第292話 一丁やりますか!
何も無い荒野だが、我が家の面々は逞しくも色々と遊びを見つけて時間を過ごしていた。
この地の村人とファーストコンタクトを取った日から数えて7日目。
待ちに待った、各集落の纏め役さん達との会談の日がやって来た。
身支度を整えた俺は、ナディアと天鬼族3人娘だけを連れて、地下へと続くなだらかな坂を下った。
先導してくれるのは、まだ成人前であろうと思われる少女。
どうやら神の使徒と眷属を迎えるにあたり、汚れなき乙女が応接約に相応しいと選ばれたようだった。
真白な布を、まるでギリシャの女神のように体に纏っている。
天鬼族3人娘と変わらない、とってもスリムで小柄な体形の少女。
緊張しているのか衣装が恥ずかしいのか、頬を赤く染めながら、時折チラチラと振り返っては俺を見ているが、まさかこの俺様の妾の座でも狙ってるのか?
な~んて考えていると、念話であるにも関わらず、不機嫌爆発といった感じのナディアの平坦な声が頭の中に響いた。
『マスター、その推測は当たっていると思います』
本当にそうなんだろうか? 俺的にはあの白い布切れだけを体に巻き付けた衣装が恥ずかしいんだと思うんだがなあ。
『いえ、あの少女の目は、明らかに獲物を狙う鷹の目です』
ん~…まあ、正直もう婚約者増やす気は全く無いから、何とも思わないけどさ。
『そうですか…マスターにその気が無ければ、大丈夫…なのでしょうか?』
大丈夫なんじゃね?
『就寝時には、寝室のをしっかり掛けてくださいませ』
そうしたいけど、絶対に色々ともめるよね? 主に君たちのせいで。
『き、記憶にございません』
ほ~、ふ~ん、へ~…そうか、忘れたか。
なら今夜からは、がっちり鍵かけたうえに、精霊さんに頼んで周囲を守ってもらうことにしよう。
『………ちょっとだけ思い出したかもしれません』
そうか、そうか。全部思い出すまでは、実施するからね~俺の身の安全の為に。
『…あう』
まあ、あんま虐めてやるのも可哀そうだから、この辺で勘弁してやるか。
ナディアを虐めつつ、先導の少女のチラ見を何となく微笑ましく感じながら観察しつつ歩いていると、10人ほどの年嵩のいった方々が、俺たちを出迎えの為に並んでいた。
さてさて、ここからが本番かな。
移住を快く思ってない人も居るだろうし、とりあえずお話しといきますかね。
いや、まあ…別に移住しなくても良いんだけど、乗り掛かった舟だしな。
やるからにはきっちりと全員、アーテリオス神国のべダムさんに任せたい。
そもそもこの土地じゃ未来は拓けないんだし、この地に残りたいって人も居るだろうけど、なんだか見殺しにしたみたいで、俺的にはきっと後悔するだろうしね。
「使徒トールヴァルド様、ようこそお越しくださいました。長くお待たせして申し訳ありません」
全員のまとめ役を自称していたカパス老が、深々と腰を折り、頭を下げた。
それに合わせたかのように、並び立つ方々も頭を下げる。
「いえ、どうかお気になさらず。聖なる女神ネス様、太陽神様、月神様方が、皆様を慮って私に依頼した事。私にとって神々の依頼は、最も優先せねばならぬことです。ですので、私への気遣いは不要です。さあ、皆様とこの地に住む人々の未来の話をしましょう」
最初っから、飛ばし気味に言葉を並べ立ててみました。
さあ、一丁やりますか!
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