第204話  約束

 まずは温泉が出るかどうかの地質調査をしなければならず、運よく温泉を発見したとしても、それを掘削し、汲み上げて泉質をチェックし、ろ過した源泉の温度を調整出来る様にし、施設を建設…と、非常に手間と時間がかかり、簡単に温泉施設は出来無い事を、母さんに必死に説明した。30分ぐらいかけて。

「それなら、温泉が出来るまでお風呂で我慢します。それならすぐに造れるわよね?」

 うん、俺の30分は無駄な時間でした。


 元々この世界にはお風呂に入る習慣はあった。まあ、毎日ってわけにはいかないが、少なくとも週1でほとんどの人が入っている。

 何故なら、多くの街には必ず公衆浴場があるのだ。

 これは国の政策として、何代前か忘れたが国王が衛生上必要だから街を拓く時には必ずセットで公衆浴場を作らせたから。

 まあ、昔の父さんの領なんて村ってレベルだったから、そんなものは無かったけど。

 人が多く集まって村というレベルを越えると、国のチェックが入って街にしろと言われる。村と街の境界線がいまいちはっきりしないのだが、もしかしたら人口密度とかかな?  たまに小いさな村でもそこそこの人数が住んでいたら、浴場を作れと言われるらしいから。

 疫病の発生と流行を防ぐ目的があるんだと思うな…知らんけど。

 ついでに言えば、便所はどこでもほとんど汲み取り式だ。

 汲み取り業者が居て、ちゃんと汚物は村や町の外に掘った穴に捨てて落ち葉などと一緒に埋めて、堆肥にしている。

 街中には必ず公衆便所があり、その辺で用を足すともれなく罰金刑が待っている。

 

 地球で言う10~11世紀頃の西洋風な世界なのだが、その辺はきちんとしてくれているので、意外な事に街中は臭くない。

 中世ヨーロッパって、汚物は溜まったら街中の通りとかにぶちまけてたんだぜ?

 しかも風呂なんて年に数回程度入ったら良い方だってんだから、不衛生この上ない。この辺は文化の進んでいなかった江戸の街中の方が、よっぽど清潔だったと言えるね。


 まあ、そんな話はどうでも良い。

 はあ…仕方ない…父さんの街にある公衆浴場とは別に、エステを併設した公衆浴場を建てるとしますかね。

 母さんに逆らうなんて恐ろしい事できるもんか! 

 計画書を作って近いうちに持って行くって事で、やっと母さんから解放されたよ…とほほ…


 もう今夜は色々と疲れたから、もう僕ちん寝ます。おやすみなさい。

 そう言って自室に戻ったはずなんだが…あっれー? サラにナディアに天鬼族3人娘は、何でここにいるの?

『『『『マスター、お約束をお忘れですか?』』』』

『もちろん覚えてますよね? 大河さん!』

 約束って…何だっ…あああああ!? まさか…

『『『『さあ! キッスしてください!』』』』

 い…

『『『『『い?』』』』』

 いやだーーーーーーーーーーー!!!

 全力ダッシュだ! あの扉を開ければ逃げれる!

 ガンッ! って…え? ドアノブに手が届かない…だと! まさか!

『この部屋には既にシールドが張り巡らせてあります。もう逃げ場はありませんよ、大河さん!』

 お、おま! 何てことを!

『マスター? まさか逃げようなどと考えてませんよね?』

 ナディア…待て、待つんだ! 

 アーム、アーデ、アーフェン…お前ら何で手をワキワキさせてるんだ!?

『大丈夫です大河さん。シールドは完全な遮音・防振・対物理・対魔法の効果を持ってます。この部屋での出来事は、他の誰にも気づかれませんから、安心してください…じゅるる…』

 いや、全然安心出来ねーよ! はっ、そうだ! 馬鹿めサラがこんな時の対処法を漏らしてたじゃあ~りませんか!

 変身してしまえば、俺の唇は守られるのだ!

 よ~し! へ・ん・し・・・・ん? ベルト出てこないぞ?

『あ、ベルトは回収しておきましたので、変身できませんから~』

 サラーーー! 貴様ーーーー!! 

『マスター…もう逃げられませんよ? お覚悟を!』

 覚悟って何だよ、覚悟ってーーーー!


 い~~~~や~~~~!!!


 抑えつけられて、皆様に美味しく頂かれてしまいました…シクシクシク…

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