第205話 朝起きて…
昨夜は、さっさと寝て疲れを取るつもりだったのに…ぜっんぜん疲れが取れなかった! 原因はわかってる…うん、約束だし仕方ない…事あるかーーー!
キスするのは仕方ない…にしても、せいぜいご褒美なんだから1回ずつと思うよな、普通は?
なんだよ、みんなして身体だけじゃなく顔まで押さえ付けて、何回も何回も唇がたらこになるまでキスっておかしいだろ!
結局、全員と4回転しちゃったよ…どんなプレイだよ…
そもそもあいつらって俺の眷属ってか創造物だよな? 何で俺のいう事きいてくれないんだよ…学習型思考するホムンクルス的な生命体のつもりで創ったけど、個性化しすぎじゃね?
まあ嫌われてるんじゃないし、重要な指示にはちゃんと従うから、良いと言えば良いんだけどなぁ…。
サラは、何言っても聞かないから、もう諦めてるけど。
「トール様、おはようございます」
寝室を出ると、メリルがちょうど歩いていた? あれ…メリルの部屋から食堂へは反対方向じゃなかったっけ?
「ああ…メリル、おはよう」
にっこりと微笑みながら挨拶をすると、
「昨晩は、ネス様の眷属方とどの様なお話合いでしたのかしら? よろしければ教えて頂けません事?」
ギクッ! 何故にその様な事を…ってか、話しあいって何だ? そんな言い訳で婚約者~ずを遠ざけたのか!?
「私も聞きたいです、トールさま」
「…わたしも…」
やばい! 絶対に何か勘付いてる! いや、嗅ぎ付けてる!
「あ、ああ…うん。この先の領地運営に関して色々とね…あははははは」
この時、俺は背後を確認すべきだった。もう後の祭りだけど。
「トールヴァルド様、政策に関する事でしたら、私もお聞きして行かねばなりませんね」
「そうですね。新たな政策にあたり、良からぬ事を企む者が居ないとも限りません。警備計画の見直しも必要ですので」
マチルダ、イネス…これ絶対にまずい…
「いや…その…ですね、これはネス様との話であって、口外しては…」
だめだ、今の俺ってめっちゃ怪しい…
「ところでトール様。ナディアとアーム、アーデ、アーフェンが、トール様の唇はとても柔らかかったと話しておりましたが、一体どういう事でしょうか?」
あ~い~つ~ら~~~~~!!
「ファーストキスだってナディアさま言ってましたよね、ミレーラちゃん?」
「はい、わたしもお聞きしました…とても熱かったって…」
う~~~~わ~~~~!!
「トールヴァルド様、朝食の前にO・HA・NA・SHIが必要だと思いませんか?」
「おっと、私の手にいつの間にか剣では無くムチが…」
八方ふさがり四面楚歌…狭い廊下の前後に逃げ場無し!
遠くからこっちを見てるブレンダーとクイーン…何とかしてくれ、頼む!
オオカミと蜂のくせに、器用に肩をすくめて首を横に振ってる…そうね、お前達じゃ駄目だよね…無理言ってすまん…
「では、もう1度トール様の寝室に戻りましょうか。ええ、ご安心ください。キリキリ吐けば、きっとお昼までには終わりますから」
「あぃ…」
その後のO・HA・NA・SHIと言う名の地獄の説教&折檻タイムは、きっちりお昼まで続きました…
痺れる足をさすりながらなんとか食堂にたどり着くと、父さんと母さんの俺を見る目がもの凄く憐れみを帯びていた。
コルネちゃんは、目も合わせてくれなかった…うゎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! これが一番悲しいよぉぉぉぉぉ!
食堂にナディア達も全員揃ったので、俺は声を大にして皆に言った。
「俺は襲われたんだーーー! 押さえつけて唇を奪われたんだーーー! 被害者だーーーー!」
ナディアと天鬼族3人娘は、顔を背けた…ついでにメリル達婚約者~ずも。
そりゃ、全員心当たりがあるはずだからな。
「何で俺が責められなきゃいけないんだよぉぉぉ!」
俺の心からの叫びでした…が、一刀両断されました。もちろん母さんに。
「それはあなたに隙があったからです!」
マジ? 俺が悪いの?
「そして誤魔化そうとしたからです」
そ…それは…
「あなたの婚約者が、今さらたかがキスぐらいで、ガタガタ言うはずないではないですか。そうですね、みなさん?」
婚約者~ずは無言で頷いてるけど…絶対に嘘だ!
正座で説教だぞ! ごらー! そこー! 目を逸らしてんじゃねーよ!
「妖精の方々が、ネス様の使徒である貴方から力を分けてもらうのに、キスが最も効率が良いと仰ってるのです。キスぐらいは、お仕事と割り切ってどんどんしてあげればよいのです」
ナディアと天鬼族3人めっちゃいい笑顔で頷いてるけど…お前ら嘘つくなよな!?
「大体、成人した男性がキス程度で狼狽えるなんて情けない!」
「………あぅ」
「まあ、今後は婚約者達とも、もっとスキンシップを取りなさい。あなたはちょっと固すぎます。お父さんの様になったら駄目ですけど、もう少し砕けても良いと思いますよ」
父さんが、『え、俺!?』って顔してるけど無視だ、無視!
「子供を作るのは結婚した後ですが、もう少し婚約者もかまってあげなさい。当然それは妖精の方々にもですよ。良いですね?』
「………はい」
母さんの後ろで『勝訴!』って書いた紙を持って踊ってるサラだけは、後で絶対にぶん殴る!
「ところで、あなた。新たにメイドを雇った件ですけど…何か変な事を考えたりしてませんよね? 私は政務を任せられる仕事の出来る執事が欲しいと言っていたはずですのに、何故メイドなのですか? 詳しく説明してくださるかしら?」
何故か父さんが母さんに責められてた…父さん、あんたまた巨乳メイド雇ったんか! そうなんか? うらやま…じゃない、こりゃやばいぞ!
青い顔して震えてる父さんは見捨てて、俺にとばっちりが来ないうちに…逃げよ…
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