第214話 地下都市完成!
もの凄い音と振動は、少し離れたネリア街の東2番村にまで響き渡った。
もちろん村の周囲の天幕や幕舎に居る難民の皆さんにも聞こえたわけで…え~つまりは見物人で囲まれてしまったというわけ。
そんあ見物人の中には、あのクソ男爵領の街で見た兵達の隊長さんも居た。
精霊建設による工事は順調で、ガンガン丘の下に向かって穴を掘り続けている。
ちゃんと区画ごとに排気用の煙突が繋がり、地下都市と言えど綺麗な空気を吸うことが出来る様になっている。
各家庭から出るゴミや排泄物は、さらに地下深くまで掘った竪穴の中に落ちて行く仕組みで、臭いは一際高い煙突で外へ流す事により、地下都市に影響が出ないように工夫されている。
あ、各部屋に明かりが必要だな…地下なんだから、このままじゃ真っ暗だ…どうすべ?
ん? 見慣れない精霊さんがふよふよと…いや、どっかで見た様な…あ! 鉱石の精霊さん、久しぶりだねぇ!
今日はどうしたのかな? ほう、光る鉱石を見つけたと? まさか、ウランとかじゃあるまいな? それだと危険だぞ。
え、光の魔道具にも引けを取らない光量がある鉱石で、人体に影響なし? 熱も持たないのか…LEDみたいな感じかな?
どこにあったの? え、この下…って、工事してるこの現場で発見したって事!? なんてご都合主義!
どうやって使ったらいいの、それ? ほうほう、エネルギーを注げばいいと。エネルギー無くなるまで光り続けるから、眩しかったら布でも掛けとけと…なるほど、素晴らしい!
では、鉱石の精霊さんは、その光る石を俺の元に集めて来てください。
エネルギー注入を終えた鉱石は、各部屋と廊下にどんどん置いて行ってね。
げっへっへ…俺の熱いエネルギーをお前に注入してやるぜ! そして地下を明るく照らしやがれ!
うん、下品でごめん…でもこれで地下都市の生活の問題は解決…してなかった!
まだ水もいるじゃん! 何、水の精霊さん…水脈近くにあるから、捻じ曲げてこの丘の下に来るようにしてるって? すげえ!
んじゃ、各家庭に水道設置してくれないかなぁ、土の精霊さん…あ、オッケーなのね…流石です、親方。
丘の上で目を閉じ無言で両手を広げて突っ立ってる俺の真下で、ものすごい勢いで地下都市が出来上がって行く。
周囲の人から見たら、何してるのか分からないだろうけどね。
工事開始から2時間ほど過ぎた頃、精霊さんがいい汗かいたと言わんばかりの仕草で、俺の目の前にぽっかり開いた穴から出て来た。
どうなったん? え、もう完成したの!? 取りあえず地下5階、1階層で200戸造ったって!?
早すぎでしょう! 強度とか大丈夫なの? はあ、完璧っすか…了解です。
確かに周囲には気が付くと煙突がニョキニョキと地面から空へと伸びて、何本も立ってた。
さて、一応は確認が必要だけど…俺だけじゃ何だから、父さんとこの兵士さんと、難民を護衛してきてくれた男爵領の兵の隊長さん、あとは難民代表の…誰か名前はしらんけど、おっさんを引き連れ、中へと入ります。
階段を降りると、四方に伸びる廊下があって、左右にずらっと扉が付いていた。
目の前の扉を開けてみると、そこには土色をしているけど、完璧な間取りと設備のお部屋が。
一緒に降りて来た面々も唖然としていました。
「し…子爵様…あのほんの少しの時間でコレを造り上げたのですか…?」
うん、父さんとこの兵隊さんなら、俺の事を知っている人も多いからそんなに驚かないけど、俺の事を良く知らない難民代表と男爵領の兵の隊長さんだったら、びっくりするかもね。
「そうだよ。魔法で造った地下都市。換気や排気は完璧だし、そこに置いてある光る鉱石で地下でも明るいでしょう? 光を消す事は出来ないから、寝る時は布でも掛けてね。あと、台所にあるパイプの取っ手みたいなのを捻ると、綺麗なお水が出る様になってるからね。あ、トイレもちゃんとついてるからね」
俺の説明を聞いて、一同さらに唖然。
「さあ、外はまだまだ夜は寒いんだから、順次この仮住まいへ移って。独身用に1部屋、カップルには2部屋、子供のいる家庭には、3部屋4部屋の住居って感じに造ってるんで、きちんと割り振りしてね。任せるんで。ちなみに家賃は要らない。当分、税金も免除。配給に関しても、領の備蓄用の食料庫を全部解放して支援しますから、安心してください」
難民代表さん、いきなり涙を流しながら、俺の手を取って、
「有難うございます! 男爵様の領に居る時は、日々の生活にも困る者が溢れておりました…本当に何と感謝したらいいか…」
男爵領兵だった隊長さんも、
「あ、あの時の子爵様の言葉を信じて良かった…ありがとうございます!」
目に涙が薄っすら浮かんでた…ふふん、感謝しなさい! でも、何でも無料ってわけじゃないよ?
俺は清廉潔白な聖人様じゃない。何でもかんでも無償で提供したり奉仕したりする訳じゃ無いぞ! 対価として、これからしっかり働いてもらうからな。
「いえいえ、落ち着いたら徐々に仕事をしていただければ結構です。我が領には仕事は幾らでもあります。後日、その辺りに詳しい者を派遣しますので、それまで身体を休めてください。全てはネス様の御心のままに…」
「ははーーーー!!」
これで大幅な労働力アップと、敬虔なるネス教信者がまた増えたな。
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