第282話  夢じゃ無かった

 夢は、起きてから時間が経つと、だんだんとその記憶は薄れてゆくもの…儚いもの…

 

 俺は、船室の小窓から漏れる光の中目覚めた。

 昨夜は、酷い倦怠感と頭痛が襲ってきたので、さっさとベッドに横になった。

 特に横になってから何かをしていた記憶も無く、すぐに寝入ったはずだ。

 そんな日は、今まであまり夢見が良くなかった。

 だけど、起きたらそんな悪い夢の記憶は徐々に薄れていき、昼ぐらいにはすっかりと忘れているはずだった。

 そう…日々の戦いの中、疲弊した俺の魂が、精神が、心が見せた、それは偽りの世界…それが夢の世界…

 いつか俺達もあの青い空の下、戦いの無い平和な暮らしを…君と…


 って…


 忘れるかーーーー!! あんな強烈な夢を忘れられるわきゃねーだろーが!!

 何かいい感じの物語の冒頭風に語ってみたけど、現実逃避出来なかったよ!!

 俺の夢の中なのか、それとも俺の魂を引っ張っていったのか知らんけど、管理局長と長々話しちまった!

 あれは、草壁家の姉妹じゃないけど、夢だけど…夢じゃなかった! って表現が、まったくもって正しい現実だったぞ!

 やっぱ、管理局は何かおかしい。絶対にあの局長はタヌキだ。

 何かを隠して、俺を何処かで何かさせようと誘導しようとしているに違いない。

 くっそ…この思考も読まれているのか? いや、並列思考はリアルタイムで覗き見る事が出来ないだけで、管理局を通せば読めるとかサラは言ってたな…ならば、今さら俺がどう考えて足掻こうと筒抜けって事か。

 

 だが、局長が言ってた事がどこまで正しいかは分からんけど、新しい大陸が出来ても問題は…特に出ない感じだな。

 人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになる世界も有るんだし…アニメだけど…新天地があっても大丈夫か。

 コロンブスの大陸発見の様に、ヨーロッパ側からだけの視点で語られる大陸発見じゃ無く、本当に真っ新な新大陸なら、先住民族との争いも起きないだろうし、それはそれでアリか?

 そもそもコロンブスが新大陸発見とか言ってるけど、発見以前からアメリカには先住民族がいたんだから、新大陸到達ぐらいが正しい表現だろうに、未だに教科書には発見とか書いてたもんな。笑っちゃうぜ。

 って、世界史はどうでもいい。

 このままだと、そう遠くない未来に俺達の子孫の生活が厳しくなる可能性があるってのが問題だ。

 う~~~ん…別に王様にはなりたいないけど分けじゃないけど、新大陸の創造はしても良いかなあ…


 そんな事をベッドで上半身だけ起こして、ぼ~っと考えていると、何やら布団の中の股間あたりに固い物がある事に気付いた。

 いや、朝だからって違うからな! 変な想像すんなよ!?

 固い棒状の物と、球状の物が…って、マジで違うからな!

 布団をめくってみると、賞状を入れる様な大きさの筒が1本と、ソフトボールぐらいの虹色に輝く球が2個。

 めっちゃ誤解されるような配置で俺の股間付近に置かれていた。

 コレ…局長の仕業だろ…絶対に面白がっておいたに違いない。

 やはりアレは夢では無かったという事だな。

 先日、サラが転送したように、局長もコレを転送してきたって事だろう…転送する場所を考えろや!

 あ、考えたからここなのか? もし俺が気付く前に婚約者~ずの…いや、我が家の誰かに見られて誤解されたら、どうしてくれんだ! クッソ局長め! いつかギッタンギッタンにしてやる!


『…ん』

 さて、そんでコレは一体なんぞや?

『…さん』

 棒状のは? お、捻ったら先端からドリルのような物が!

『大河さ~ん…』

 ボールはっと…

『大河さ~ん…聞こえてるのに無視しないでくださいよぉ…』

 何だよ煩いな…今面白いとこなんだから、邪魔すんなよな。

『あ、頭が、割れる様に痛いんですよ! 助けてください! きっとカズムの呪いです!』

 違うぞ~カズムじゃないぞ~管理局長の呪いだぞ~!

『な、何ですと!? 何で大河さんがそんな事知ってるんですか?』

 あ、昨夜、話しをしたから。

『What's !?』

 あ、2~3時間で治まるらしいから、午前中は寝とけ。後で詳しく話しをしてやるから。

『…あい。そうしまふ』


 さてと…ポンコツは午前中動けないみたいだから、一応皆に説明しとくかね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る