第91話 覚悟を決めよう
『サラよ。彼は思ったよりも自制心が強いようだな』
『はい、局長。どうやら法秩序順守の精神や規範的行動を重んじる日本人気質が強い様です。その為、局長の箱庭内に芽生えている文明・文化の極端な進化は、文化的ジェノサイドの発生を恐れているのではないかと無意識にではありますが恐れているのではないかと思います』
『ふむ……転生・転移者としては実に理性的な心構えではあるが……』
『はい、私もそう思います。思うに彼は、前世の経験から自制心が強すぎるのではないかと』
『それは私も考えた。ううむ……わかった。サラよ、私の方でもう少しテコ入れをするので、上手く彼を導きエネルギーを吐き出させるように。そうだな……彼には悪いが…………』
『はい、わかりました局長。では……を……する様に仕向けたらよろしいのですね』
『ああ、新・輪廻転生システム構築のためにも、もう少し彼には協力してもらわないとな』
『了解いたしました』
『まあ、あの私の箱庭の住民の生死などはどうでも良いのだが』
『新たな宇宙の秩序のためですから、尊い犠牲と言っても良いでしょう』
『1000兆ものこの宇宙の星を活かすための箱庭なのだから、滅んでも仕方あるまい。では頼んだぞ、サラ特別管理官』
『はい、お任せください。中央管理局長様』
▲
楽しい一日を過ごした俺達は、虎バスに揺られて街に戻った。
メリル王女とミルシェちゃんとイネスさんは、異種族との交流やバーベキューの事を楽しそうに話していた。
これで俺の領地の事は分かってもらえたかな。
『十分わかったと思いますよ』
そっか、それは良かった。
『それで、私の話は覚えてますか?』
誤差の範囲だとは思うが、何かの間違いで胸囲が5mm程微増した夢を見た話の事か?
『そうです5mm程……って【きょうい】違いです! 脅威が迫っているって話です!』
え? あれって単にボケの前振りじゃなかったのか?
『ちーがーいーまーすー! この世界に新たな脅威が本当に迫ろうとしてるんでーすー!』
万単位が死ぬとか何とか言う奴か? アレってマジな話なのか?
『めっちゃ大マジです!』
俺はてっきりボケ倒してるだけだと思ってたんだが・・。
『そんなボケをしてどうしますか! 脅威は空から来ます! 具体的には【恐怖の大王】が来ます』
ちょっと待て! ここにそんな存在がいるなんておかしいだろ!
使命とか運命とか無いはずだろ!
何でそんな奴を俺が相手しなきゃならんのだ!?
そもそも恐怖の大王って何だよ!
ア〇ゴル=モアとかいう少女じゃ無いだろうな?
『それはケ〇ロ軍曹です! そうでは無く、システムバグでこの世界に恐怖の大王が誕生しそうなんです』
げっ! またシステムバグか!?
って事は、俺並みの魂のエネルギー持ってるのが転移か転生するってのか?
『詳細は不明です。輪廻の扉の設置してある次元とこの世界とは、時間の流れが大きく違います。扉を通った魂がすぐにこの世界に現れるとは限りません。ただそう遠くない時に邪悪なる魂を持つ者がこの世界に何らかの形で出現します』
あれ? よく考えたら、あの門って転生なんじゃないの? 転移ってあるの?
『ええ、この世界の生物の身体に宿る魂を追い出し、自らの魂でその肉体を乗っ取った場合には、魂のエネルギー量にも因りますが、乗っ取った肉体が魂の情報に引きずられ改変します。これが転移です。元々の身体でこの世界には来ませんので、正確にはこれも転生の1つの形と言っても過言ではありません。転生はそもそも魂の形に合わせた器をゼロから作りだし、適合する母体に子として宿し、この世に産まれ出る事を指します。大河さんの場合は転生です』
そうか……良かった。この身体は元々俺専用だったんだな。
それで恐怖の大王は、転生か転移か不明と。
『その通りです』
つまり敵が誰とか分かんないって事なんだな?
『転移の場合だと人間か魔物か動物かといった、根本的な種族すら現段階で不明です。転生でも大河さんの様に最初から前世の記憶を持っている場合もあれば、後天的に記憶を取り戻す事もありますので、時期が特定できません』
それは厄介だな。でも万単位の人の生き死にが掛かってるんだ、それを止める事が出来るのは俺だけなんだな?
『この世界の人々が恐怖の大王を止める事が出来る可能性は、0パーセントです』
わかった、俺も男だ。覚悟を決めよう。
『私達はいつも一緒よ……』
ここでネタかよ……それア〇ラのキ〇コだろ……。
そのネタは、ピーキー過ぎて、お前にゃ無理だよ……ふっ。
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