第129話 帰りましょ!
さてと、色々とあった王都への旅だったが、そろそろお家に帰ろう。
父さんのお屋敷内覧会の2日後に、国王が蒸気自動車を見に来た。
はしゃぎ回ってくれくれとせがむ国王が、第一王妃様にぶん殴られたのは見ものだった。あの王妃様の抉り込むような右ストレートは、コークスクリューブローに間違いない! しかも、立ち上がった国王に(良く立てたな…)第二王妃が見事なハイキックをこめかみに決め(スカートの中は見えなかった)、さらに吹き飛んだ国王。
しかし、ゾンビの様に立ち上がった所へ、第三王妃のジャーマン・スープレックス…だと! その美しいブリッジは、まるで錦帯橋の様だ! なぜかブリッジした第三王妃のスカートの中は、秘密の力で守られていたが。
そして、国王は沈黙した…南無…
まだ開発中の試作品だと最初から説明しているので、最終的な改良が終わり次第、量産態勢に入る事は伝えてある。
当初より量産型に関しては、1台は国王に献上する予定だったのだから、文句は有るまい。
国王について来た国の重鎮達や、議員貴族達も欲しいと騒いだが、現段階での市販予想価格を伝えると、うむむ…と唸り始めた。そりゃ安くはないぞ? なんたって、全く新しい魔道具を搭載してるんだからな。
乗り心地を向上させた馬車ならば、お手頃な価格で改造できるんだが、いかがですか? あ、検討していただけると? それはそれはありがとうございます。あ、もちろん分割払いも受け付けてますよ? 年利5%で。
って感じで、王家とのドタバタや商談で忙しく数日を費やした俺は、そろそろあの美しい湖畔の我が家が恋しくなったのだ。
帰りは2人増えたので、座席を追加で取り付けて、そそくさと支度を整えて帰路に着きました。
俺が身請けした転移者の2人は、少年はユズキ、少女がユズカ。
2人共15歳だが、なかなか頭も良い。
特にユズキは理数系が得意なようで、今後は色々な開発に力を発揮しそうだ。
ユズカは…え~何と言いますか、ポップカルチャー…はっきり言えばサブカルチャーの強烈なファンと言いますか…ヲタクでした。
その性もあって、かなりのエネルギーを秘めてらっしゃる。
使いようによっては、かなりの戦力となれる気がしております、はい。
なんだろな~戦力になる人材がヲタクって…まあ、俺も人の事言えないんだけど…。
ただ彼女は俺と違って、平成のヲタク。
何でも、すでに平成は終わって、新元号は令和になったらしい。マジっすか?
しかし、俺の様な昭和のヲタクと違って、平成のヲタクって…なんか明るいしスマートだし、どことなくファッショナブルな気が…おかしい、何だか違和感がある。
『大河さんは、根暗で排他的で社交性も無く精神に異常をきたした人格破綻者のほんの少し手前のヲタクでしたもんね! そりゃ彼女と違いますよ』
そこまでじゃねーよ! そもそも、どこがどう違うんだよ!
『そもそも、平成後期の日本ではサブカルチャーは広く一般社会にも認知され、その広がりはすでに世界に届いています。大河さんの頃はマニアからヲタクへの変遷期で世間の目も厳しい時期でしたが、すでにヲタク文化は成熟し切ったと言っても過言ではありません! アニメのコスプレなど海外でも多く目にする事が出来ます。日本のサブカルは、いまや世界へと羽ばたいたのです! もう大河さんの頃の様な、犯罪予備軍扱いではありません! れっきとした文化なのです! で、カルチャー! なのです!』
最後、ちょっと際どかったぞ…そうか、良い時代になってたんだな…そんな日本で生きてみたかった。
『この世界では、貴族家の女性使用人はメイド服と決まっていますが、日本でのそれは、萌え萌えキュン♡です!』
萌え萌え…キュン…♡ だとぉ!?
『そうです! それこそが、オムライスにケチャップで絵を描いた後に、オムライスを美味しくする魔法の言葉なのです!』
なんかわからんが…すごそうだ!
『マスター! 僭越ながら、私が絵を描かせて頂きます! 萌え萌えキュンをさせて頂きます!』
うん、お願いするよナディア。
『きーーーーー! ナディア! 良いとこ取りしないでください!』
『サラに萌えはありません。私にこそ萌えは相応しいのです。あなたは精々、燃える闘魂です!』
『なんだコノヤロー! ダー!』
おいおい、喧嘩はやめてくれよ…しかも、俺の思考の中で…運転中なんだからさ、マジで事故るから止めてくれ…。
あと、ナディア…君にはまだネタは早いから…
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