第215話 だめです!
取りあえず、難民の皆様の住居と食料は問題なしっと。
実際には難民じゃなく、無断で男爵領から逃げて来たわけなんだが。
この国の法律では、実は領民は勝手に他領へのお引越しは認められていないのだ。
領内での引っ越しや、行商や仕事で行き来する分には問題ないのだが、居宅を移るのであれば領主へ申請が必要。
これは日本的に言えば、住民税を払う都道府県や市町村が変わるって事なんで、ちゃんと届けてくださいよって事。
悪い領主だったら税収が減っちゃうんで、他領への転居を認めないとか、他領への嫁入りは断固禁ず! とかも居るのは確かだ。
現代日本じゃ考えられない事だが、封建社会ではごく普通の事でもある。
まあ、だから日本でも居住移転の自由なんてものが法律に明記されてるんだけどね。
勝手に他領へと逃げ出した者は、問題の火種になるって事で、簡単には受け入れてもらえなかったりするのだ。
だからって訳じゃ無いけど、わざわざ陛下に難民の転領の許可を貰ったのだ。
これで大手を振って、彼等を父さんと俺の領に移せるってもんよ。
クソ男爵が文句を言って来ても、国王陛下の許可があるんだから、全て門前払いできる。
まあ、文句言いに来る事が出来るかどうかも怪しい…ってか、物理的に首が繋がってればいいね、豚君。
え~っと、ここでやる事は終わったかな? んじゃ~俺はお家に帰りますよ?
だって、また議会のために王都にとんぼ返りしなきゃならないし、難民関係も父さんに報告しなきゃ駄目だし、マジで忙しいんだって!
あ、婚約者~ずの装備は、王都から帰ってからゆっくり創ろう…今の変なテンションで創造したら、何やら怪しい物が出来ちゃいそうで怖いから。
帰ろうと思い蒸気自動車に乗り込むと、難民の皆さんがずらっと整列して見送ってくれた。さすがに2000人のお見送りは、ちょっとびびる。
見送りの人達を見たサラは、妙に鼻息荒くちょいキモかったけど。
家に戻った俺は軽く食事をした後、執務室で父さんに通信の呪法具を使って、難民対応の報告をすべく連絡を入れた。
『………って感じの対応しといたよ。後は父さんが帰って来てから、街や村に人員を割り振るなり新たな村を造るなりしたらいいと思う。まあ、仕事は幾らでもあるから、どうにかなると思う。』
『おお、助かったぞ。ところでその地下都市なんだが、どれぐらいもつんだ?』
『耐用年数って事なら…まあ、歳自体は100年200年は十分にもつと思うよ。ただ、光の鉱石が何時まで光るかは分からないから、それが問題と言えば問題だけど…』
『ふむ…その問題さえ何とかなる様なら、新しく造る工房は地下でもいいな。でっかい地下工房の上に村を造るとか』
『ほっほ~! それは良い案だと思う! 次の村はその方向で考えてみようよ!』
父さん、なかなかのアイデアマンだな。そうだよ、現代地球だって地下を色々と有効活用してたじゃないか!
何か起きた時のシェルター代わりにもなるし、是非やってみたいな。
『うむ。で、トールは何時こっちに来るんだ?』
『あ~明日の夜か、明後日の朝には到着すると思う…』
『そうか、気を付けてな』
ってなやり取りを父さんとして、その本日の業務は全て終了。
本当、良く働いた一日でした…主に精霊さんが…
明日はまた空の旅。さっさと部屋戻って寝るべ…もうねぶい…。
自室の扉を開けて部屋に入ると、何やら気配が…まさか、サラか!?
「「「「「トールさま、かまってください!」」」」」
婚約者~ずが、ベッドに転がってました。
肌寒いこの季節だというのに、下着が透ける様な薄い寝間着で。
母さんが『かまってあげなさい』と、公式な認可を出したもんで、堂々と侵入してきやがった!
「いや…今日は、マジで疲れてるんで…」
「「「「「だめです!」」」」」
「いや…本当に堪忍して…明日にはまた王都だし…眠たい」
「「「「「だったら、一緒に寝ましょう!」」」」」
何で声が揃ってるんだよ…練習してきただろ!? そうだろ?
もういいや…抵抗は無駄みたいだし、諦めよう。
「う、うん…それじゃ、一緒に寝よう…」
「「「「「やったー!おやすみなさ~い!」」」」」
健康な男子がこの状態で落ち着いて寝られるわけないだろ…
確かに俺のベッドはデカいけど…色々と柔らかかったり良い香りに包まれたりしたら、モンモンとして寝つけるわけないだろ!
正式に結婚するまで、あと1年…こんな日が続くのか?
手を出しても良いとは、母さん言ってたけど、俺的にはそれはヤダ。
《どうとでもなれ、どんな大嵐の日でも、時間は経つ。By シェイクスピア》
上手い事いうよね…詩人は…
くっそー! 明日はぜってーに1人で王都まで飛んで行くからな!
そんで、誰にも邪魔されずに、空の上でがっつり寝てやる!
俺にも安らぎをぷりーーーーーず!
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