第250話  いのちだいじに!

「はい、では偵察に出ていた妖精さんの報告によりますと、(仮称)ミニ恐怖の大王は元は死体であったそうです。何らかの方法で恐怖の大王が操っていると考えられます」

「トール、その操っている方法ってのは分かってるのか?」

「うん、父さん。実際に見てないから何とも言えないけど…予想はしてる。まだ断定できないんで何とも言えない」

 俺がそう言うと、父さんは難しい顔をした後、

「そうか…それでも相手は元々死体なんだろ? 普通に切って倒せるのか?」

 そこはまだ不確定なんだけど…

「多分、切っても倒せない可能性がある。だから当初にたてた作戦を変更します」

 お、みんな真剣に聞いてくれてるな?

「(仮称)ミニ恐怖の大王に関して、ナディアと天鬼族3人娘に任せようと思ってましたが、俺以外の全員で当たってもらいます」

 ここまでいいかな?

「チーム編成は、当初の予定と同じです。まず、父さんは斬って斬って斬りまくってください。コルネちゃんは、父さんの斬った敵を火の魔法でしっかりと焼いてね」

「うむ。コルネリア、頼んだぞ」「は~い、おとうさん、おにいちゃん!」

 2人共、よいお返事です。

「ナディア、2人のサポートよろしく」

「了解しました、マスター」


 マジで頼むよ? 父さんはどうでもいいけど、コルネちゃんが傷ついたら、俺は、俺は…泣いちゃうよ? 全部終わったら、身体の隅々まで確認しなくちゃ…コルネちゃんを! 傷ついたら、お兄ちゃんがお嫁にもらってあげるからね!

『それは却下です、マスター』

 ぐ…会話と念話を使い分けるの上手くなったな…ナディアよ…

『残念な思考…いえ、性癖は変わりませんね、マスター…』  

 ま、それはいいとして…


「と言う事は、トール様。私達もですか?」

「うん。メリル達も同じ。強い火の魔法がみんなは使えないから、油を掛けて燃やしちゃって。もしもの時のためにと、カーゴルームにいっぱい油を積んできてるから、付近で降ろそう。たっぷり油を掛けたら、イネスのクリムゾン・ストライクなら、離れた所からでも火の魔法を飛ばして着火は出来ると思う」

『はい!』

「アーデ達は、メリルのチームと離れない様にして、サポートよろしく」

『はい!』

 みんな返事は良いんだよなあ…返事だけは…不安だ。


「ユズキとユズカは、がっつり敵さんを足止めして動きを止めたら、油を撒いてまわって。2人には着火方法が無いから、無理はしない様に。着火は他の人に任せて」

「はい!」「は~い!」

 こいつらが…ってか、ユズカが一番心配なんだけどなあ。暴走しなきゃいいけど。

「心配なので、妖精さんも何人かついて行ってあげてね」

 ビシッ! と妖精さん敬礼!

「ちょ! 私達は大丈夫ですよ~!」

 お前が一番心配なんだよ、ユズカ!


「偵察の結果、恐怖の大王周辺の空気も土地も水も、全てが腐ってるというか弱い瘴気が漂ってます。神具にはそういった物を無効にする効果があるけど、父さんは生身だから絶対に無理はしないで。出来るだけナディアの結界の中にいて、攻撃の瞬間だけ出る様にしてね。その時も出来るだけ呼吸は控えて。あ、あとタオルで口と鼻を塞ぐようにしといて。少しは予防になるから」

「うむ、わかった。ナディア様、お願いします」「お任せください」

 マジで頼むぞ、ナディアよ。

「瘴気…腐海…○蟲…森へお帰り」

 そしてユズカ、いらん想像をすな! 森なんて無いからな!

 キッと睨むと、ユズカは黙ったけど、むぷぷ…って笑ってるし。

  こいつ、本当に大丈夫だろうか? 

 頼むぞ、ユズキ。しっかり手綱握っててくれよ…ってか、馬なのはユズキだから、手綱を握ってるのユズカか…ま、いっか。


「いい、みんな。この土地は乾燥してるから、良く燃えるはずだし、まだ瘴気が漂う量も少ない。恐怖の大王も、完全には力を取り戻してないはずだから、今が絶好の機会。決して油断せず、全員で生きて帰りましょう」

 急に真剣な顔になったけど、みんな気合入ったかな?

 強い装備を手に入れて、どこか浮かれてたから、変な所で足元を掬われるかもしれないからな。

「では、御唱和ください。いのちだいじに!」

『いのちだいじに!』

 うんうん。


「現在、敵に向けて微速で進攻中。あと少しで敵が見えて来るはずです。目視できる距離まで近づいたら、俺達は下船。各自ブリーフィングの通りにチームで別れて散開。しかる後、行動を開始してください。ホワイト・オルター号は、下船と油を降ろした後、結界を張って上空で待機。各自、決戦に備えて最終準備と確認をしておいて下さい。解散!」

 うん、みんな走って食堂出て行ったけど…おトイレ? 変身したら出来ないもんね。


 さて、では俺も例のブツを準備しますか。抜かりなく、お部屋にちゃんと用意してます。

 もうリュックサックに詰め込んで、いつでも持ち出し出来る状態。

 あとは…俺も、トイレいっとこ…

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