第131話  敵の正体

『大河さん、大河さん! 起きてください!』

 んぁ? 今何時だ…まだ外は暗いじゃないか…

『恐怖の大王について分かった事があります!』

 んん? サラか? 何が分かったんだ?

『転生してくるのは、神です!』

 ふぉ? 神? 

『いえ、訂正します。元神です!』

 いやいやいやいや、大した違いないからな、ソレ!

『地球での神格は薄まり、神の座からは陥落しましたが、他の星や宇宙や次元では、まだその力は強大です。元神の名は…』

 ごくり!

『カズム…またの名をカオス。ギリシャ神話では原初の神として有名ですね』

 カオスって…混沌?

『よくそう訳されますが、裂け目とか虚空とかが本来の意味です。輪廻転生システムのバグの99.999%は、このカズムによって引き起こされているとも言われています』

 それ、ほとんどそいつのせいだよね?

『神格の減衰によってカズムの力は大きく削がれましたが、その能力は健在です。あちらこちらの世界の次元の壁を揺さぶり続けていた様ですが、この宇宙で最も次元の壁の弱いこの世界へ狙いを定め、壁を突破した様です』

 まさか、すぐに暴れだすのか?

『いえ。カズムは大河さんが転生して、エネルギーを輪廻システムに送る前の…つまり、過去の次元の壁を破った様です。輪廻システムに介入し、自らを転生体として現在のこの世界に送り込もうとした様ですが、システムにはじかれています。大河さんのエネルギーで強化された現在のこの世界は、カズムを1度は退けたという事です。そのため、大河さんの影響力の薄い過去を狙い、直接自らの力を使い転生体を創り、そこに転生した様です』

 ふむふむ…つまり、今は人間の姿をしている?

『いえ、システムでも観測出来たのは、何者かが無理やりシステムに介入して転生しようとした事と、システムにはじかれた事。そして次元の壁を破って転生したのがカズムである事だけです。何に転生したかは不明です。ただし、カズムの魂のエネルギーが転生直後にほとんどゼロに近い状態だったので、現在は休眠中であると推測されます。活動を始めるまでは感知できそうにありませんが…』

 これまた、厄介な事だな…。そいつが動き出したら分かるのか?

『ええ、分かります。輪廻転生局も最重要事案として、今後は、全次元での要注意人物であるカズムの動向を完全にトレース出来る様に、システムを改良しました。とは言っても、活動を再開したかどうかしか分かりませんけれども』

 いや、それで十分だ。

 それで一つ聞きたい。俺はそいつに勝てるか?

『堕ちたとはいえ原初の神です。強大ではありますが、大河さんの持つ魂のエネルギーであれば対抗は出来ます。絶対に勝てるという保証はありませんが』

 そっか。もう覚悟は出来てる。

『カズムは虚空を好みます。有と無、光と闇、過去と未来、天と地、善と悪、個と全。普通は、対極にある物は同時には存在できません。しかしこのカズムはこれらが同時に存在する空間を好みます。だからこそ、混沌でありカオスなのです。理に満ちた世界の全てを一旦無にして、自分の住みやすい世界に創りかえる気でしょう。私に届いた情報はここまでです』

 うん、ありがとう。

 いいヒントを貰ったよ。手はあるね。

 

 サラの話が終わる頃、窓のカーテンの隙間から日が差し込んできた。

 俺はカーテンを開け、窓を押し開くと、目の前に広がるキラキラ輝くネス湖の湖面を見つめた。

 ふと目を街の方に向けると、すでに人々は動き始めていた。

 ここが俺の治める街、ここが俺と家族が住む国、俺が護るべき世界。

 カズム? カオス? どーんと来い! 

 俺は秘策を思いついたんだ!

 そう、あの新しいガチャ玉が出来た時にサラが言った言葉を、そしてつい先程のサラの言葉が、大きなヒントになった。  

 もう少し策を練る必要はあるが、創造してやるぜ! カズムとやらに対抗する手段をよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る