃね。

『うむ、良くやってくれたトールヴァルドよ』

『アーテリオスには、この太陽神からも感謝を伝えておこうぞ』 

 これでこの先の話もしやすくなるだろう。

 いや~相変わらず茶番って疲れるわ…主に精神が。

 ま、これで神様全員退場でも良いかな。

 軽く振りかえったら、長達は何やら感動してる様な喜んでる様な、困惑してる様な、微妙な顔してるけど。


 その後も、軽い内容の会話を交わした後、ネスと同様に太陽神と月神は退場させました。

 この頃には、もう長達の俺を見る目は畏怖の念のこもった目へとなっていた。

 さって、それでは今度は実務のお話しをしましょうかね。

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