第283話  大いなる野(欲)望

 朝食が終わった頃合いを見計らって、昨夜の出来事を大々的に発表することにした。

 っと言っても、管理局長=神様って感じで話すので、多分誰も拒否反応は示さないはずだけど。


「は~い注目! 昨夜、ネス様より重要なお告げがありました」

 食後のお茶の時間(最近、何かとこの時間が発表のタイミングになるなあ…)に、俺は話を切り出した。

 まあ、ネス様の…と言ったあたりで、全員が注目してくれてるんだけど。

「我々が住んでいるこの地とは別に、大きな島を創らないかというお告げです」

 全員がびっくりしてるな…さすがの母さんも、目がまん丸だ。

「というのも、この大地は意外と人が住めない土地が多く、このまま人口が増え続ければ、問題が多発する可能性が高いそうです。なので、もっと人が住みやすい大地を創り、そこを人の新たな生存権としたらどうかと言われたんです」

 新たな大地…真っ新で誰の手もついていない大地…つまりは見つけたもんの所有物。

 まあ、一般的にはそう考えられてるんだから、神様から一番最初に新たな土地の存在を知らされた俺が、当然その大地の所有者となると考えたんだろうな。

 大地の所有者=王様 って、誰もが考えるのは、まあ…仕方ないかな。

 俺はそんな物の管理なんてしたくないがな。

「まだ大地は生まれていません。少し先になると思うけど、ネス様の眷属であるナディアとサラと、この俺とでネス様の導きに従って、大海原に3人で行くことになります。これは決定事項ですので、誰も同行はできません」

 あ、黙ってはいるけど…メリル筆頭にめっちゃほっぺた膨らんだ。

 不満山盛りだけど、ネス様の意向だから我慢してるって事かな? ま、いいや。

「その時が来たら、またお知らせします。ちなみに、俺は新しい大陸の所有権を主張したり、そこで国を興したりはしません。ネス様の眷属なので、あのネス湖の畔でひっそりとネス様を祀りながら生きていきます」

 マチルダとイネスは露骨に不満顔だな…権力欲があるのか?

 メリルは、元々国の権力のほぼトップだからか、あんまり気にしてない感じだな。権力は、もうお腹一杯なのかもしれないな。

 ミルシェとミレーラは、ふ~~んって感じ。王様とか興味なさそうだな。

 父さんと母さん、コルネちゃんは…それが? って顔してるな。今の生活でも十分満足なんだろうな。

 ユズカ…お前はユズキと一緒にいられるなら、周辺環境がどうでも気にしないみたいだな…まあ、いいけど。

 ふむ…皆、一応納得してくれたって事でいいのかな?

「そういうわけで、アルテアン家は新大陸に関する雑事は増えるでしょうが、基本的には何も変わらないと思ってください。幾らかの利権やお金などは入ってくるかもしれません。その時は、きちんと皆さんにも利益があるようにします」

 ま、利益ったって現在の我が家の資産からしたら、いらんのだけど…

 すでに前世での生涯収入の数倍稼いでるし、これ以上あったって使い道ないからなあ…。

 ま、こんなもんかなぁ。納得できようと出来なかろうと、俺の決定は絶対だ! この件に関しては、俺は独裁者になる! 母さんに怒られない限りは…

「さて、後はこの地の問題ですが、まだ各地の集落の長が集まってません。まだ少し時間がかかるかと思いますので、連絡があるまでは当面の間、自由行動とします。あまりホワイト・オルター号から離れないようにしてください。まあ…大抵の相手は皆の敵じゃないだろうけど…それでは絡事項は以上です。解散」


『大河さん。新大陸発見の際は、ぜひともこの私を新大陸に派遣してください!』

 ん? サラは、何でそんなとこに行きたがるんだ?

 ってか頭痛は治ったのか?

『大分治まってきました…そんな事より、新大陸に人類の理想郷を創るのです!』

 ふむ…人が幸せに暮らせる国か。しかし、それは果てしなく困難な道のりの先にあるものだぞ? 一体、どれほどの時間がかかる事か…

『え? 大して時間はいりませんよ?』

 いやいや、衣食住だけとっても、充実させるにはもの凄く大変な道のりだと思うぞ? 開拓だぞ?

『何を言ってるんですか! そんなのは大河さんが精霊さんに頼んで、ちゃちゃっとやってください』

 ああ、まあ…協力はするけど…

『そして移住者は、美少年限定でいきましょう! 女は私だけで十分です! 青い果実を、好きな時に好きなだけ食べ放題な国を創るんです!』

 おま! それは人類ではなく、お前の理想郷だろう!

『そう、その名も逆ハー美少年パライソ・サラ女王国です! 大いなる野望です!』

 欲望駄々洩れかよ! ってか欲望しかねーじゃねーか! 却下だ却下!

 そもそも、これって管理局長絡みの仕事だぞ? お前、そんな事して丈夫なのか?

『…忘れてたでござる…やぶぁいでござる…私の野望が…』

 そうだろうよ。わかったら大人しくしとけ。

『……へ~い…』

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