第211話  本当かよ…

 どうにかこうにか王城を脱出し、我が家の一行は、とりあえず久々に父さんが王都にもらった屋敷へと顔を出しに来た。

 短い間だったけど、ユズキとユズカも働いてたんで顔見知りも居るだろうし、いくら別邸と言えど執事さんとメイドさんだけに任すのも申し訳ないので、滞在中は2人もお手伝いする事になっている。

 

 さて、やって来ましたアルテアン伯爵王都別邸。

 うん、相変わらずでっけえなあ…

 今回は、父さん、母さん、コルネちゃん、ナディアの4人は、ここにちょっとの間お泊り。もうすぐ年始恒例の貴民・勲民による議会に参加するのと、納税のためのあれやこれやがあるからだ。


 それじゃ俺は? と言うと、実は一旦お家に帰ります。

 屋敷のドワーフメイドさんから、通信の呪法具に緊急連絡が入ったからです。

 別に緊急って程でも無かったんだけど、例の腐れ男爵領からの難民が数日中に到着するらしいと、周辺の村から連絡が入ったので、その対応がメイドさんだけでは出来ないって泣かれちゃったのです。

 そりゃ、領内の政務を取り仕切る人間が、全員王都にいるんだから、そうなるな。

 でも見た目ロリっ娘のドワーフメイドさんの泣き顔…ちょっと嗜虐心が…

 いいやダメダメ! 俺は紳士なのだ!

 涙する幼げなメイドさんを放っておくわけにはいかない!

 すぐにでも帰って、この辣腕をふるい問題を解決してしんぜようぞ!


『紳士…ねぇ…』

 何か言ったか、サラ?

『変態なら目の前に居ますが…』

 だ~れが変態か! よく見ろ、この澄んだ目を! 俺はジェントルマンであ~る!

『…ただの、ロリコンにしか見えませんなぁ』

 馬鹿者! もっとよく見ろ! 違って見えるはずだ!

『はっ! 確かに違って見えてきました!』

 だろう? そうとも、よく見るが良い!

『はい! むっつりロリ・シスコンのドM紳士がここに居ます!』

 ……眼鏡買ってあげようか?

『大丈夫です! 100m先のDTショタの姿まではっきり見えますから!』

 お前こそ、筋金入りの変態だよ!



 さてさて、王都の父さんの別邸には本当に顔出しだけして、父さん達とはここから別行動。まずは領地に戻りましょう!

「でもメリルさま…あの屋敷は義父様のものでは…」

「何を言ってるの、ミレーラ。将来はトール様の…」

「えっ? そうしたら、私達もここに住むんですか?」

「メリル様、ここでは領の政務が…」

「あの庭なら、思い切った鍛錬が出来そうだ!」

 うむ…俺の後ろで何やら婚約者~ずが不穏な話をしているが、聞こえないふりをしよう。

「でもその為には、まずは例の恐怖の大王とやらとの戦いに勝利しなくては!」「「「「はい!」」」」

 チラッ

「そしてその為に必要なのは、女神ネス様の神具では無いでしょうか?」

「「「「その通りです!」」」」

 チラッチラッ

「きっとトール様は、ネス様にすでにお願いをしてくれているはずです!」「「「「そうでしょうとも!」」」」

 チラッチラッチラッ

「なにしろ、私達5人は、愛するトールヴァルド様を支える為、共に戦いの地へと赴くのですから!」

「「「「愛するトールヴァルド様のため!」」」」

 チラッチラッチラッチラッ

「しかし、神具を賜ったとしても、練習も無しに戦えるとも思えません…」

「「「「ですよねぇ…」」」」

 チラッチラッチラッチラッチラッ

 何で、俺をチラチラ見るかなぁ…

「ですから、もうそろそろネス様より賜れるはずです、私達の神具を!」

「「「「おぉー!」」」

 ジィーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

 婚約者~ずの視線が怖い…聞こえない振りは、やっぱまずいだろうなあ…


「あ~、今はネス様が神具を創ってくれてる最中だと思うよ…近々、ネス様よりお言葉を頂けると思うから…」

「「「「「本当ですか!?」」」」」

「あ、う…うん。もう少し待っててね。でも、ネス様の巫女のコルネちゃんや、ネス様よりご指名のあったユズキやユズカと違って、みんなの適正は低いから、あまり強力な物は賜れないと思うけど…それでも怒っちゃだめだよ?」

 先に手を打っておかねば、あとでゴチャゴチャ言われたらたまらん。

「「「「「もちろんです!」」」」」

 …めっちゃ声が揃ってるな…こりゃマジで何か創らにゃ、血の雨が降る…俺の…


「子爵様、この際だから、美少女戦隊♥ハーレム5とかどうです?」

 ユズカ、その名前だけは絶対にダメだ! その名前を叫ばれるたびに、俺の精神値がガシガシ削られる事間違いなしだ!

「普通に、トールヴァルド親衛隊じゃ駄目なんですか?」

 ユズキよ…何故に俺の名前を入れようとするのだ?

 それなら女神ネス親衛隊でいいのではないか?

「んじゃ、愛天〇伝説ウェディングピーチ! 子爵様の婚約者にぴったり!」

 おま…何故にそんな古い超マニアックな作品を知ってるんだ! 

 そもそも、名前なんて本当に必要なのか?

「「だって、面白そうだから(だもん)!」」

 クソッ! この夫婦は… 

 何? 無いよりもあった方が団結力が上がる? 本当かよ……


 もういい、名前は俺が適当に考えるから、ほっといてくれ! 

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