第128話  良い子良い子  

注:ユズユズの詳細は、別投稿の番外編にて投稿済みです。

 本編中はごく軽く流すかもしれません。2人に関しての物語は、

 【システムバグで輪廻の輪から外れた‟ゆず&ゆず”も落ちてきました。(シスバグ番外編)】 https://kakuyomu.jp/works/1177354054931837522 をご覧ください。



『うぅぅ…マスター…お辛かったのですね…これからは、私と妖精がマスターを全力でお支えします。婚約者の皆様もお支えします。もう、お独りになんてさせません。私達はマスターによって生み出された、いわば子供です。家族です。いつまでも、いつまでも、お傍に居ますから』

 ナディア、ありがとうね。大丈夫、十分に幸せだよ。

『大河さん、私も居ますからね。あと10億年ぐらい一緒に!』

 いや、長すぎだろ! すでにサラにはもう飽きたよ! 

 10億年って、地球だと単細胞生物が人間に進化するぐらいの時間だぞ!

 今ですら飽き飽きしてんのに、そんなに長く一緒に居たくないわ!

『私の事は遊びだったの!?』

 はいはい。

『マスター、私はずっと一緒に居ますから!』

 ナディアならいいのよ、ナディアなら。本当にいい子だからね。

『がーーーーん! 大河さんの、私とナディアでの対応にものすごい格差を感じます!』

 だって、サラだもん。


 さて、このクソでっかいお屋敷はどうでもいい。

 実はこの屋敷の見習い執事と見習いメイドに、ちょっと面白い人材を見つけた。

 黒目黒髪で日本人顔の、若い少年少女だった。

 見習いメイドの少女から声を掛けられ、俺が転生者だと分かると、とても驚き、喜んでいた。

 あらためて応接間に2人を呼び出し、サラを交えて4人で話合ってみた。

 どうも話をしていると、その言葉の端々から日本から転移してきた感じだった。

 サラが調べた所、転生局の記録にも詳しく記録されておらず、≪超高位次元における、事象の地平線または特異点≫が、たまたま発生した時に引き込まれ、次元も星も時間も違う、この世界に落とされたのではないかという。

 本来、それは輪廻転生局で管理・制御していたらしいのだが、ログが残されていない事から、定期システムメンテナンス中の事故なんじゃないかと言うんだが…システムメンテってネトゲかよ! いや、それはどうでもいいんだが。

 サラが2人を調べたところ、そこそこの魂エネルギーだったらしい。特に少女の方が。つまりは、結構なご趣味の人だったという事なのね。

 なので、詳細は誤魔化しつつ、父さんにお願いして身請けした。

 俺が領地で保護をして、ゆっくりと2人に修業を付けるつもりだ。

 2人の詳細は、また後日ゆっくりと。今のところは伏せておく。

 お楽しみは、あ・と・で。 (注1) 

 

 恐怖の大王襲来時には、この2人にも役に立ってもらおうかね。

『肉の盾ですね? さすが大河さん…鬼畜です!』

 んな事するか!

『でも突撃させる気でしょう?』

 違うわ! 倒すのに協力してもらおうっていうだけだよ! その為の力も技も武器も与えるよ! 同じ元日本人に、そんな酷い事せんわ!

『…まさか、大河さんからそんな殊勝な言葉を聞くとは…』

 どういう意味だよ!

『だって…私には酷い事ばかり…よよよよよよよ…』

 そこまでの事したか? ってか、お前は日本人じゃないだろ?

『いつもいつも、おあずけの…放置プレイ…もう欲求不満で爆発しそうなのに…』

 アホかー! いっつもいっつも、俺の童貞狙う様な奴には、ごく普通の対応だー!

『あぁ…でもそんな鬼畜な所も、最近良くなってきたかも…ちょっとじゅんってする…』

 だめだ…サラの変態度が加速する…

『か・そ・く・そーち!カチッ!』

 やかましい!


 まあ、転移者の2人はどうやら元々カップルだった様なので、俺の領地で結婚でもしてもらって、その時が来るまでは、ゆるりと暮らして貰おう。

 ぐふふふふふふふ…ブライダル事業へのいい宣伝になりそうだ。

 また儲かっちゃうなあ~! いや~宰相とかしてる暇なんて、マジねーんすけどぉー? 領地経営と商売で、領民も俺もウハウハ!

 父さんの領地も巻き込んで、みんなでこのビッグウエーブに乗らねばならんのだ!

『マスターのお力に縋る為に策を弄する、愚劣で卑劣で低能な王家の意向など、きっぱり拒絶したらいいと思います!』

 ナディア…ちょっと過激だぞ?

『マスターほど、高尚で高潔で有能かつ多才な人材は、確かにこの王国…いえ、この世界を探したところで他には居ないとは思います。そのマスターに、たかだか一国の宰相などという地位は相応しくありません! そうです、この国の王に君臨しましょう! いえ、この世界を統一して、皇帝となって、国民を恐怖の大王にあてればいいのです! マスターがその御身を危険に晒してまでこの世界の民を救う価値など、本当にこの世界にあるのでしょうか? いえ、マスターと全世界の民の命を秤にかけた所で、マスターに天秤は傾くでしょう! そうです、マスターはこの世において絶対的な存在なのです! そう、マスターこそが真理なのです!』

 おーい! ちょっと落ち着こうか、ナディア。

 俺は大丈夫だから、な? な?

 俺の事を想っての言葉は嬉しいけど、そう過激にならんと。

 うん、ナディアの気持ちは分かってるから。

 ほら、良い子良い子してあげるからさ、よ~しよ~し。

 落ち着いた? よかったよかった。

 俺は、俺自身の願いの為に、幸せの為に戦うんだからさ。

 俺が気にしてないんだから、ナディアは怒らないで良いからね。

『お見苦しい所をお見せしました…マスター。あと、もっと撫で撫でしてください』

 う、うん。撫でるぐらいいいよ。

 この子、大丈夫かなあ…マジで心配。 

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