第210話  酔っぱらい共

 結局、俺は陛下と内務大臣と父さんの飲み会に付き合わされた…一応、この国の法律上は成人扱いだけどさ。


「いいじゃねぇ~かよぉ~! 内務大臣してくれよぉ~! お前ぇ~義理の父親のいう事がぁ~聞けぇ~ねぇ~ってぇ~のぉかぁ~?」

「子爵~せめて補佐になってもくれても良いじゃないですかぁ~! そんなに拒否るなら~素っ裸にしてメイド部屋に放り込みますよぉ~?」

「ト~ルよぉ~! 最近、コルネが冷たいんだよ~! お父さん、ウザいって言うんだよ~! 俺は一体どうしたらいいんだよぉ~!」


 がーーーーーー!! この酔っぱらい共めがー!!

 もうね、酔っ払いは嫌いだ。確かに酒は百薬の長だよ。でもさ、酒は諸悪の基って逆の意味の諺もあるんだよ

 そもそも、酒は飲んでも飲まれるな、ともいうだろ~?

 ワインのボトルを3人で6本も空けりゃ、そりゃ百薬じゃなくて諸悪の基だよ…介抱する方の身にもなって欲しい。

 ぐでんぐでんに酔っぱらったおっさんの相手なんて疲れるだけだ!

 この夜はまさにサバト! 魔女の集会! って様相だった。


 最後には、王妃様と我がママンが額に青筋何本も浮かべて、陛下と父さんの首根っこ掴んで引きずって行ってくれたけど、あのまま朝までコースだったら、この部屋の高級な絨毯の上に、間違いなくもんじゃ焼きの山が出来てたと思う。

 ちなみに内務大臣は、メイド衆が執務室に放り込んだらしい。


 うん、真の魔女は奥様でした…なんかオチがついたな…もう寝るべ。

  

 俺に宛がわれた部屋に戻って、全ての出入り口に鍵をかけ、誰も潜んでいない事を確認し、腰にベルトがあるのを確認したんで、ベットに飛び込んで、眠気のまま瞼を閉じました。


 明けて翌朝。うん、昨晩は肉食系女子もおとなしかった様で、ほっとした。

 まさか王城内で乱痴気騒ぎを起こすわけにもいかないし、みんなも自制してくれた様だ…って、普通の淑女ならそんな事しないだろうけど…うちの女性陣は、絶対に普通じゃないからなあ…帰った後が怖い…………… 

 あ!? しまった、アレ忘れてた!

 落ち着いたら、絶対に言ってくる! 婚約者~ずは、絶対に忘れない! 

 帰るまでにせめて構想だけでも練っておかねば!


 お着換えを済ませ、身だしなみを整えた俺は、学校の教室ぐらいはあるだろう食堂にやって来た。

 うむ、真っ白なテーブルクロス、見栄えも香も控えめだが、生き生きとした生け花…やたらと落ち着く。

 それに並ぶ食器類も、清潔そうな純白の皿や綺麗に磨き抜かれた銀のフォークやナイフにスプーンといった食器類。

 こうだよな、これこそが真の金持ちだよな!

 やったらめったら豪華で派手で見るからに高そうな食器類と、絢爛豪華だが料理の香りを邪魔する匂いを振りまく生け花なんて、見栄を張りたいだけの成金趣味だよな!

 こう何ていうか、お持て成しの心ってもんが分かってる食堂だよ…まあ、晩餐会と朝食を比べるのも変だけど。

 俺のポリシーとして、食器類やクロスや生け花なんて物は、料理を引き立たせるための名脇役であって欲しい。

 自己主張はしないが、きらりと光る演技を見せてくれる、そう…あの時代劇の名悪役・菅貫太郎氏の様に!

 うんうん…と食堂入り口にて仁王立ちで頷いていると、王家一同とアルテアン全員集合して、俺を気味悪そうに見てた。

「トールヴァルド様…お気分でも優れませんの?」

「え、いや…そうじゃなくて、綺麗な食堂だな~って、見てただけ…あは、あは…あはははは…」

 うん、何も無かった事にしよう…


 王家一同と我が家は、一応将来の親戚筋。

 ってか、すでにめっちゃ仲が良いので、朝食も非公式だからという事もあり、最低限のマナーは守ってはいるが、談笑しつつ楽しく終える事が出来た。

 特に、女性陣は何でか無茶苦茶仲が良くなってる気がする…この国の真のドンは女性だよ、間違いなく。


 食後に軽く、クソ男爵に関しての打ち合わせを終え、我が家一行は早々にお暇する事にした。

 陛下も内務大臣のおっさんも、今日中にも男爵とその関連する者を一斉摘発に出発するとの事で、お邪魔しちゃ悪いしね。

 後の事は任せましたよ、陛下! では、さらばじゃ!


 はあ、帰ったらやっとお家でゆっくり出来るなあ…周辺を飛び回る蠅も叩き潰されるだろうし。

『何を言ってるんですか、大河さん。最大の問題が残ってるでしょう?』

 何だよ、サラ。もう終わっただろ。

『いえいえ、ですから例の婚約者~ずの装備の事ですよ。良いんですか? すごく楽しみにしてると思いますよ?』

 あ、そうだ! 今朝、それをどうにかしなきゃって考えてたんだ!

『もう、適当に何か創ればいいじゃないですか。マジカル★美少女戦隊 婚約者~ず! とか』

 やめれー! 実質そうだけど、そうだけども! そのネーミングは、やめーーーい!

『それじゃ、婚約者~ずにド突き回される前に、何か考えてくださいよ? 忠告はしましたからね?』

 お、おう…帰って温泉でも浸かりながら考えるよ…  

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