第130話  帰り道

 ユズキとユズカの転移組が加わったが、帰路はいたって平和な旅だった。

 往路と同じく、馬車をポイントごとに先行させたけど、特に何事も起こらなかったしね。


 帰路は運転にも道にもなれたので、運転する俺の隣に、皆が順番に座った。

 婚約者~ずが順番に横に座った時は、結婚生活について夢見る乙女の妄想が爆発していたが、彼女達の名誉の為にも内容は伏せておこう…いや、俺が恥ずかしいのもあるが…

 コルネちゃんが座った時は、ずっとはしゃぎ回ってた。シートベルトが必要だと実感したぞ。

 父さんは、蒸気自動車に関して実用的な質問をしてきたが、たまに母さんの愚痴をこぼしていた…聞こえてると思うぞ?

 案の定、母さんは父さんとの話を根掘り葉掘り俺から聞きだして席に戻ると、父さんにヘッドロックを掛けていた。

 プロレス技って流行ってるのか?

 ナディアが座れば、ずっと俺を称賛する言葉を延々と並べられ、だんだん賛美歌に聞こえて来た…むず痒い…などと言ったら、サラがやって来て股間を掻こうとしやがったので、座席に蹴り戻した。

 ユズカが運転席の横に座ってマニアックな趣味の話で盛り上がったり、ユズキが座ってユズカとのクソ甘い幼馴染エピソードを延々聞かされたりしたが、それもまた楽しかった。


 こうして長い移動距離と時間にもかかわらず、何だかんだと楽しい帰路だった。


 父さんの屋敷に着き、両親とコルネちゃん、ナディアを降ろした後は、一直線に俺の家へGO!

 この蒸気自動車なら、全開で走れば1時間もかからないんだが、街道やトンネルを往来中の馬車との事故も怖いので、のんびり進む事にした。

 転移組の2人も、キョロキョロと楽しそうだから、観光と案内がてらちょうど良かった。

 トンネルを抜けて、ネス湖が見えた時には、2人は声を上げて喜んだ。

「「えっ! ネス湖!?」」

 ええ、地球人ならそう言うでしょうね… ごめん、てきとうに名付けちゃって…

「ネッシーは居るんですか?」

 ユズカはワクワクしてる様だが、さすがにそれは居ないぞ? ってか、この湖には生物が棲息出来ないから。

 まあ、聖なる女神ネスが居ると言ったら、見たい見たいと騒がしかったので、婚約者~ずと後で行かせよう。

 街中に入ると、エルフにドワーフ、人魚に魔族に獣人と、多種多様な種族が目に入るのだが、2人共微妙な顔をしていた。

 うん…地球のファンタジー物で見るイメージと違うから、仕方ないね。

 そして俺の屋敷が見えてくると、やはり転移組は揃って、声を上げた。

「「カリ〇ストロ!!」」

 君達、本当に仲がよろしい事で。息ぴったり。


 我が家は、居住人数が少しずつ増えているので、実は増築もした。

 まあ単に広い庭に使用人用のワンルームのアパートを建てた感じなんだけど。

 そこには、ドワーフ娘達4人とサラとマチルダが住んでいる。

 ユズキとユズカには、一軒家をプレゼントしようかと言ったら、まだ早いと真っ赤な顔で拒否られた。

 もうお前ら結婚するんだから、一緒に住めばいいじゃん…。

 って事で、使用人用アパートの個室を、それぞれに与えた。


 旅に同行した職人さんは、さっそく蒸気自動車の改良に入るらしい。

 長旅だったんだから、ちょっと休んでからにしてね。ブラック企業じゃないんだから、そこはしっかり注意しておく。


 自室で旅装を解き、風呂に浸かって旅の汚れと疲れをとって、やっと帰って来た~って実感がわいてきた。

 なかなか実りある旅だったが、やっぱ疲れた。

 取りあえず、今日は飯食ったら寝ようっと。



※ ユズキとユズカのお話しは、番外編で詳しく書いております。

  https://kakuyomu.jp/works/1177354054931837522

  どうぞ、ご一読いただければ幸いです。  

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